コロナ禍の中、アメリカの多くの都市ではレストランはTake Outのみ、空港も閑散とし、せっかく再開したプロスポーツも観客数を減らしの自粛状態が続いています。ただ、そんな中、州政府の命令を無視し、大規模でさらにマスク無しといったとんでもないイベントを続けていることが許されている人がいます。ドナルドトランプ大統領です。大統領選挙まで数日と迫り、必死になって再選をかけていますが、かなり劣勢とされています。Covid19の封じ込めに失敗し、記者会見でその失態や失言が明らかになる中でも、開き直り、Twitterで政敵を非難し、自分と意見が合わない人は首にし、反対者やMediaを徹底的に攻撃している姿を皆さんはどう見ているでしょうか。最近ではCovid19対策の責任者の一人として信頼されている国立アレルギー感染症研究所所長で過去6人もの大統領に支持されてきたアンソニー・ファウチー所長を「愚か者」「大惨事」と評し、科学者を「ばか者」「信じない」というようなことまで言っています。科学や専門家を信じないというのは通常の日本人の視点からは理解できない「政治的な失敗」に見えます。ただ、それでもトランプを支持し続ける人は一体どのような人なのでしょうか?

 

アメリカにおける「保守」対「革新」の基礎構造 共和党基礎支持層とキリスト教保守派

アメリカの大統領選挙は各州での選挙人をどれだけ獲得したかそのコマ数の競争になります。これをElectoral Collageと言います。2016年のクリントン対トランプ選挙、そして2000年のアル・ゴア対ジョージブッシュの際も、票数では多数を取ったのはそれぞれ民主党でしたが、選挙人の数では共和党が上回り、トランプ、そしてブッシュがそれぞれ大統領となっています。これは連邦制を維持する中で、各州の勢力をある程度均衡させるための制度で、都市部や人口が集中する地域の影響が薄められ、各州の力関係をある程度均衡させる働きがあります。そして近年は南部を中心とした地域で共和党が強く、それにより都市部で強い民主党が絶対数で勝っても、大統領は共和党という流れが続いているのです。ではなぜそれらの地域で共和党が優勢なのでしょうか?

 

政治政党をよくLiberal(革新)そしてConservative(保守)という分け方をし、歴史的に「大きな政府(増税)、政府の規制、労働者、貧困者よりの社会主義的な政策」をとるのが革新である民主党、「小さな政府(減税)で、自由貿易、自由競争、規制緩和、ビジネス資本家優遇の政策」をとるのが保守派である共和党だと言われています。ただ、この構図は戦後大きく変わってきています。規制緩和を進め自由貿易、投資の自由化を促進する政策を民主党のクリントンが取ったり、軍事支出を増やし巨大な政府予算を作った共和党のレーガン政権、そして自由貿易のNAFTAやTPPなどから脱退し、保護主義的な貿易政策を共和党のトランプ政権が取っていることなどから、「大きい政府」「小さい政府」の線引きはレーガンのサプライサイド経済政策の成功以降は難しくなってきています。トランプは民主党を「社会主義、左翼」と批判していますが、民主党候補のエリザベス・ウォーレンや最後まで残った バーニー・サンダースなどは大学授業料の無料化や貧困者保護などで欧州型の社会主義に近い部分がありましたが、クリントン・オバマ路線を継承するバイデンはそこまで社会主義的ではありません。同時に規制緩和ということに関しても、共和党のトランプは中国制裁などで保護主義的な立場をとり、唯一Covid19予防のマスク着用やロックダウンに反対する部分でのみ、規制緩和的な立場をとっています。なので、この歴史的な「革新」と「保守」という2大勢力の分け方はあまり適応されにくく、重要な分類項目でなくなりつつあります。特に今回の選挙では、労働者(特に白人)の中で共和党のトランプ人気が高く、ハイテクやビジネスの資本家のトランプ離れが進んでいると言われます。「労働者=民主党」「資本家=共和党」という流れが完全にきえつつあるのです。では「保守」「革新」はなにをもって区別できるのでしょうか?

