コロナ禍の中、アメリカの多くの都市ではレストランはTake Outのみ、空港も閑散とし、せっかく再開したプロスポーツも観客数を減らしの自粛状態が続いています。ただ、そんな中、州政府の命令を無視し、大規模でさらにマスク無しといったとんでもないイベントを続けていることが許されている人がいます。ドナルドトランプ大統領です。大統領選挙まで数日と迫り、必死になって再選をかけていますが、かなり劣勢とされています。Covid19の封じ込めに失敗し、記者会見でその失態や失言が明らかになる中でも、開き直り、Twitterで政敵を非難し、自分と意見が合わない人は首にし、反対者やMediaを徹底的に攻撃している姿を皆さんはどう見ているでしょうか。最近ではCovid19対策の責任者の一人として信頼されている国立アレルギー感染症研究所所長で過去6人もの大統領に支持されてきたアンソニー・ファウチー所長を「愚か者」「大惨事」と評し、科学者を「ばか者」「信じない」というようなことまで言っています。科学や専門家を信じないというのは通常の日本人の視点からは理解できない「政治的な失敗」に見えます。ただ、それでもトランプを支持し続ける人は一体どのような人なのでしょうか?

 

アメリカにおける「保守」対「革新」の基礎構造 共和党基礎支持層とキリスト教保守派

アメリカの大統領選挙は各州での選挙人をどれだけ獲得したかそのコマ数の競争になります。これをElectoral Collageと言います。2016年のクリントン対トランプ選挙、そして2000年のアル・ゴア対ジョージブッシュの際も、票数では多数を取ったのはそれぞれ民主党でしたが、選挙人の数では共和党が上回り、トランプ、そしてブッシュがそれぞれ大統領となっています。これは連邦制を維持する中で、各州の勢力をある程度均衡させるための制度で、都市部や人口が集中する地域の影響が薄められ、各州の力関係をある程度均衡させる働きがあります。そして近年は南部を中心とした地域で共和党が強く、それにより都市部で強い民主党が絶対数で勝っても、大統領は共和党という流れが続いているのです。ではなぜそれらの地域で共和党が優勢なのでしょうか?

 

政治政党をよくLiberal(革新)そしてConservative(保守)という分け方をし、歴史的に「大きな政府(増税)、政府の規制、労働者、貧困者よりの社会主義的な政策」をとるのが革新である民主党、「小さな政府(減税)で、自由貿易、自由競争、規制緩和、ビジネス資本家優遇の政策」をとるのが保守派である共和党だと言われています。ただ、この構図は戦後大きく変わってきています。規制緩和を進め自由貿易、投資の自由化を促進する政策を民主党のクリントンが取ったり、軍事支出を増やし巨大な政府予算を作った共和党のレーガン政権、そして自由貿易のNAFTAやTPPなどから脱退し、保護主義的な貿易政策を共和党のトランプ政権が取っていることなどから、「大きい政府」「小さい政府」の線引きはレーガンのサプライサイド経済政策の成功以降は難しくなってきています。トランプは民主党を「社会主義、左翼」と批判していますが、民主党候補のエリザベス・ウォーレンや最後まで残った バーニー・サンダースなどは大学授業料の無料化や貧困者保護などで欧州型の社会主義に近い部分がありましたが、クリントン・オバマ路線を継承するバイデンはそこまで社会主義的ではありません。同時に規制緩和ということに関しても、共和党のトランプは中国制裁などで保護主義的な立場をとり、唯一Covid19予防のマスク着用やロックダウンに反対する部分でのみ、規制緩和的な立場をとっています。なので、この歴史的な「革新」と「保守」という2大勢力の分け方はあまり適応されにくく、重要な分類項目でなくなりつつあります。特に今回の選挙では、労働者(特に白人)の中で共和党のトランプ人気が高く、ハイテクやビジネスの資本家のトランプ離れが進んでいると言われます。「労働者=民主党」「資本家=共和党」という流れが完全にきえつつあるのです。では「保守」「革新」はなにをもって区別できるのでしょうか?

 

↓の図はトランプ支持(共和党)が共和党のカラーである赤で記され、バイデン(2016年のクリントン)支持(民主党)が青で記されています。歴史的にニューヨークや、ロサンゼルス、シカゴといった大都市は民主党で、前回も今回もカリフォルニアは、ニューヨークは民主党が取ることがわかっているので、候補者は来ようともしません。逆に、アラバマやケンタッキーなどは共和党が強いので同様に注目されていません。ただ、今回は過去共和党が強かったテキサスやジョージアでさえ民主党に転ぶのではないかと言われ共和党(というかトランプ)にとって不利な選挙合戦が繰り広げられています。

 

この地図と共通性が高いのがアメリカにおける福音派教会の勢力を示した↓の地図です。赤いいるが示す部分は「バイブルベルト」と言われ、歴史的に保守的な南部バプテストを中心としたキリスト教保守派の勢力の中心です。緑やオレンジはルーテル教会やメソジストといった古典的な教会の中でも福音派のグループが強い地域。そしてグレーはキリスト教では異端とされますがキリスト教から派生したモルモン教が強い地域です。これらの地域が共和党支持の地域と重なっています。歴史的に白人の福音派のクリスチャンは7割以上が共和党の大統領に投票しています。それが2016年には81%もがトランプを支持しており、7月の調査でも7割がトランプのCovid19 への対応に満足しているという調査が出ています。このトランプに忠実な保守派キリスト教徒に「科学を信じない」がなぜ支持されるのかの答えがあります。

 

アメリカはキリスト教徒が約7割と言われ、キリスト教がその建国、基本的な政治思想に影響を与えています。経済や政治状況は常に変化し、それぞれの状況で政権の判断はゆらぎます。だから前述のように古典的な保守、革新の分け方が適応できなくなるのです。むしろ現在のアメリカの政治における「保守」「革新」は前述の古典的な政府に関する考え方以上にキリスト教における「保守」「革新」の分け方を適用した方がしっくりいきます。キリスト教の保守派は聖書に重きを置き、聖書の教えを文字通り忠実に実行しようとするグループです。リベラルは、聖書を状況にあわせて解釈を変えていこうとするグループです。1800年代後半からエンライトメント(啓蒙思想)の影響を受け、民主主義が定着してくると、ドイツなどを中心にキリスト教内でも大きなリベラル化の動きがありました。その中で欧州ではリベラル化した主要教会は特にナチスを止めることができなかったこともあり戦後徐々に勢力を弱めていきます。モンキー裁判などで批判を受けましたが、アメリカでは福音系、原理的なキリスト教会を主流に信徒数を増やしていきます。この革新「リベラル」、保守を戦後大きく分ける問題として、同性愛結婚、そして人工中絶があります。保守はそれらを認めず、革新はそれらを取り入れていこうとするグループです。これらは1970年代以降アメリカに起きた大きな思想的な流れを受けていますが、そんな中で革新(リベラル)な教会は支持者(信者)を大きく減らし、調査によると、1970年代に比べ50%以上信者が減少したと言われています。一方保守の中核の福音派は、その数を増し、キリスト教教会の主流となっています。そんな中で「女性の権利」を主張し、中絶の合法化を守ることに徹した最高裁判事のギンズバーグが亡くなったので、空いたスポットに「保守」で「中絶反対」の意見を述べたノートルダム大学ロースクールの教授バレットを任命したのはまさに「保守派」勢力の強さの反映であると言えます。保守派のクリスチャンは聖書を最も大切なものとし、その結果として歴史的に科学と反対する考えがあります。それが進化論(科学)と創造論(聖書)の対立です。なので、トランプが「科学を信じない」と言うと、それに同調する保守的なクリスチャンは少なくないのです。

 

トランプは再選されるか?

