LAのCOVID19の現状

2021年1月末現在のアメリカのCovid19の状況です。私の住むロサンゼルスは世界最大のCOVID感染者を出しているアメリカの震源地(EPICENTER)となっています。中でもひどいのがダウンタウンのすぐ西からKoreaTownまでの地域でこの地区はラテン系、黒人やマイノリテリィーが多く、通りにCovid19危険地域という看板さえ出ている状況です。私の住むパサデナでも救急車の音が毎日のように聞こえ、一番大きな病院であるHuntington Hospitalでさえ、医療崩壊が起き、身近でもCovid19にかかった、家族が亡くなった、かかったけど良くなったというような話を聞きます。数字から状況を客観的にみていきましょう。

 

アメリカのCovid19感染者と死者数:感染者約2600万(世界全体の25%程度)、死者約42万人(世界全体の約20%)人口比などから5倍以上多くの感染者、死者が出ているので、とてもではないけれどアメリカは感染症対策に成功したとは言えません。現時点で世界最悪だと言えます。状況が悪くなっている日本の方がはるかに成功しているように見えます。ただ、死者数の割合が感染者の割合より低いのはアメリカのテスト数が比較的多くなっているのか、治療が他国より多少良いのかだと思いますが、恐らく前者がその理由でしょう。日本はテストは少ないと言われているので、恐らく死亡者の率の方が高くなるのではないでしょうか?

 

カリフォルニアのCovid19感染者と死者数:感染者約320万人(アメリカ全体の12.5%)、死者数約38500人(アメリカ全体の9%)カリフォルニアの人口はアメリカ全体の約12%なので妥当な数字ですが、人口が多い分アメリカでのCovid19感染の震源地と言われています。人口が都市部に集中し、更には移民が多く各世帯人数が多い分感染が広がっています。乾燥した気候も感染の広がりにつながっているのかもしれません。

 

ロサンゼルスのCovid19 感染者数と死者数:感染者約110万人(カリフォルニアの約35%)、死者数約16千人(カリフォルニアの約42%)。LAの人口はカリフォルニアの27%程度なので、カリフォルニアの中でも特に悪いのがロサンゼルスだということがわかります。ニューヨークでもそうでしたが、特に黒人やヒスパニックの犠牲者が多く、低所得者の中には働かなければ生活できない人も多く、そういった人が多く犠牲になっているようです。それと、世帯の中の住人数が多い地域、ラテン系のように大家族がまとめてすんでいる地域が老人施設とあわせ集団感染があり、結果として多数の被害者が出ています。

 

Covid19 の発祥地武漢との比較:武漢の人口は1100万人だと言われ、ロサンゼルスの1000万人とある程度近いと言えます。武漢は感染者が約5万人、死者が約4千人だと言われています。中国のデータは信用できないと言われればそれまでですが、もしこれがある程度信用できるのであれば武漢の場合は人口の約0.5%しか感染しておらず、ロサンゼルスの11%の約半分に比べはるかに少ないと言えます。感染者中の死亡率は、武漢の場合は8%で、ロサンゼルスの1.5%より多いので武漢でCovid19 が発症した際には十分にテストなどができなかったので、実際には遥かに多い人数が感染していたのではないかと言えます。

ただ、もう一年もたっているのに、武漢と比べアメリカ、特にロサンゼルスの状況の方が悪いのにはいくつかの理由があると思います。そしてその悪い要素は日本にも共通している部分があるので、学ぶ必要があります。

 

Covid19 感染が悪化した理由とそこから学べること

1)病気に対する認識の問題

昨日ビジネスMeetingがあった際に、その相手の人がしばらく連絡がなかったので、聞いてみたらCovid19 にかかり隔離していたということでした。でも平気で対面の打ち合わせを要望してきたので、Zoomに切り替えてもらったら、やや怪訝な反応でした。Covid19は悪くなる人とそうでない人がいて、中途半端に恐ろしい病気です。かかった人の中にはインフルエンザのような感じですぐ治ったと言ったり、あまり大きな問題だと捉えない人もいました。ただ、悪化して突然死ぬ人もいて、Mediaではそのへんの報道をしています。この辺の認識のずれが国民の間にも広がっています。特に、ドナルドトランプの発言にも見られたように、Covid19 はhoax (インチキ)だと捉える人達が、政治的にも結束し、危険だとする専門家を政敵のイデオロギーのように扱っていました。選挙の年でもあり、その認識のずれがエスカレートし、未だに人々の意識に大きく影響しています。バイデン大統領がマスクを義務付けるといっていましたが、この厳戒態勢にあるロサンゼルスでさえ、マスクをしていない人が通りにたくさんいます。食料品店などが感染源となったケースも多いのでさすがに店にはマスク無しでは行けませんが、昨日公園でマスクをしていた人は3人に1人ぐらいでした。武漢の場合は最初の発祥であり、世界に対してスキャンダラスであった時期でした。更に共産党の独裁体制であるが故に、国の権威を守るため市民を強引にロックダウンさせることもできました。ロサンゼルスではそこまでの犠牲を払ってやる意味がないと感じている人も多く、更に春のロックダウンで、「なんのためにあんなロックダウンをしたんだ!どうせ悪くなってしまっているではないか」といった不信感もあります。自粛疲れと、抑える水準を超えた蔓延で、「あきらめ」の雰囲気、更にワクチンができたので「ワクチンだより」といったカルチャーがあります。中途半端に恐ろしいウイルスであるが故に歯止をかけるのが困難だったようです。

 