 

↓の図はトランプ支持(共和党)が共和党のカラーである赤で記され、バイデン(2016年のクリントン)支持(民主党)が青で記されています。歴史的にニューヨークや、ロサンゼルス、シカゴといった大都市は民主党で、前回も今回もカリフォルニアは、ニューヨークは民主党が取ることがわかっているので、候補者は来ようともしません。逆に、アラバマやケンタッキーなどは共和党が強いので同様に注目されていません。ただ、今回は過去共和党が強かったテキサスやジョージアでさえ民主党に転ぶのではないかと言われ共和党(というかトランプ)にとって不利な選挙合戦が繰り広げられています。

 

この地図と共通性が高いのがアメリカにおける福音派教会の勢力を示した↓の地図です。赤いいるが示す部分は「バイブルベルト」と言われ、歴史的に保守的な南部バプテストを中心としたキリスト教保守派の勢力の中心です。緑やオレンジはルーテル教会やメソジストといった古典的な教会の中でも福音派のグループが強い地域。そしてグレーはキリスト教では異端とされますがキリスト教から派生したモルモン教が強い地域です。これらの地域が共和党支持の地域と重なっています。歴史的に白人の福音派のクリスチャンは7割以上が共和党の大統領に投票しています。それが2016年には81%もがトランプを支持しており、7月の調査でも7割がトランプのCovid19 への対応に満足しているという調査が出ています。このトランプに忠実な保守派キリスト教徒に「科学を信じない」がなぜ支持されるのかの答えがあります。

 

アメリカはキリスト教徒が約7割と言われ、キリスト教がその建国、基本的な政治思想に影響を与えています。経済や政治状況は常に変化し、それぞれの状況で政権の判断はゆらぎます。だから前述のように古典的な保守、革新の分け方が適応できなくなるのです。むしろ現在のアメリカの政治における「保守」「革新」は前述の古典的な政府に関する考え方以上にキリスト教における「保守」「革新」の分け方を適用した方がしっくりいきます。キリスト教の保守派は聖書に重きを置き、聖書の教えを文字通り忠実に実行しようとするグループです。リベラルは、聖書を状況にあわせて解釈を変えていこうとするグループです。1800年代後半からエンライトメント(啓蒙思想)の影響を受け、民主主義が定着してくると、ドイツなどを中心にキリスト教内でも大きなリベラル化の動きがありました。その中で欧州ではリベラル化した主要教会は特にナチスを止めることができなかったこともあり戦後徐々に勢力を弱めていきます。モンキー裁判などで批判を受けましたが、アメリカでは福音系、原理的なキリスト教会を主流に信徒数を増やしていきます。この革新「リベラル」、保守を戦後大きく分ける問題として、同性愛結婚、そして人工中絶があります。保守はそれらを認めず、革新はそれらを取り入れていこうとするグループです。これらは1970年代以降アメリカに起きた大きな思想的な流れを受けていますが、そんな中で革新(リベラル)な教会は支持者(信者)を大きく減らし、調査によると、1970年代に比べ50%以上信者が減少したと言われています。一方保守の中核の福音派は、その数を増し、キリスト教教会の主流となっています。そんな中で「女性の権利」を主張し、中絶の合法化を守ることに徹した最高裁判事のギンズバーグが亡くなったので、空いたスポットに「保守」で「中絶反対」の意見を述べたノートルダム大学ロースクールの教授バレットを任命したのはまさに「保守派」勢力の強さの反映であると言えます。保守派のクリスチャンは聖書を最も大切なものとし、その結果として歴史的に科学と反対する考えがあります。それが進化論(科学)と創造論(聖書)の対立です。なので、トランプが「科学を信じない」と言うと、それに同調する保守的なクリスチャンは少なくないのです。

 

トランプは再選されるか?