以前ブログでも書きましたが、私のビジネススクール時代の恩師James Q Wilson教授が「現代アメリカでは人々の経済的な状況が在職の大統領を再選されるかどうかを判断するという原則がある」と言っていました。とすれば、アメリカが経済的に躍進していたCovid19以前であればトランプ再選は間違いなかったはずです。但し、今回のCovid19とそれに対する失策、人種問題、更に経済の落ち込みは天から降ってきた悪運となってトランプを襲っています。それでもDenialのサイクルに入ってしまったトランプは嘘を繰り返し、追い打ちをかけるように、税金の不正の問題(金持ちなのに税法を乱用しほとんど所得税を払っていない)、ロシアがアメリカ兵士を殺すことに償金をかけている問題でもロシアに弱腰であり何かロシアに弱みを握られていると思われたり、白人至上主義やQAnonのような極右との関係なども取り上げられ、更には人気のあった前大統領のオバマが積極的にバイデンの応援演説に回っている状況など、トランプ再選の可能性は低いと思われます。前回、トランプの大統領としてどうかということは評価されておらず、不人気で汚職のうわさがされていたクリントンが対抗馬であったので、保守、革新のどちらにも属さない人々がトランプに投票して大逆転は私も想定できたことではありました。ただ、今回は状況が異なります。

 

今回は前回より更にかなり高い水準の投票率が予想され、今まで投票しなかった無関心であった中間層がどのように投票するかで結果がでるとも言われています。それが、前回決め手となった民主党と共和党が拮抗するオハイオ、ミシガン、フロリダ、アリゾナ、ネバダといった州で注目されています。トランプに関してアメリカ人は「好き」「嫌い」かはっきり分かれます。トランプ自身自分が好きか嫌いかですべてを判断する「いじめの親分」的なやり方で政治をしてきたので、白黒はっきりする面白い選挙であるとも言えます。なので実態としては「バイデン対トランプ」というより「トランプ対反トランプ」の選挙だとも言えます。だからバイデンに対する汚職やセクハラの疑惑は、それほど大きな問題として取り上げられておらず、FOXを除くMediaの多くも反トランプの報道が続きます。メディアのサポートを得ている民主党は結束を強め、逆に共和党員の中から反トランプ勢力(Lincoln Project 等)がバイデン支持をしたり、若者の多くが反トランプであることなどから、圧倒的な差でバイデンが勝つということも想定されます。

 

今回、最悪のシナリオとして想定できるのが、当日の投票ではトランプが勝利し、後日、郵送投票の結果が反映されそれがひっくり返るという状況です。共和党の支持者は、選挙場投票し、民主党は郵送すると言われるので、選挙が拮抗した場合はそれがあり得ます。恐らくトランプはすぐに勝利宣言をして、郵送は不正だと言い居残ろうとします。それをトランプが準備しているので、「負けても認めない」、「郵送は不正」という発言を繰り返しているのではないかと言われます。もしそうなったらまた町にデモ隊が現れ、更には「待機するように」とトランプがDebateで言っていた極右の武装グループやMilitiaが町に出てデモ隊とぶつかり全米各地で騒動が起きます。トランプは「中国が敵」、「Covid19は中国の責任」と言っているので、私の家族を含むアジア系の人たちも差別的なとばっちりを受けるかもしれません。さらに11月でCovid19 のワクチンもない中、町に繰り出す人々の間に爆発的にCovid19が広がり、Covid19での犠牲者がさらに急増し、株式相場も暴落するといったアメリカ大混乱の状況です。そんな状態だけにはなってほしくないと願います。

 

トランプ落選と共和党のトランプ対応、そしてキリスト教福音派に対する影響

選挙でトランプが大差で負けることがそのような状況を防御することとなりますが、トランプはありとあらゆる手を使って再選をはかると言われています。その理由として落選した後で、調査されている脱税やビジネスの不正行為など調べられ、トランプ自身が刑事訴訟されるリスクが指摘されています。だから「負けたら外国に逃げるしかない」と演説でいったのはまんざらではないのかもしれません。その場合逃亡先はロシアでしょうか?ビジネスにおとなしく戻るというのが無難ですが、あの性格的におとなしくなることはないでしょう。ただ、トランプが大敗した場合、共和党はトランプと距離をおくようになると想定できます。もともとトランプは共和党の中枢にいたわけでもなく、部外者であるだけでなく、保守的で伝統を尊重する共和党を過激な方向に持って行った責任は重大であるからです。トランプの娘婿のクシュナーが、「共和党をHostile Takeoverした」と言っていますが、トランプに乗っ取られたと感じている共和党の党員は少なくありません。2012年共和党大統領候補でオバマと戦ったユタ選出モルモン教の上院議員Mitt Romnyは「トランプに投票しなかった」と言っていることから、すでにトランプ切り離しが進んでいると思われます。トランプが大敗した場合、共和党は、バイデン支持に回った共和党員を戻すためにもトランプと距離をおくことになるでしょう。追い出されたトランプは過激なトランプに忠実な白人至上主義の極右グループなどとつながり独立した独裁者的な政治活動を続けるかもしれません。

 

ここで問題になるのがキリスト教福音派です。これは教会によって異なりますが、熱烈にトランプ支持をしていた教会は、恐らくより過激になるか、或いは人々が目覚めて教会と距離をおくようになるかもしれません。特に若者の多くはクリスチャン=共和党の構図に疑問を持つようになってきているので、若者の教会離れが加速する可能性もあります。なので白人を中心とする福音派キリスト教、そして白人の中でキリスト教の衰退が全体として進み欧州のようになっていく可能性もあります。

 

教会の間違い:敬虔なクリスチャンがトランプを支援するリスク

今回のCovid19 は教会での集会もできず、それを理由に開放を唱えるトランプを支持する教会も少なくありません。エンターテイメント業界、旅行業同様に教会にとっても危機的な状況なのです。アメリカの保守的なクリスチャンの多くは、共和党の支持者です(前述した通り7~8割は無条件に共和党を支持する)。私は保守的なクリスチャンでその友人も多いのですが、過去、「オバマ大統領はイスラム教徒だ!」とか、「クリスチャンなら絶対共和党を支持すべき」といった話になると、「本当にそれっていいのだろうか?」と疑問を感じてきていました。クリスチャンがトランプ支持をすることに関してはいくつかもっと大きな問題があると思います。そしてもしそれに気が付かなければ、人々はより教会、そしてキリスト教に対して間違った考えを持ってしまうリスクがあると思います。それは以下の通りです。

 

1)キリストの教え:クリスチャンとはキリストを信じてキリストの教えに従う人たちのことです。キリストの教えは新約聖書の福音書に書かれています。その中心になるのが隣人を愛すること、そしてその隣人とはサマリア人(ユダヤ人がさげすんでいた人たち)であるとルカ10:29~37に書いてあります。クリスチャンはそのキリストのかおりがあり、貧困者や恵まれない人を優先して保護します。移民やイスラム教徒に否定的であり、自分の気に入らない人は徹底的に攻撃する人をキリスト教的に支持すべきなのでしょうか?自分のことを優先し、まわりは自分の言いなりになればよいというような行動をとる人は、キリストの教えからかけ離れています。

 

2)嘘をつくこと:Onepieceのウソップではないけど、トランプは平気で嘘をつきます。ウソップと違うのは、その嘘をつく理由は自分を守るためであり、別な人を守ろうとするような嘘ではないことです。福音書の中で明確なのがキリストの敵となる司祭やパリサイ派、サドカイ派などが嘘で大衆を動かし、キリストを十字架につけます。ヨハネ8:44のキリストの言葉はバイデンにあてはまるでしょうか、それともトランプにあてはまるでしょうか?

 

3)金持ちでいることの責任:キリストの教えは一貫してこの世の富を追求することに否定的です。むしろ天に宝を積むようにと教えています(マタイ6:19~20)。金持ちは資産を売り払い貧しい人に与え、すべてをすててキリストについてくる(マタイ19:16~22)ように言っています。そしてマタイ、ルカ、マルコと3福音書で述べているのが金持ちが天に行くのは「ラクダが針の穴を通るのより難しい」と言っています。金持ちであることを誇り、金でできたゴルフのクラブを持ち(日本の血税で安倍首相がプレゼント)、自分の娘の団体に寄付を募り(日本の血税から寄付をしている)、自分の会社の施設に莫大な収入をもたらす政府イベントをし、そのような人をキリストに従う人が熱狂的に支持することはどうなのでしょうか?トランプがラスベガスで教会に行き、ポケットから札束を出して献金箱に入れる姿が報道されていましたが、なぜ小切手でしないのでしょうか?あたかもマルコ12章に書かれているキリストが批判した金持ちのユダヤ人のように見えるように寄付をする姿は、キリスト教徒的ではありません。ルカ16:15でキリストが語っている金持ちに似ているのはどちらでしょうか?

 

4)聖書を読んでいること:ヨハネ6章に聖書にある神の言葉は、「日々の糧である」と書いてあります。クリスチャンとして日々聖書を読み、聖書に書いてある内容を理解しているということが信仰の表れであるとも言えます。ドナルドトランプは長老派のクリスチャンであるとも、無宗派クリスチャンであるとも言われています。ただ大統領になるまで教会にはいっていなかったようです。デモ隊を退去させ教会の前にいき聖書をわざわざかざしたりして自分の支持者である福音派クリスチャンにアピールをしようとはしていますが、そのやり方はあまりキリスト教的ではありません。トランプが聖書と写真を撮るために訪れたDCのその教会の牧師まで批判をしていましたが、トランプは聖書に対する理解はあまりないと思います。それは以前聖書から引用した際に第2コリント人への手紙を”Second Corinthians”ではなく”Two Corinthians”と読んだので明らかです。トランプの娘はユダヤ教徒(結婚したので改宗した)であり、トランプ自身は自分の利益を考える人なので、自分をサポートするクリスチャンにアピールすることは考えてはいますが、聖書に書かれていることに関心はないように思えます。選挙活動でも教会の礼拝に出てますが、それは教会に神を賛美するためにいったのでしょうか、それとも自分の票獲得のためでしょうか?