2)経済対感染病のジレンマ

ドナルドトランプの「病気より治療の方が悪ければ困る」と言った発言にあるように、共和党政権は、経済に対する悪影響の方をむしろより大きな問題と捉えていました。更に、ウイルスはインフルエンザのように消えないので、ロックダウンしてもそれが一時的なもので終わるわけではないので、厳戒態勢をとることに躊躇がありました。なので、ある程度感染を広め抗体による免疫を持った人を増やそうといったHerd Immunityの考えが一時期増えました。イギリスやスエーデンも当初そのポリシーでいたので、この迷いがより感染拡大、更には人々の認識のずれの原因となりました。ドナルドトランプにとって病気は無視したい存在、そして選挙で勝つことの方がはるかに大きな優先順位であったので、CDCなど医療の専門家の提言と政治家の意見の矛盾が露呈され、人々の行動はまちまちになり、分裂したアメリカの中で「力を合わせて病気を予防しよう!」といった文化が生まれませんでした。それは今でも同じなので、「自分の身は自分で守る」といったアメリカ的な考えが病気の蔓延をさらに悪化させてしまっています。ただ、ロサンゼルスの場合は移民が多く、更にはそういった意識の低い人々を相手にしなければならないサービス業に移民などの低所得者がついているので、移民や低所得者を中心に感染が広がっているという現実があります。貧富の差が伝染病の犠牲といった部分でも出ています。「自分の身を自分で守れない」追い詰められた人が結局犠牲を負うことになっています。ワクチンに関しても白人の方が多く受けているので、「格差」があるのではないかと言われています。全国民にお金を配るなどしていますが、本来であれば、豊かな人に税金を課しそれを一部悪影響がある部分に回すといった配慮を政府はすべきだと思います。

 

日本は国民の公衆衛生の感覚が高く、更には人々の行動もある程度統一化しやすい国なので、感染がかなりの率で防げているのではないでしょうか?ただ、観光や飲食といった偏った産業に大きな犠牲が出ているようなので、政治的な対応はうまくいっているようには見えません。特に、時期尚早にむりやりGo to Travelといった旅行キャンペーンをしたのはどうかと思います。こういった状況の中で逆に伸びている産業もあるので、ネット系のうまくいっている産業が、苦しんでいる産業を助けることを支援できるようなファシリテーションがむしろ必要だったのではないかと思います。恐らく政府がすべきことは、テストを中心とした感染状況、ワクチンの入荷予定と接種、今後の予測と想定されるアクションなどに関する正確な情報を集め包括的に情報提供し、人々が動けるための支援といったエリアだと思います。支援に関しても、情報を中心としたものに集中し、それらに基づき、ビジネスのオウナーにそれぞれどのように切り抜けるのか、どのような支援が切り抜けるのに必要なのかといったビジネスプランを立ててもらうのが効果的かと思います。環境変化はビジネスにはつきものなので、ビジネスオウナーであれば恐らく何らかの「計画」を立てる必要があるし押しつけの支援でなく、自発的に支援を提案できるほうが起業家的な発想です。政府にできることには限界があるので、政府の意向に左右される状態は健全ではありません。本来ボトムアップでやるべきことをトップダウンでやろうとするので、無理があり、効果的なアクションが取れなくなるのです。

 

3)医療体制の問題

アメリカの大統領はCovid 19渦中なので「戦争の中での大統領」だと言っていましたが、実際に病気と戦争とはその取り組みが違っています。戦争であれば政府が徴兵してトレーニングをし、戦場に送り出します。医療のトレーニングにはそれなりに時間がかかるし、育てる専門機関は政府の中にはありません。戦争は政治が中心で起こることなのでその主体と体制は政府が握っていますが、病気は政治から起きたことではないので政府が主体として戦うという状況ではないのです。政府の役割はむしろ支援の側です。現場の医療、そしてアメリカの場合はその多くが法人化された政府機関ではない民間組織が責任を任されています。民間は民間故の限界があり、それぞれ資金、設備、人材といった部分での判断には限界があります。何よりそれだけ多くの民間団体を取りまとめ戦争として戦うにはそれなりの体制が必要です。ただ、すごいと思うのはそんな中で医療に携わる人々は自己犠牲を払い、24時間体制で治療にあたっています。つまり国をあげた戦いの負担が医療体制にのみ集中してしまっているのです。幸い医療従事者は知性があり、モラルが高い人も多いので戦争の場合と異なり現場でモラルが崩れることは防げているようです。ただ、後方支援は十分働いていないようで、病気に対する「戦時体制」として国の体制が確立できていなかったので今回のように医療崩壊がおきています。危機的な状況なので、政治家が表にできていますが、根本的に政治ができることには限界があり、軍の医療施設を出したり、ウェストバージニア州でのワクチン投与に軍を投入して成功させたりと限定された場所のみです。

 

こういった状況の場合リーダーに必要とされるのはファシリテーション能力であり、民間、政府をあげて協力できる体制を築き、更には必要な資源を投入できる体制を作ることです。その一例として唯一の勝利と言えるのはワクチンの開発でしょう。短時間で非常に効果的だとされるワクチンが開発されました。今、こうとなってはワクチンのみが切り札となっています。ただ、ワクチンを国民に摂取させるまではまだまだ長い道のりなので、今後は連邦政府-州政府-民間といったレベルでのファシリテーションが切り札になります。バイデン政権はその辺に最初から力を入れているので、5月までにワクチンがいきわたると言っているので、それを信じたいと思います。以前ワクチン系の株式投資で紹介したPfizer、 Moderna、といったすでに認可されたRNA系ワクチン以外に、 Astra Zeneca, Johnson Jhonson Novavax Innovio といったDNA系、Viral Vector系の異なるワクチンも認可されていくので、武器としてのワクチンはかなり充実してきそうです。普通に戻れる日は近づいてきているのでしょうか?日本はどうでしょうか?オリンピックはできそうなのでしょうか?