以前ブログでも書きましたが、私のビジネススクール時代の恩師James Q Wilson教授が「現代アメリカでは人々の経済的な状況が在職の大統領を再選されるかどうかを判断するという原則がある」と言っていました。とすれば、アメリカが経済的に躍進していたCovid19以前であればトランプ再選は間違いなかったはずです。但し、今回のCovid19とそれに対する失策、人種問題、更に経済の落ち込みは天から降ってきた悪運となってトランプを襲っています。それでもDenialのサイクルに入ってしまったトランプは嘘を繰り返し、追い打ちをかけるように、税金の不正の問題(金持ちなのに税法を乱用しほとんど所得税を払っていない)、ロシアがアメリカ兵士を殺すことに償金をかけている問題でもロシアに弱腰であり何かロシアに弱みを握られていると思われたり、白人至上主義やQAnonのような極右との関係なども取り上げられ、更には人気のあった前大統領のオバマが積極的にバイデンの応援演説に回っている状況など、トランプ再選の可能性は低いと思われます。前回、トランプの大統領としてどうかということは評価されておらず、不人気で汚職のうわさがされていたクリントンが対抗馬であったので、保守、革新のどちらにも属さない人々がトランプに投票して大逆転は私も想定できたことではありました。ただ、今回は状況が異なります。

 

今回は前回より更にかなり高い水準の投票率が予想され、今まで投票しなかった無関心であった中間層がどのように投票するかで結果がでるとも言われています。それが、前回決め手となった民主党と共和党が拮抗するオハイオ、ミシガン、フロリダ、アリゾナ、ネバダといった州で注目されています。トランプに関してアメリカ人は「好き」「嫌い」かはっきり分かれます。トランプ自身自分が好きか嫌いかですべてを判断する「いじめの親分」的なやり方で政治をしてきたので、白黒はっきりする面白い選挙であるとも言えます。なので実態としては「バイデン対トランプ」というより「トランプ対反トランプ」の選挙だとも言えます。だからバイデンに対する汚職やセクハラの疑惑は、それほど大きな問題として取り上げられておらず、FOXを除くMediaの多くも反トランプの報道が続きます。メディアのサポートを得ている民主党は結束を強め、逆に共和党員の中から反トランプ勢力(Lincoln Project 等)がバイデン支持をしたり、若者の多くが反トランプであることなどから、圧倒的な差でバイデンが勝つということも想定されます。

 

今回、最悪のシナリオとして想定できるのが、当日の投票ではトランプが勝利し、後日、郵送投票の結果が反映されそれがひっくり返るという状況です。共和党の支持者は、選挙場投票し、民主党は郵送すると言われるので、選挙が拮抗した場合はそれがあり得ます。恐らくトランプはすぐに勝利宣言をして、郵送は不正だと言い居残ろうとします。それをトランプが準備しているので、「負けても認めない」、「郵送は不正」という発言を繰り返しているのではないかと言われます。もしそうなったらまた町にデモ隊が現れ、更には「待機するように」とトランプがDebateで言っていた極右の武装グループやMilitiaが町に出てデモ隊とぶつかり全米各地で騒動が起きます。トランプは「中国が敵」、「Covid19は中国の責任」と言っているので、私の家族を含むアジア系の人たちも差別的なとばっちりを受けるかもしれません。さらに11月でCovid19 のワクチンもない中、町に繰り出す人々の間に爆発的にCovid19が広がり、Covid19での犠牲者がさらに急増し、株式相場も暴落するといったアメリカ大混乱の状況です。そんな状態だけにはなってほしくないと願います。

 

トランプ落選と共和党のトランプ対応、そしてキリスト教福音派に対する影響

選挙でトランプが大差で負けることがそのような状況を防御することとなりますが、トランプはありとあらゆる手を使って再選をはかると言われています。その理由として落選した後で、調査されている脱税やビジネスの不正行為など調べられ、トランプ自身が刑事訴訟されるリスクが指摘されています。だから「負けたら外国に逃げるしかない」と演説でいったのはまんざらではないのかもしれません。その場合逃亡先はロシアでしょうか?ビジネスにおとなしく戻るというのが無難ですが、あの性格的におとなしくなることはないでしょう。ただ、トランプが大敗した場合、共和党はトランプと距離をおくようになると想定できます。もともとトランプは共和党の中枢にいたわけでもなく、部外者であるだけでなく、保守的で伝統を尊重する共和党を過激な方向に持って行った責任は重大であるからです。トランプの娘婿のクシュナーが、「共和党をHostile Takeoverした」と言っていますが、トランプに乗っ取られたと感じている共和党の党員は少なくありません。2012年共和党大統領候補でオバマと戦ったユタ選出モルモン教の上院議員Mitt Romnyは「トランプに投票しなかった」と言っていることから、すでにトランプ切り離しが進んでいると思われます。トランプが大敗した場合、共和党は、バイデン支持に回った共和党員を戻すためにもトランプと距離をおくことになるでしょう。追い出されたトランプは過激なトランプに忠実な白人至上主義の極右グループなどとつながり独立した独裁者的な政治活動を続けるかもしれません。