 

5)性的な乱れ:福音派教会は、同性愛結婚に反対しています。同性愛を否定する理由として聖書の第1コリント6:9~10、1テモテ1:10、ローマ1:26がよく引用されます。これらは使徒パウロの書簡ですが、パウロは当時増えつつあるクリスチャンにキリストの教えに従って生きることの意義とあり方を具体的に手紙に書いて残しています。これらの手紙が書かれた人々が住むローマ帝国内の都市では性的な乱れが激しく、当たり前のように売春や、オージーなどの性的に開放な文化がありました。昨年エペソやコリントの遺跡を見に行ってきましたが、大きな売春宿が町の中心にあり、当時の性的に開放された風俗が良くわかりました。なので、これらの聖句を読むと同性愛(男色)に関して、姦淫と並立して書かれており、性的な乱れの一つとして同性愛に走ることを禁じています。逆に言えば、それが異性であっても問題であり、同様に避けるべきことであるのです。聖書にはむしろ、離婚に関する記述が多く、離婚を姦淫と関連付け、キリスト自身が厳しく語っています(マタイ19章)。ドナルドトランプは3回離婚し、イヴァンカが妊娠中のポルノ女優との関係、性的な発言のビデオなどが公になっています。更には、10代の女の子を集めて性的なハーレムを作り友人の金持ち達に女性を斡旋していた大富豪ジェフリー・エプスタインとも古くからの友人でトランプ自身1994年に13歳の女の子をレイプしたという訴訟ざたもありました。ジェフリー・エプスタインは刑務所で謎の死を遂げましたが、彼に関しては民主党の大統領であったビル・クリントンやイギリスのアンドリュー王子のほうが深くかかわっていたので、選挙戦では使われないと思いますが、クリスチャンが性的に健全ではない人を同性愛に反対しているという理由だけで支持することは危険です。離婚が常習化している中、福音派教会の中でも離婚や性的な乱れに関してはリベラル化しており、恐らくこの部分からも福音派教会も同様に崩れていくと思います。

 

6)人工中絶と死刑:同様に福音派教会が反対の立場をとっているのが、人工中絶です。なので、前述した通り人工中絶に対して保守的な考えを持つバレット教授を共和党が多数で承認させたのです。聖書の時代はあまり人工中絶という考えがなかったので、人工中絶に反対する一番の理由は「汝殺すなかれ」にある神の命令に基づいています。なので、以前から人工中絶に反対していたカトリック教会などは同時に死刑にも反対の立場を取ります。共和党の場合は、人工中絶には反対ですが、犯罪に強く立ち向かうという姿勢で死刑に賛成すること、同様に武力行使による警察や軍隊の殺人もサポートする、といった矛盾があります。なので、クリスチャンなので人工中絶に反対、そして死刑に賛成というのは間違いであり、それを主張するトランプを選ぶことは矛盾を行動に移すことになります。

 

7)税金を払っていない:New York Timesがドナルド・トランプは過去3年で750ドルしか所得税を払っていないとスクープしました。トランプは唯一大統領で所得税開示をしておらず、前回の選挙のDebateで、クリントン候補がこの件で、「税金をはらっていない」と指摘した際には「なぜなら私は賢いから」と答えていました。私は公認会計士で税金の仕事も3年していましたが、大金持ちが必ずしも多くの税金を支払っていないというのは事実です。アメリカの税法の解釈次第で、多くの控除やクレジットを取り、富裕者の税金を少なくすることを仕事にしている公認会計士は少なくありません。だから私の税務部門でも3分の1は弁護士でしたし、個人の所得税では高いフィーが払える富裕者や企業がクライアントでした。トランプはこれに反論していますが、恐らく彼が何百万ドルも税金を払ったというのは、彼が持つ会社の所得税か、固定資産税のことでしょう。クリスチャンは税金に関しても謙虚であるべきです。キリストは税金に関して「シーザーのものはシーザーに返す」(マタイ22章)、パウロは権威者(国)も神の業をするためにサポートするために税金を払うべき(ローマ13章)としています。極度に税金を減らそうという考えが、「自分の富を増やす」=「他の人の負担が増える」という構図になり、これはキリスト教的ではありません。それを自慢する姿は、権威者として不適切であると言えます。

 

8)態度:キリストに出会うプロセスで人は変えられるといいますが、その中で重要なのは自分の罪深さを認めることで、謙虚さ、柔和さ、そしてキリストに近づこうとする人間としての変革があります。自分の強さを誇り、相手を徹底的に非難し、自分のちょっとした間違いさえ認めない姿は、そのキリストに出会った後の人のようには見えません。トランプはミリタリーの学校時代から、「いじめの親分」で、人を攻撃し、力でねじ伏せることにより上に上がってきた人であると言われています。Debateを見る限り彼のその「いつものやり方」は相変わらず続いています。変革がないのです。福音派教会では、「悔い改め」「生まれ変わり」を強調していますが、トランプを見る限りそれとはかけ離れています。すべて損得や自分の好き嫌いで判断し、感情の起伏が激しくプライドが高い人は隙が多く、操作されやすいので国のリーダーとしては適していません。強い信念や信仰、哲学、思想といったものがしっかりと生きていないリーダーは人々を間違った方に導きます。

 

こういった聖書的な原理原則に目をつぶり、クリスチャンならトランプ支持とするのは聖書の黙示録に出てくる偽預言者に騙される人々なのかもしれません。新約聖書唯一の預言者の書である黙示録によれば人々をコントロールする獣のサインは666(黙示録13章)とありますが、娘婿のクシュナーがトランプと組んで、ニューヨーク市で取得したビルの負債を5分の1に減らさせたというスキャンダルがありましがた、その建物は666  5th Avenueでしたね。それは余談ですが、私は今回の大統領選挙に関してクリスチャンは、無条件に共和党に投票するのをやめ、しっかりと自分の価値観に基づき、状況を理解して投票をしてほしいと思います。そしてトラブルのない圧倒的な数で結果ができ、これ以上世の中が荒れるようなことがないようにと祈っています。

 

そして教会も政治に関しては距離を置くべきだと思います。副大統領のペンスは敬虔なクリスチャンで、評判が良い人でした。その彼がトランプの副大統領として忠誠をつくし、彼の嘘に加担していく姿は、トランプを熱烈にサポートする教会の姿をみているかのようです。教会そしてクリスチャンは政治とは距離を置き、聖書とキリストにのみ従い、世の流れに左右されず一貫した価値観を維持していくべきです。黙示録を読んでいると世の終わりのプロセスで多くの人が偽預言者に従う姿が描かれています。黙示録には7つの教会が出てきますが、教会自体がそこに集う人々を間違った方向に導くようなリスクがあるわけです。Covid19で人々が教会から距離をおき自分の信仰を見直すことはある意味、神が与えてくれた貴重な機会なのかもしれません。

 

 

日本でテレビを見ていたら、世界中で日本人が行っていない場所でお笑いをする番組をやっていました。そこでガテマラに行った際に出た際に国際交流関連の政府機関の所長であるレオネルが出ていました。レオネルは学生の時に私がLAでスタートした教会のドミトリーの住人、教会のメンバーでもあり、文部省の奨学金を勧めその後東京外語大学に留学した人です。彼を見ていて私のLAの教会における経営再建の活動をいろいろと思い出しました。

 

ドラッカーから学ぶ

恥ずかしながら、私はビジネススクールでも、コンサルになってからもドラッカーの本はあまり読んでいませんでした。漠然とアカデミックな抽象的な話が多く、ハンズオンではないと勘違いしていたのです。それが、直接ドラッカー氏と会う機会があり、お年を召していたのに、鋭い洞察力があり、ストレートにポイントを指摘するそのオーラに感銘を受けてからでした。読んだ本の中でも最も感銘を受け、最もよくかけていると思ったのが、「非営利企業の経営」でした。ビジネスと非営利はそのゴールが違う分、次元が違うと思っていましたが、ドラッカー自身の教会に対する経営アドバイスの経験も書かれており、そこに書かれている一つ一つのことが自分が取り組んでいた教会の経営再建に生きてきました。ドラッカーの凄さはただ理論を述べるだけでなく、全て経験・実践に基づいているということです。私が15年のアメリカにおける経営コンサルティングの経験でも最も困難であったのが非営利企業の一つであるキリスト教の教会の経営再建でした。

 

衰退する教会の再建(ミクロ的背景)

1993年にUCLAのビジネススクールに通っていたころに行き始めたのがUCLAのアパートのすぐ近くにあったVista Del Rey Christian Churchという教会でした。当時100名以上のメンバーがいたのですが、近隣のヒスパニックの人口が増えたのでメキシコ人の牧師先生を迎えたばかりでした。ただ、ヒスパニック系の多くはカトリック、そしてメキシコなどを頻繁に往復する移動が多く、更には献金額が低く(所得が低いのと、カトリックではあまり献金の習慣がない)、徐々にメンバーが減り、経済危機になりました。そんな折に働きすぎの牧師が脳梗塞で倒れ、ベッドで「この教会を任せる」と言われてしまったのが私の経営再建で関与する本格的な始まりでした。近くにVINEYARDと言われる大きな教会ができ、施設的にもプログラム的にも色々とオファーできるそちらの教会に人々は移動しました。巨大なスーパーにつぶされる地元の八百屋さんのように非常に厳しい状況になったのです。但し、当時私はコンサルタントとしてうまくいっており、教会の経営再建にも自信をもっていました。経営再建のイニシアチブの一つとして始まったのがCVSという日本人の学生を迎えてのリーダーシップセミナーでした。不動産の運用効率を上げたりと、金銭的な経営は成功しました。ただ、教会という組織は奥が深く、お金が腐敗、分裂を呼び、最終的に乗っ取られていきました。私の経営コンサルとしては大きな失敗です。その失敗の中から「教会」という組織をどうするかということに取りつかれ、その奥義を知ることにはまり、神学校にまで行き、牧師としての道を歩むこととなってしまったのです。昔を知る人に不思議がられるのですが、コンサルタントという職業はProblem Solving(問題を解く)のがその仕事内容なので、難しい問題に直面するとそれに取りつかれてしまうのではないかと思います。

 

欧米におけるキリスト教会の衰退(マクロ的背景)

昨年ロンドンに行った際に、有名なセント・ポール教会(Cathedral)の礼拝に出ました。普段観光客で混んでいる有名な教会なのですが、日曜なのに礼拝の椅子はかなり空いており、尚、驚いたことに献金の袋に「最低でも5パウンドは入れてください」といったことが書かれていたことでした。これは、教会の常識からいうとありえないことであり、礼拝でさえ観光客に依存しなければならないのかと思い、欧州におけるキリスト教の衰退を肌で感じました。そしてアメリカでも同様の現象が起きつつあります。

 

過去20年間アメリカではEvangelical Church(福音系教会)が台頭し、バプティスト、メソジスト、長老派といった伝統的な教会は衰退しました。カトリックはラテン系移民が増えたことで一時期増えました。そこで多くの伝統的な教会もEvangelical(福音的)な礼拝スタイルもち、あの伝統を重んじるカトリックや、アングリカンでさえ、福音的な礼拝にスタイルを変えている教会も少なくありません。ただ、今ではその福音系でさえ減ってきており、教会のメンバー数、礼拝参加者数は減ってきています。そして多くが年配の方がメンバーの主流となっているので、今回のコロナ自粛は大きな危機となっています。

 

アメリカの魅力はその再生能力です。アメリカでビジネスの動きは早く、次々と会社が生まれ、次々と消えていきます。アメリカ株式市場で成長株、優良企業の集まりとしてFAANGと言われるものがあります。これはFacebook, Apple, Amazon, Netflix, Googleです。これらの株は高騰し、これらの会社の出す商品やサービスは世界から注目を浴びています。ほとんどが、20年以内にできた会社古いアップルでさえ、その歴史は40年弱です。アメリカで最も古いダウ企業はGEですが、最近では元気がなく、もう終わりではないかなどとさえ言われています。アメリカの根本的な強さは再生能力であり、何かが廃れても別な何かが生まれます。ちょうど自然の中で森が焼かれても新たな種がまかれ自然が続くようなサイクルです。そして崩れた中から新しい成長があります。

 

アメリカが再生できるのは、教会の礼拝参加者は激減しているのですが、Gallopなどの調査によるとクリスチャンとしての人口の割合はそれほど下がってはいないのです。森で例えれば木は枯れてても自然環境自体は変わっていないのです。現在アメリカで最も大きい教会はLIFE CHURCHというインターネットの教会であり、90年代に若い牧師のガレージでスタートした教会です。その一方で古い伝統ある教会は年配のメンバーに依存し、特に今回のコロナ問題で年寄りが教会に来れなくなると、それをきっかけに益々減退する可能性があります。年に3000以上の教会がその扉を閉めているアメリカで更にそれらの流れが加速しそうです。衰退する教会はどのようにして再生することができるのでしょうか?自分自身への反省を含め、ドラッカーから学んでみたいと思います。

 

条件1:組織のミッションを明確にする

ドラッカーの本を読んでいて「ガーン」ときたのがこの一文でした。それは経営再建を金銭的、或いは「人集め」という観点で捕らえていた私の考え方を大きく変えるものでした。「もっと早く読んでおけばよかった…」と当時思いました。そこにあったのは、「非営利企業は、製品やサービス、或いは社会のコントロールなどを提供するのに存在するのではなく、人を変える」というミッションの為に存在する。ということでした。つまり組織の成功は「変えられた人」がどれだけいるのかということです。当時教会に来ていた人は、鬱病で自殺未遂がある人、麻薬中毒者、元売春婦、違法移民、荒れた家庭の若者など、一見普通のアメリカ人であってもそれぞれ問題を抱えた人でした。そういった人は時間がかかり、献金額も少なく、勘違いしていた私はそういう人を避け、当時開発されていた近くのPlaya Del Reyなど新興住宅地から新たに人を入れることに力を入れていました。経営危機にあるアメリカの教会の多くは同じように人集めに走っており、当時はやっていたリック・ウオーレンのPurpose Driven Churchなどにあった、人々の嗜好に教会の音楽などを合わせるといった部分に力を入れていました。非営利団体は成功をその団体や資金力のサイズ的な成長におくのではなく、むしろそこに与えられた人が一人でも変えられ、問題から解放されるということに目を向けなければなりません。

 

条件2:やるべきタスクに注目すること

衰退する組織で苦労するのが主導権を握るのに政治的な争いが多いことです。特に伝統的な教会の問題は、その経営責任を有する役員が、選挙でえらばれるので、いくつかの大きな家族の代表者が選ばれます。そしてその代表者は自分の家族の視点の要望を通すことに執着します。結果として新しいことをするのが非常に困難になります。ちょうど政治の世界と同じです。但し、国の政治の世界では家族と政治の間に距離があるので、そこまで家族の要望が表に出ません。役員たちのエゴが表に出て、何も起こせない状況になります。ドラッカーはそういったエゴではなく、やっているタスクに注目することが重要だと言っています。つまり、いちいち役員の承認など得ずに、聖書に書かれているやるべきことに注目していれば必然的に活動が沈滞することがないのです。復興に向けてアクションを明確にし、優先順位を決め、担当と責任を明確にし、ガントチャートを作りモニターするという、コンサル的なアプローチは教会には不適切でした。教会のようにボランティア的な組織は、よりオーガニックなアプローチが必要でした。それがドラッカーの言う「Self-Development」なのかもしれません。教会に来るホームレスや貧困者の救済、教会の建物への修復といったことを必要に応じてやっている間は分裂することもなく、人々は喜んで奉仕をしていましたが、優先順位だとか、責任者という「この世」的な発想は、オーガニックな活動に反し、カルチャーを変えていってしまいました。

 

条件3:リーダーの質

37ページでドラッカーは「リーダーはINDEBTEDNESS(恩義)を感じなければならない」とあります。そしてそれはただ単に自分を選んでくれたメンバーということだけでなく、その組織の社会全体に対する存在意義に対して、つまり社会全体に対して言えることです。ドラッカーはその組織がどのような「社会にインパクトを与えたか?」という評価をするように言っています。更には、ドラッカーは「どんなに顧客をつかんだと思っても、顧客でない人の方が多いものである」つまり、外の方が内より大きいのだからリーダーは外にも目を向けなければならないのです。John Boltonではありませんが、ドナルドトランプは自分の再選のことしか考えていません。アメリカ全体のリーダーではなく、自分をサポートしてくれる人にのみ便宜を図る人間、自分のキャリアの成功だけ考える利己的ビジネスマンなのです。大統領は再選のことだけ考えて自分のサポーターを喜ばすことばかり考えていてはだめなのです。全体のリーダーであるがゆえ、全体に奉仕することを考え、自分のことだけを考えているという利己的な人格者は、より高度なリーダーシップを要求される政治や非営利主義の団体のリーダーとしては不適切なのです。