 

ここで問題になるのがキリスト教福音派です。これは教会によって異なりますが、熱烈にトランプ支持をしていた教会は、恐らくより過激になるか、或いは人々が目覚めて教会と距離をおくようになるかもしれません。特に若者の多くはクリスチャン=共和党の構図に疑問を持つようになってきているので、若者の教会離れが加速する可能性もあります。なので白人を中心とする福音派キリスト教、そして白人の中でキリスト教の衰退が全体として進み欧州のようになっていく可能性もあります。

 

教会の間違い:敬虔なクリスチャンがトランプを支援するリスク

今回のCovid19 は教会での集会もできず、それを理由に開放を唱えるトランプを支持する教会も少なくありません。エンターテイメント業界、旅行業同様に教会にとっても危機的な状況なのです。アメリカの保守的なクリスチャンの多くは、共和党の支持者です(前述した通り7~8割は無条件に共和党を支持する)。私は保守的なクリスチャンでその友人も多いのですが、過去、「オバマ大統領はイスラム教徒だ!」とか、「クリスチャンなら絶対共和党を支持すべき」といった話になると、「本当にそれっていいのだろうか?」と疑問を感じてきていました。クリスチャンがトランプ支持をすることに関してはいくつかもっと大きな問題があると思います。そしてもしそれに気が付かなければ、人々はより教会、そしてキリスト教に対して間違った考えを持ってしまうリスクがあると思います。それは以下の通りです。

 

1)キリストの教え:クリスチャンとはキリストを信じてキリストの教えに従う人たちのことです。キリストの教えは新約聖書の福音書に書かれています。その中心になるのが隣人を愛すること、そしてその隣人とはサマリア人(ユダヤ人がさげすんでいた人たち)であるとルカ10:29~37に書いてあります。クリスチャンはそのキリストのかおりがあり、貧困者や恵まれない人を優先して保護します。移民やイスラム教徒に否定的であり、自分の気に入らない人は徹底的に攻撃する人をキリスト教的に支持すべきなのでしょうか?自分のことを優先し、まわりは自分の言いなりになればよいというような行動をとる人は、キリストの教えからかけ離れています。

 

2)嘘をつくこと:Onepieceのウソップではないけど、トランプは平気で嘘をつきます。ウソップと違うのは、その嘘をつく理由は自分を守るためであり、別な人を守ろうとするような嘘ではないことです。福音書の中で明確なのがキリストの敵となる司祭やパリサイ派、サドカイ派などが嘘で大衆を動かし、キリストを十字架につけます。ヨハネ8:44のキリストの言葉はバイデンにあてはまるでしょうか、それともトランプにあてはまるでしょうか?

 

3)金持ちでいることの責任:キリストの教えは一貫してこの世の富を追求することに否定的です。むしろ天に宝を積むようにと教えています(マタイ6:19~20)。金持ちは資産を売り払い貧しい人に与え、すべてをすててキリストについてくる(マタイ19:16~22)ように言っています。そしてマタイ、ルカ、マルコと3福音書で述べているのが金持ちが天に行くのは「ラクダが針の穴を通るのより難しい」と言っています。金持ちであることを誇り、金でできたゴルフのクラブを持ち(日本の血税で安倍首相がプレゼント)、自分の娘の団体に寄付を募り(日本の血税から寄付をしている)、自分の会社の施設に莫大な収入をもたらす政府イベントをし、そのような人をキリストに従う人が熱狂的に支持することはどうなのでしょうか?トランプがラスベガスで教会に行き、ポケットから札束を出して献金箱に入れる姿が報道されていましたが、なぜ小切手でしないのでしょうか?あたかもマルコ12章に書かれているキリストが批判した金持ちのユダヤ人のように見えるように寄付をする姿は、キリスト教徒的ではありません。ルカ16:15でキリストが語っている金持ちに似ているのはどちらでしょうか?