VDRCCの経験では、分裂した教会のあるグループが外部からコンサルタントなる人を連れてきて、お金を使いこみ、更に連れてきた牧師は職務記述書にあるやることだけやっていれば良いという人でした。そういった場所に成長はありません。職業としてやっている牧師がいる限り教会に成長はなく、ますます破綻していくでしょう。牧師は献身、つまり全てを捧げた身であるので、自分の生活の安定以上に、奉仕することに喜びを感じなければならない、或いは責務を感じなければならないのです。そしてそれはキリスト教だけではなく、全ての宗教や、多くの非営利団体のリーダーに対して言えることではないかと思います。

 

ドラッカーの凄さ

ドラッカーはこの本を全ての非営利団体について書いていることなので、必ずしもそれぞれの宗教団体にはあてはならないのではないかと思っていました。ただ、コンサルタントが教会再建にすっかりはまって、ついには神学校にまでいき牧師の道を歩むに至ってしまった中で感じるのはドラッカーの視点はキリスト教の聖典である聖書にも合致するということです。聖書には教会が誕生する背景が書かれています。そこには、人の子(肉体)のキリストが死に、蘇り、昇天する際に聖霊を与え(使徒行伝1章)てそこに教会が生まれます(使徒行伝2章)。教会はキリストの体(エペソ人への手紙3~5章)であり、キリストの存在を世に示す存在です。それはキリストが全ての人の為に死に(2コリント5:15)、神の愛を伝えるため(ヨハネ3:16)に存在し、聖霊により生まれた教会がそれを受け継いでいるのです。現在生き残りをかけてHOW TOにのっとり、音楽やビジュアルなどにこだわり人集めにのみ執着している教会に将来はありません。存在の本質を失った教会は崩壊していきます(黙示録2章)。歴史的にその崩壊は再生のチャンスであり、清められ、本質的に真の教会であるもののみ残るので今まで続いているのです。

 

私がドラッカーに会えたのは、ドラッカーの知人でもおられた監査法人トーマツの創業者の富田岩芳さんが連れていってくれたからです。その車の中で富田さんに私の教会での経営再建の話をしていたのですが、富田さんは「私はキリスト教のことは良く知っている。ただ、好きではない。昔、大きな事件があって、神父を助けたことがある」と言っていました。何のことを言っているのかわかりませんでしたが、殺人事件だったと言っていました。もしそれが本当であるのならキリストの体である教会の一部である神父が社会に対してキリストを間違った形で伝え、人々に間違った形でキリストの存在を見せてしまったことになります。ドラッカーは「人を変えること」が教会のミッションであると言っていました。そしてそれはキリストのように世に奉仕できる存在に変えることです。その存在を示す「変革」の役割を担った人が世に奉仕することをやめ、人々をキリストから遠ざけるようになってしまえば、教会は存続しえないのです。

 

 

保守(Conservative対 革新(Liberal)

 

世界中のメディアにさらけ出してしまった、ドナルドトランプの人格、CNNなどのアメリカのメディアが激しいトランプ批判をする中でもある一定の有権者は決してトランプ支持を変えません。それがアメリカの保守層です。日本ではキリスト教右派などと言う人もいますが、キリスト教には右も左もないので、保守(Conservative)か、革新(Liberal)かという分け方をするのが通常です。保守はキリスト教の聖書中心主義、歴史的な聖書解釈に忠実な生き方をしようとしているグループで、革新は聖書の普遍性を世の中の変遷と共に時にあった解釈をしようとするグループです。これらのグループがぶつかっているのが、同性愛及び人工中絶に関する考え方です。社会的に力を持った同性愛支持者が法律的な力を背景に教会における司祭や結婚も認めるようにプレッシャーを出すなかで、保守系のクリスチャンはそれらに激しく反対しています。プロテスタントの中で最も大きな宗派の一つのプレズビテリアンはこれで分裂してしまっています。リベラルはもともとは19世紀にドイツを中心に広がったリベラル神学を中心に、世の中の流れに教会を合わせていこうというもので、進化論や科学に対してもっと割り切って取り組もうという思想が中心でした。ところが、ドイツのルーテル教会がナチスを止めることをせず、割り切って世の中の流れとして認めてしまった反省もあり、あまり伸びていません。リベラルの教会は、メンバーが激減し、保守系の教会が躍進してきたのです。第二次覚醒運動の結果生まれ20世紀初頭に急速に伸びたキリスト教プロテスタント宗派ディサイプルスは、70年代のリベラル、ヒッピー文化の中、リベラル化し、今では当時に比べ8割の減少となっています。キリスト教の中ではリベラルが弱体化し、保守が伸びているのです。

 

経済的、政策的な視点でリベラル、保守という軸もあります。保守は基本的に小さい政府、民営化、政府の社会に対する関与を最小限にするというものです。一方リベラルは、政府の社会関与を増し、大きな政府を持ち、貧困問題など社会に対して積極的に関与していこうというものです。ロナルドレーガンの軍事拡大から、保守も政府の予算の大きさに関しては対外的、特に当時は反共産主義の元に大きな政府(予算)を認めていく流れになっています。これらの保守と革新のイデオロギーが、アメリカの共和党(保守)、民主党(革新)と別れているのです。ただ、白人の若い世代は「政治的には保守、文化的には革新」という考えもあり、更に黒人などマイノリティーでは保守的なキリスト教が伸びており、「文化的に保守、経済的に革新」といった動きもでてきているので、民主党、共和党それぞれの議員が自分の選挙区の文化をみながら、別れた判断をしています。例えば、都市部の共和党は同性愛や女性の権利をサポートしたり、逆に南部や地方の民主党の議員は、学校での礼拝のサポート、同棲に関しても教会などは除外するという考えを主張する人も少なくありません。

 

保守勢力の躍進と衰退

革新は70年代の女性の権利(人工中絶の権利もその一部)、貧困撲滅(ジョンソン政権下)などの動きで躍進しましたが、同時に起きた麻薬の広がりや、治安の悪化などででレーガン政権以降80年代は保守勢力が大きな巻き返しをしました。レーガン政権の特徴として軍拡(これはもともと彼の出身のカリフォルニアの軍事産業の支援などが念頭にあったようですが)そして、サプライサイドの経済政策成功がその原動力にあります。そんな中、民主党の大統領クリントンは経済的にリベラルな政策を取り、財政赤字の削減など通常の「大きな政府」(予算大、税金大)の政策と異なる方針を取りました。つまり、共和党が軍事拡大などによる予算拡大、民主党がリベラルな政策の採用をすることにより経済面における差が見えなくなってきました。そこで保守、リベラルを分ける接点として注目されてきたのが、人種問題、宗教、女性の権利などを中心とした文化的な差です。

 

保守、革新の文化的な違い

文化的な側面から保守の主力となっているのが、白人、年配、裕福、敬虔なクリスチャンです。彼らが反対するのが、同性愛、人工中絶、の支持。逆にサポートするのが、学校などでの祈り、アメリカ=キリスト教に対する忠誠、そして銃による自衛権の保持です。そして南部及びアメリカの地方が基本的な勢力基盤となっています。保守を基盤に持つ共和党はこれらを支持し、その対極にあるのが、革新である民主党です。民主党はマイノリティー、リベラルな白人(特に大学教授、メディアなど)、若者などに強く支持されています。最近の人種問題で主にデモをしているのは民主党の支持者だと推定できます。アメリカで都市部はめったに民主党以外を選ぶことはありません。アメリカのメディアをみていて非常にユニークなのは、FOXは完全に共和党をターゲットしており、ドナルドトランプのことを絶対に悪く言いません。その他CNN、NBC,ABC,CBS等は普通に批判的です。だからトランプは彼らのことを”Fake News, Fake Media” と呼びます。

 

 

ドナルド・トランプの対立的政策が意味すること

ドナルドトランプがワシントンDCでデモをしている人たちを力で蹴散らせて、めったに行かない教会に行き、メディアの前で聖書をかざしました。それは明らかに自分の支持層を意識してのパフォーマンスです。前回の大統領選挙でも、劣勢とされていたトランプは、対立的姿勢を見せ、地方にいる保守層を投票に行かせることでなんとか大統領になることができました。以前説明した通り、トランプ自身はあまりクリーンな人間ではありませんが、批判をすることで相手を悪く見せ、危機感をあおり選挙で勝ちました。これがトランプのやり方であり、それを変えることはできません。なので大統領になってからもそのやり方を変えずに、政策を進めています。そんな中、歴史的に非キリスト教であった共産国の中国を敵にまわすのは想定される政策です。今回のデモでも気を付けなければならないのはトランプはデモの一部が暴徒となり略奪などの行為に及んだことを主張し、保守層の一致をはかる可能性があります。そしてそれはワークしている可能性があります。経済は最悪、コロナウイルスに関しては世界最大の被害を出し、ボロボロの状態でありますが、相変わらず40%もの支持率を得ている理由です。

 

ドナルド・トランプが共和党に及ぼす害

ドナルド・トランプは明らかに敬虔なクリスチャンではありません。以前聖書を引用した際にも“Two Corinthian Chapter 13” と言ってました。これはクリスチャンの常識ですが、2と書いてあってもそれは”Second Corinthians Chapter 13” と呼びます。彼がデモ隊を蹴散らせて教会で聖書をかざして写真を撮っていた際にも、教会の牧師は、「彼は一度もこの教会に来たことがない」と言っていたし、牧師の中には、「聖書をパフォーマンス的に出すこと自体が、聖書が心に生きていない証拠だ」と批判していました。彼はもともと宗教的ではなく、女性問題などもあり、本来保守層の価値観を代表していません。むしろ、副大統領のマイク・ペンスは敬虔なクリスチャンであり、価値観ではあっています。ある意味この「偽物」がキリスト教保守派の代表になってしまったので、保守派が対立姿勢を見せ、攻撃的になり、よりキリスト教の価値観から離れていくという問題があります。現時点でどう考えてもトランプの再選はあり得ませんが、中国を敵にし、更には経済的に、せめて株式相場の下落を防げれば勝算はあります。というのも現時点で失業している人の多くは都市部、そしてマイノリティーの比率が高く、もともとトランプの支持層ではないからです。更に年配、そして裕福層は株式投資の割合が高いので、現時点で実態と離れて株価が上がっていることは彼らに対する危機感ではないのです。仮にコロナワクチンができ、コロナを駆逐する方向性がつけばトランプの巻き返しもあり得るのです。

 

但し、この対立姿勢、そしてキリスト教の価値観と離れた行動は、長期的にキリスト教保守派を弱体化させ、共和党を弱体化させるリスクがあります。

コロナは貧しい人も、金持ちも人であれば平等に、同じようにかかります。ただ、コロナによる自粛、そして経済的な危機は全員が同じように被害を受けているわけではありません。何日か前に「アメリカでの暴動とコロナの関係」で書きましたが、コロナに対する政府の対策は平等ではありません。近年の経済のグローバル化と拡大は、貧富の差を世界的に拡張したと言われています。アメリカではその貧富の差が世代、人種で顕著になってきています。世界でも珍しいほど、貧富の差が低かった日本でさえ、貧富の差が広がっていると言われています。

 

そんな中最も不思議だったのが、全国民に対するお金のばらまきです。もし全国民が対象なら減税をすればいいのに。アメリカでは査定所得総額(AGI)が個人で75000ドル、世帯主で112500ドル、夫婦で15万ドルをこえているともらえません。日本の場合は一人10万出ますが、申告制になっているようです。お金持ちは申告しないということでしょうか?ただ、減税でなく現金をばらまくのは、権威者が、「お金をあげている」という、自分の評判を上げるためという要素があります。以前ブッシュ大統領が実施した時から、このお金のばらまきの効果はあまりないとされています。仮にこのブログを見ている人がもらった10万円を貯蓄に回していたら、すでにこの施策は失敗です。日本は高い貯蓄率に依存した政府の財政赤字を容認しています。コロナ経済危機はその分野、その度合いにあわせ、使われるべきです。特に今回記載する最も影響が大きいとされる産業はなんらかの支援がないと破綻していきます。

 

WITH コロナの時代の脅威

コロナ不況で配られる金額や各政府の施策は一時的な効果しかなく、ドナルドトランプのコメントにあるように今回のコロナウイルス(COVID19)の危機は一時的、短期的なことととらえているようです。トランプが記者会見で、「すぐに消える可能性がある」「二回目の波はこない」というコメントに全米伝染病アレルギー協会(NIAID)のDr.Fauciは常にそのばで反対意見を述べていました。ファウチー医師は今回アメリカで最も信頼される専門家に選ばれた人でもあり、「科学者の立場としての意見をいわなければならない」という自負のもと、活動しています。但し、政策はトランプ説に基づき決められてしまうので、それを監督するのは有権者の責任であり、アメリカでおきている人種関連のデモに関しても政治家に対する国民の怒りがその背後にあるのは容易にとって見えます。

 

日本でたまたまうまくいっているコロナの封じ込めを仮に政治家が自分のクレジットとしようとしているのであればそれは大きな間違いです。特に日本は法律、軍隊といった政治的な力を使わずに主に人々の「自主性」により自粛が成り立っているので、それは政治家の人徳というようり、むしろ国民として統一性のとれた行動がとれるという集団性能力の高さの表れであります。

では次のステップとして「消えないコロナ」「毎年のように襲ってくるコロナ」となった場合、どのように共存していくのでしょうか?特に効果的なワクチンができるまで強制的にWITH コロナの今、特に最も被害を受けす産業はどのように生き残っていけるでしょうか?

 

飲食業

アメリカでの4000万の失業者の4分の1は飲食だと言われています。飲食業はもともとターンオーバーが高く、短期的に対応できる能力はあると言われている産業です。更に飲食業は大手ではなく、小規模事業者が最も多く、その分政府に対しては弱い立場になってしまうので支援をしなければならないということは最初から言われていました。そこで小規模飲食などを意図した政府の支援があったのですが、大手企業がそれをもらっているというスキャンダルがアメリカではありました。自粛で店舗営業ができなくなった飲食業が、多忙な医療機関や役所にランチを配達するといった自主的な試みがアメリカや日本で見られましたが、そういった活動を支援するためにお金は使われるべきです。レストランから貧困者や隔離が必要なお年寄りに食事を配達するなどすれば、飲食業が長期的に座席数で制限されないTake Outのビジネスをものばすことができます。自粛で外食から遠のいていた人が店に戻りつつありますが、特に自粛期間中も顧客としっかり関係があった飲食店は比較的戻りやすいでしょう。逆にそのような強い顧客の支持を受けているかどうかが生き残りの差となり、外国人観光客とか、不特定多数の顧客に特化していた飲食は戻すのが厳しいでしょう。特に不特定多数の顧客に依存している飲食店は都心の交通量が多い場所に依存していることが多く、前回書いた働き方改革のように人々の流れが変わると今までの同じやり方に依存できないのです。

 

大規模な飲食は自粛により大幅に顧客が減ったことは非常に大きな打撃となります。というのも、店舗のキャパに限界があるので、損を取り戻すのは非常に困難、更にもともと飲食はキャッシュフローに依存しているので、大規模な投資を必要とする大手は、レバレッジ(借入)が大きく、店舗売り上げの減少はかなり厳しいものとなります。ここで日米の2社の株価を比較してみましょう。

スカイラーク(1762)株主優待がかなり良いというので有名なスカイラーク。日本は外食産業のレベルが非常に高いと思いますが、その中でもトップを行く企業です。1月の2200円から今は500円下げ1700円です。約20%の下落です。今回のコロナ問題のインパクトは20%程度と捉えるのは妥当なのでしょうか?売り上げ減、顧客減は年間でみて20%程度なのでしょうか?もっと影響は大きいような気がします。飲み屋のワタミ(7522)は1300から800まで落ち、現在は1000円強のレベルです。約23%の下落です。

 

Brinker International(EAT):比較するのに適切と思えるアメリカの会社はChiliesなどの人気レストランを経営するブリンカーInternationalか、オリーブガーデンなどを経営するDarden Restaurant(DRI)です。Brinkerは40ドルから一気に10ドルに落ち、今は24ドルレベルに落ち着いています。40%の下落です。一方Dardenは120ドルから34ドルまで落ち、70ドル程度に落ち着いています。42%の下落です。

 

アメリカの相場で外食産業は40%程度のインパクトがあると想定しているのに対し、日本の市場は20%程度とみています。倍の差があります。ChiliesやOlive Gardenは以前からTake Outに力を入れていたので、今回の自粛期間もそちらは営業を続けていました。日本の飲食はどうだったでしょうか?私はこの違いは、株式市場の違いであると思います。日本の株は上がるべき株は思ったほど上がらず、悪い株は、実態より良く評価されているような気がします。

 

飲食に関しては、地域のレストランで全国展開しようとしていたJack In The Box(Jack)や、店舗スペースが小さい中でデリバリーを中心とするDominos(DPZ)などの方が投資としてはその意義があります、投資の基本は現在<将来です。DominosはIPOから入ってますが、今回コロナ騒動の最中に最高値をつけています。30倍以上も上がるのです。そういった観点で言うとこれから伸びそう、かつ粗利率の高い会社を狙うほうが効果的です。日本では昨年NATTYSWANKYというダンダダン餃子という店を経営する会社はどうかと知人に勧めたのですが、日本人の投資家は株のリターン以上にとにかく大きな会社、そして株主優待などをベースに決めるようです。それって投資でしょうか?