 

4)聖書を読んでいること:ヨハネ6章に聖書にある神の言葉は、「日々の糧である」と書いてあります。クリスチャンとして日々聖書を読み、聖書に書いてある内容を理解しているということが信仰の表れであるとも言えます。ドナルドトランプは長老派のクリスチャンであるとも、無宗派クリスチャンであるとも言われています。ただ大統領になるまで教会にはいっていなかったようです。デモ隊を退去させ教会の前にいき聖書をわざわざかざしたりして自分の支持者である福音派クリスチャンにアピールをしようとはしていますが、そのやり方はあまりキリスト教的ではありません。トランプが聖書と写真を撮るために訪れたDCのその教会の牧師まで批判をしていましたが、トランプは聖書に対する理解はあまりないと思います。それは以前聖書から引用した際に第2コリント人への手紙を”Second Corinthians”ではなく”Two Corinthians”と読んだので明らかです。トランプの娘はユダヤ教徒(結婚したので改宗した)であり、トランプ自身は自分の利益を考える人なので、自分をサポートするクリスチャンにアピールすることは考えてはいますが、聖書に書かれていることに関心はないように思えます。選挙活動でも教会の礼拝に出てますが、それは教会に神を賛美するためにいったのでしょうか、それとも自分の票獲得のためでしょうか?

 

5)性的な乱れ:福音派教会は、同性愛結婚に反対しています。同性愛を否定する理由として聖書の第1コリント6:9~10、1テモテ1:10、ローマ1:26がよく引用されます。これらは使徒パウロの書簡ですが、パウロは当時増えつつあるクリスチャンにキリストの教えに従って生きることの意義とあり方を具体的に手紙に書いて残しています。これらの手紙が書かれた人々が住むローマ帝国内の都市では性的な乱れが激しく、当たり前のように売春や、オージーなどの性的に開放な文化がありました。昨年エペソやコリントの遺跡を見に行ってきましたが、大きな売春宿が町の中心にあり、当時の性的に開放された風俗が良くわかりました。なので、これらの聖句を読むと同性愛(男色)に関して、姦淫と並立して書かれており、性的な乱れの一つとして同性愛に走ることを禁じています。逆に言えば、それが異性であっても問題であり、同様に避けるべきことであるのです。聖書にはむしろ、離婚に関する記述が多く、離婚を姦淫と関連付け、キリスト自身が厳しく語っています(マタイ19章)。ドナルドトランプは3回離婚し、イヴァンカが妊娠中のポルノ女優との関係、性的な発言のビデオなどが公になっています。更には、10代の女の子を集めて性的なハーレムを作り友人の金持ち達に女性を斡旋していた大富豪ジェフリー・エプスタインとも古くからの友人でトランプ自身1994年に13歳の女の子をレイプしたという訴訟ざたもありました。ジェフリー・エプスタインは刑務所で謎の死を遂げましたが、彼に関しては民主党の大統領であったビル・クリントンやイギリスのアンドリュー王子のほうが深くかかわっていたので、選挙戦では使われないと思いますが、クリスチャンが性的に健全ではない人を同性愛に反対しているという理由だけで支持することは危険です。離婚が常習化している中、福音派教会の中でも離婚や性的な乱れに関してはリベラル化しており、恐らくこの部分からも福音派教会も同様に崩れていくと思います。

 

6)人工中絶と死刑:同様に福音派教会が反対の立場をとっているのが、人工中絶です。なので、前述した通り人工中絶に対して保守的な考えを持つバレット教授を共和党が多数で承認させたのです。聖書の時代はあまり人工中絶という考えがなかったので、人工中絶に反対する一番の理由は「汝殺すなかれ」にある神の命令に基づいています。なので、以前から人工中絶に反対していたカトリック教会などは同時に死刑にも反対の立場を取ります。共和党の場合は、人工中絶には反対ですが、犯罪に強く立ち向かうという姿勢で死刑に賛成すること、同様に武力行使による警察や軍隊の殺人もサポートする、といった矛盾があります。なので、クリスチャンなので人工中絶に反対、そして死刑に賛成というのは間違いであり、それを主張するトランプを選ぶことは矛盾を行動に移すことになります。

 

7)税金を払っていない:New York Timesがドナルド・トランプは過去3年で750ドルしか所得税を払っていないとスクープしました。トランプは唯一大統領で所得税開示をしておらず、前回の選挙のDebateで、クリントン候補がこの件で、「税金をはらっていない」と指摘した際には「なぜなら私は賢いから」と答えていました。私は公認会計士で税金の仕事も3年していましたが、大金持ちが必ずしも多くの税金を支払っていないというのは事実です。アメリカの税法の解釈次第で、多くの控除やクレジットを取り、富裕者の税金を少なくすることを仕事にしている公認会計士は少なくありません。だから私の税務部門でも3分の1は弁護士でしたし、個人の所得税では高いフィーが払える富裕者や企業がクライアントでした。トランプはこれに反論していますが、恐らく彼が何百万ドルも税金を払ったというのは、彼が持つ会社の所得税か、固定資産税のことでしょう。クリスチャンは税金に関しても謙虚であるべきです。キリストは税金に関して「シーザーのものはシーザーに返す」(マタイ22章)、パウロは権威者(国)も神の業をするためにサポートするために税金を払うべき(ローマ13章)としています。極度に税金を減らそうという考えが、「自分の富を増やす」=「他の人の負担が増える」という構図になり、これはキリスト教的ではありません。それを自慢する姿は、権威者として不適切であると言えます。

 

8)態度:キリストに出会うプロセスで人は変えられるといいますが、その中で重要なのは自分の罪深さを認めることで、謙虚さ、柔和さ、そしてキリストに近づこうとする人間としての変革があります。自分の強さを誇り、相手を徹底的に非難し、自分のちょっとした間違いさえ認めない姿は、そのキリストに出会った後の人のようには見えません。トランプはミリタリーの学校時代から、「いじめの親分」で、人を攻撃し、力でねじ伏せることにより上に上がってきた人であると言われています。Debateを見る限り彼のその「いつものやり方」は相変わらず続いています。変革がないのです。福音派教会では、「悔い改め」「生まれ変わり」を強調していますが、トランプを見る限りそれとはかけ離れています。すべて損得や自分の好き嫌いで判断し、感情の起伏が激しくプライドが高い人は隙が多く、操作されやすいので国のリーダーとしては適していません。強い信念や信仰、哲学、思想といったものがしっかりと生きていないリーダーは人々を間違った方に導きます。

 

こういった聖書的な原理原則に目をつぶり、クリスチャンならトランプ支持とするのは聖書の黙示録に出てくる偽預言者に騙される人々なのかもしれません。新約聖書唯一の預言者の書である黙示録によれば人々をコントロールする獣のサインは666(黙示録13章)とありますが、娘婿のクシュナーがトランプと組んで、ニューヨーク市で取得したビルの負債を5分の1に減らさせたというスキャンダルがありましがた、その建物は666  5th Avenueでしたね。それは余談ですが、私は今回の大統領選挙に関してクリスチャンは、無条件に共和党に投票するのをやめ、しっかりと自分の価値観に基づき、状況を理解して投票をしてほしいと思います。そしてトラブルのない圧倒的な数で結果ができ、これ以上世の中が荒れるようなことがないようにと祈っています。

 

そして教会も政治に関しては距離を置くべきだと思います。副大統領のペンスは敬虔なクリスチャンで、評判が良い人でした。その彼がトランプの副大統領として忠誠をつくし、彼の嘘に加担していく姿は、トランプを熱烈にサポートする教会の姿をみているかのようです。教会そしてクリスチャンは政治とは距離を置き、聖書とキリストにのみ従い、世の流れに左右されず一貫した価値観を維持していくべきです。黙示録を読んでいると世の終わりのプロセスで多くの人が偽預言者に従う姿が描かれています。黙示録には7つの教会が出てきますが、教会自体がそこに集う人々を間違った方向に導くようなリスクがあるわけです。Covid19で人々が教会から距離をおき自分の信仰を見直すことはある意味、神が与えてくれた貴重な機会なのかもしれません。