 

今回のコロナは、できれば地元の小さいお店の支援をし、それらの店が地元に愛される店として残るような巻き返しがされれば良いのではないかと思います。大手と競うのは価格的にもサイズ的にもかなり厳しいのですが、消費者として飲食の店は心の安らぎの場でもあり、大手の金太郎あめのようなワンパターンの空間ではなく独自のユニークな空間を維持してもらいたいと思います。なので、組合的に店を支援する人たちを集め、もらった10万円を商品券などの購入に使い、店主と客が一緒に店を作っていくことで、継続してもらいたいと思います。

 

旅行業・観光業

今回最も影響が大きかったのが、旅行業、観光関連産業かと思います。特に日本は政府がアメリカなどで広告までだし、インバウンドの観光に力を入れてきました。観光バス、ホテル、旅館、観光地施設、これらに対する影響は非常に大きいと思います。更に、ワクチンができるまで水際対策には力をいれなければならないので、入国規制はしばらく続くことが想定されます。その国策により最も影響を受けるのが観光業です。そして今まで政府が外貨獲得として力を入れてきたのがこの産業であり、地域経済の依存度も高かったので、この産業こそ政府が支援すべきです。国民全員には10万円を配るよりむしろ、それらの観光資源を維持するために、入国規制が終わるまで使えるギフト券などを政府が発行すべきだったと思います。10万円が貯蓄に回ってしまえば意味がありませんが、クーポンであれば確実に犠牲になっている観光業にお金が落ちます。さらにそれらのギフト券を地元しか使えないようにすれば人の移動も少なく、人数や使える日程を限定させれば分散させることもできます。地元の人は地元でくつろげ、自分の県に愛着が持てるでしょう。このように何らかの需要を作り、更にその中である程度の競争がないと、必然的に観光業は競争力を失っていきます。外国からのお客さんが自動的に戻ってくるとは限らないのです。それなりに競争力を磨いておかないと、さらに将来的に設備投資などができるように体力(資金)を回しておかないと致命的なダメージになるリスクがあります。温泉旅館などは「日本にコロナが少ない理由」に書いた通りむしろ予防効果があるかもしれないのです。自粛が続いているようですが、温泉でクラスターが発生したという記録はあるのでしょうか?明らかにクラスターが発生しているホストクラブがビジネスを続けていて、私が行く予定にしていたスパ・ハワイアンズが閉まっているというのはどうも腑に落ちません。

 

航空業

今回日本に来た時にANAに乗ったのですが、ガラガラでした。全体の10~20%程度しか埋まってなく、ほぼ全員横になってねれました。これほどすいているのは見たことがありませんでした。LAX(ロサンゼルス国際空港)も成田空港もありえないほど人がおらず、とにかく驚きでした。飛行機はワクチンができるまで明らかに大きな影響があります。更に、できたとしてもビジネスの旅行者はリモートに置き換えることになれるので、出張が減り、ドル箱の高齢者は飛行機に乗るのを恐れるようになるので、需要が戻るまでしばらく時間がかかることが想定されます。現在先進国は国が多くの航空会社をサポートしています。使われていない飛行機はまとめてコストが安い砂漠の空港に止められ、フライトアテンダントも飛ぶ回数が激減しています。アメリカでは雇用を支援しているのですが、それが9月で切れるので、大規模なレイオフはまぬがれないでしょう。設備投資、そしてメンテナンスコスト、空港使用料、更にはパイロット、フライトアテンダントという高い人件費、これらをメンテするのは容易ではありません。UNITEDの社長は、生き残るのに価格を上げる以外方法はないと言っていました。今回帰国した理由の一つとして3月から飛行機を何度もキャンセルしていてエアラインクレジットがたまっており、それらが値上げによって価値が激減するのでこれ以上増やしたくないというのもあげられます(最も重要な理由は、私は今はキリスト教の牧師なので、あさって、14日に浅草北部教会でメッセージをするので、そのために帰国しています)。

 

仮に航空運賃の値上げが起きればますます観光客が減る可能性があります。中国の観光需要、そして日本の「安さ」は世界トップクラスなので、中国からの観光客はすぐに戻るかもしれませんが、欧米や中南米などからの観光客に関してはこれからの先行き明るくありません。

 

私の好きな航空会社で世界のトップ3に選ばれた全日空(ANA)の株価(9202)は過去の3500円水準から、2700円と、約23%程度の下落。同じスターアライアンスのアメリカ側のパートナーのUNITEDは80ドルから30ドル、DELTA(DAL)は60ドルから30ドル、アメリカン(AAL)は30ドルから15ドルとどれも50%以上の下落を見せています。ここでも日本の会社の株の下落率は半分以下です。クルーズに至ってはそれ以上です。

 

結論からいうとこれらの産業は公的資金を必要とするほど致命的な状況です。株価だけ見ると日本ではそれほど悪くなく見えてしまいます。これらの産業は投資よりむしろ消費者として助ける努力をすべきです。飲食に関しては、TAKE OUTを積極的に食べ、観光地はなるべく地元の観光産業を支援し、航空業に関しては価格が安いうちに許される範囲で活用すべきです。各航空会社プレミアStatusは来年まで繰り越してくれたし、今年はかなり低い基準でプレミアメンバーにもなれます。この時世、旅はタブーかもしれませんが、政府の補助が十分されてないのであれば、許される範囲で消費者が守らないとビジネスを続けていくのは困難になるでしょう。所得が減っていないのに、10万円もらった人はそのように本当に困っている産業に使ったり寄付をすればよいのではないかと思います。

コロナの影響は人々の生活を変えています。生活の変化は消費の変化でもあり、その変化を読むことが成功する投資には欠かせません。今まで書いてきたようなことをLINEで共有したのですが、私の家族などは海外のこと、ましてや専門的なことはわからないと言われたので、日本の市場も見てみました。当時はマスク不足が話題だったので、ユニ・チャーム(8113)などを調べたのですが、前回述べたような理由でやめました。同時に日本で顕著だったのが、テレワークの推奨でした。これはもう2月ぐらいにはスタートしていたし、実際アメリカではリモートワークへの移行はずいぶん前から騒がれ、ビデオカンファレンスで有名なZOOM(ZM)は昨年4月にIPOした時から話題になっていました。IPOの時から株価が数倍になったので、私は今年1月に下落するまでそのPositionは取りませんでした。1月に$73だったのが、コロナの影響で$240まで上がり、今は$200前後です。コロナによるテレワークにZoomは欠かせず、アメリカではSNL(Saturday Night Live) という長年続いているお笑い番組もZOOMでのネタがあるほどです。興味がある人は見てみてください。

 

テレワークの意義

日本の株式市場はアメリカと比べ、変動が小さく、動きも遅いといった特徴があります。それは株の持ち合いや、海外企業からの買収を防ぐための公的基金を含む固定投資があること、そして個人投資家の割合、さらには売買頻度が低いということが想定されます。特に大手企業の株式にその特徴があるのですが、小規模の会社は比較的そのような弊害は少なく、アメリカの市場に近い動きがあります。更に小規模の企業は大手と比べ一つの成功のインパクトが大きいので、日本でファンダメンタルズ投資をする人はそういった会社に特化したほうが水準より高いリターンを実現できるかもしれません。特にテレワークは仕事のやり方を変え、日本人の生活や仕事効率改善にも大いに貢献するので、これを機にホワイトカラーの仕事の仕方や生活などが改善するのではないかと期待しています。

 

日本の勘違い:意味のないオフィススペースの拡張

数年前大手商社に就職したCVSの卒業生が都心の新築ビルに招待してくれました。皇居に面しており、以前は高さ制限があり、皇居を見下ろすという昔ながらの礼儀により長年規制されていた場所です。その規制が緩和され、外堀通り沿いのビルが次々と高層化していたのです。東京のオフィススペースの供給は拡張しています。「誰をターゲットに開発?」という問いに対し「外資系企業」という答えしか来ませんでした。欧米企業はすでにかなり日本に来ており、新規増加することは想定しにくく、更にハイテクなど成長企業は巨大なスペースを必要とせず、むしろ自宅や、独自の町(キャンパス)で働くという形態に移ってきています。中国企業が事務スペースを東京に必要としている可能性はありますが、そこまで多くオフィススペースが必要なのでしょうか?あの上海タワーでさえ、空き室だらけ、更に東南アジアの全ての都市で都市開発が進み事務所スペースが増えています。そんな中、東京のオフィススペースをこれ以上拡張させることに経済的意義は感じません。都心のオフィススペースが多ければ通勤ラッシュは緩和されません。更に通勤時間は働いているわけではないので、その間の生産性はゼロです。テクノロジーは世界、働き方を進化させるのではないでしょうか?

 

サテライトオフィス、ホームオフィスの発想

アメリカのコンサル会社では20年以上前からリモートワークは始まっています。私もプロモートされたときにオフィスをもらえたのですが、ダウンタウンまでの通勤時間と駐車料金が無駄なので、ほとんど使いませんでした。会社側から「年何万ドルも払っているから…」と言われたので、「いらないからその分給料を上げてくれ!」と言ったら、当然給与は上がらずオフィスだけ没収されたことがありました。コンサルの場合はほとんどクライアントの場所で過ごすので、事務所にいること自体が「働いていない」というサインになるので、あまりオフィスにいる習慣はありませんでした。マネジャー以上はよく会議などがあったので、事務所が与えられるのですが、リモートでの参加もOKだったので、そちらを使っていました。会社側は働く効率を考え、空港、センチュリーCity、アーバインなどにサテライト事務所を開設し、そこで事務作業は十分できました。会社のカルチャーを作るネットワーキングをする際には、NBAのゲームや、バーを貸し切りにしてそこでネットワーキングをする機会を別途作ってくれていました。今思えば、非常に効率的で良かったと思います。東京事務所は、クライアントが都心に集中していること、さらにクライアントのオフィススペースに余裕がないなどの理由で自社オフィススペースを必要としていました。ただ、今回のコロナ自粛でテレワークが推奨されたことで、日本でも多くの会社の仕事のやり方が大きくかわるのではないでしょうか?ちょっと考えただけでもリモートワークには以下のメリットがあります。

1) オフィススペース削減による固定費の削減

2) 通勤費用の削減、労働時間の増加

3) ワークライフバランス:特に赤ちゃんを育てながらも働くことがえきる環境は少子化、保育園不足の対策ともなりうる。

4) 労働環境、生活環境の改善(自宅の環境が良ければ…)

5) 家族の関係強化

デロイトのサテライトオフィスのように、自宅近くの駅前などに色々な企業が共有できるシェアドオフィスや、スタバの中に小さいブースを作りそこから働けるといったようなモデルが考えられます。更に、地方の大自然に囲まれたところに住みながら、自宅にあるホームオフィスから東京の会社にリモートで働くということもありです。地方の方が住宅環境は良く、生活費も節約できます。

 

都市開発の方向性

今回のテレワークは一時的なものではなく、そのような方向に日本人の働き方をシフトしていくのではないかと期待しています。その視点に立つと、都心のオフィススペースの不動産開発などの会社の将来性は明るくありません。むしろ、安くなった駅前の空きビルを改装し、Wework(ソフトバンクは大損しましたが)のような共同スペースの開発と運営、サテライトオフィスを後押しする方が将来性があります。今年の初めに都心の開発をしている投資家の方と食事をした際に「でも東京の都心は大丈夫でしょう」という東京神話のようなことを言われたのですが、むしろ都心の巨大ビルに全ての機能が集中すること自体がリスクであり、日本に確実に起きる大地震で津波が押し寄せ地下が水浸しになったりするような状況で、都心のオフィスに大人数の人が集まっている状態は恐怖でしかありません。防災的な観点からもテレワークの推進は悪くないのです。むしろ日本の魅力、日本の将来は地方にあるのではないかと思います。

 

働き方改革の遅れ

日本の工場のプロセスは世界トップクラスですが、日本の事務処理は世界最低レベルだとも言えます。今回の給付金の処理に見られるような簡単な処理に異常に無駄な時間や作業が発生しています。そしてそのようなお役所のような事務処理が日本の会社の仕事の仕方のデフォルトになっています。この原因は変化をきらうおじさんたちが昔ながらの仕事を変えようとしないことが理由なのかもしれません。周りに人がいないと仕事をしてる気がしない人たちです。今回のコロナ自粛により政府もテレワークを後押ししており、今までの実績もあるので、一気に改善する良い機会です。

 

テクノロジーの苦手な日本企業

日本企業の特徴は一般的にITが弱いということです。日本企業が中国や北朝鮮のハッカーにやられるという話はよく聞きます。日本独自の決済システムがハッカーにやられたので、結局中国のALIPAYを活用したPAYPAYのような仕組みが大きく導入されたと聞いています。リモートワークはZOOMやクラウドを活用すれば別にいつでもだれでもできるものです。前述したとおり私の働いていたアメリカのコンサル会社ではもう90年代からリモートワークは基準になっていました。この問題は日本企業や政府がITを戦略的に重要とみなしていなかったこと、さらには独自路線で偏ったITに執着していた80年代の問題があると思います。

 

私が88年にジョージタウン大学に留学した際に外交学部でさえ、ロータス123といったスプレッドシートを活用していて、その為のクラスを受けさせられたのを覚えています。日本もNECなどを中心にITの開発では世界をリードしていましたが、ITの汎用化といった点では出遅れ、システム管理部のような役所的なIT部門を設け、ITをごく一部の人のスキルとしていたことが全体としてのITスキルを低下させ、日本が遅れを取る原因となりました。

 

テレワーク投資

テレワークは汎用のアプリを使えば随分前から実施することは可能でした。今でもそうでZoomや、クラウドを活用して普通にリモートで働けている人も少なくはないでしょう。でも日本は前述したとおり、ハッカーにやられたり、更には問題が発生した時の責任追及や社会的な批判が半端ではありません。なので、テレワークに関してもそのサービス自体を外注した方が安心と考える企業も少なくはないかと思えます。この観点から日本での株式に関し、以下の2社を勧めました。

 

ブイキューブ(3681

日本のテレワークの大手として出てきた会社です。上場した2014年ごろには2000どるほどの価値があったのですが、利益の伸び悩みなどから株価は低迷していました。明らかに今回のテレワークでチャンスだと思ったのですが、市場は反応しておらず2月ごろ、600円台だったと思います。リモートのワークスペースの開発もしているらしく、まさに上記の方向とあっています。前期は売上も利益も落ち低迷していましたが、債務はそこまで大きくなく、コロナ自粛は良いPositioningだと思いました。この短期間で1200円に上がりました。日本にしては珍しい成功例です。

 

クラウドワークス(3900

事務作業の中で仕事の打ち合わせ、外注の調整などはよくある仕事です。クラウドワークスはそれをネットワーク上でやるので、今回のコロナ自粛の状況に対応できると思いました。売り上げも伸びており、負債も低く成長をサポートする財務状況であったにもかかわらず3月の相場が落ちた際になぜかこの株価も500円前後まで落ちたので、Positionを取らせました。今では1600円を超えています。

 

株式投資は学習目的でするべきです。株価は将来の価値の判断なので、将来を読んで投資をすべきです。若い人は自分自身の将来に直接影響があるので企業の将来性を見抜くことは重要です。今優良企業と言われるGoogle, Apple, Amazonなどは以前はハイリスクの会社と言われていました。金融は安定しているなどという神話もありました。でも低金利の中金融は危機的状況で、ハイリスクのテクノロジー会社が安定企業になりました。つまり現状=将来ではないので、株式投資を通じて将来を読むトレーニングをしてほしいと思います。就活、転職などを考えている人は特にこの将来の世界を意識したキャリアプランは重要なので、株式投資は役立ちます。

民主主義国家の欠点として政治家が自分の評判を気にしすぎ、短期的に選挙権を持つ人を喜ばせる政策(政府の財政支出)を優先し、評判が悪くなる増税を避け、財政赤字を続けることがあげられます。日本も国の債権を日銀が買取り、その分流通通貨を増やし経済を活性化させようとしています。今回アメリカも、EUも、日本も先進国はコロナ問題に対して莫大な追加予算を組み市場に放出しています。被害を受けた人だけでなく、全ての人にお金を配っています。これらは天から降ってきたお金ではありません。将来の人に課した借金です。世界的な株の高騰は、お金のバラマキを含めた金融政策の一時的な流動化が起こした結果でしかありません。更に、活性化する可能性が低い(人々の潜在需要が低い)中でむりやり流通通貨を増やすとインフレが起き、通貨価値が低下するといったつけが将来に繰り越されます。ドナルドトランプのお金でも安倍さんのお金でもないのです。コロナ問題という大きな問題に便乗した莫大な金のバラマキを政治家がやっています。だからアメリカの小切手にわざわざドナルドトランプの名前を書き加えたのです。民主主義における政治家の暴走の責任は彼らを選んだ国民にあるので、将来的につけを払うときに責められるのは今の有権者たちです。市場にお金をあふれさせるこれらの政策は将来的に通貨価値が下がるといった大きなリスクがあります。通貨価値の下落は政府としては借金負担が減りますが、現金貯蓄に依存していた人は莫大な損をします。株はインフレに合わせてスライドするので、現金より安全な投資となります。将来の方が今より良い日本であってもらいたいと思いますが、そういう方向に動いていません。だからこそ、自分の力で経済面で将来の備えをする必要があります。それを実現するために投資のスキルは万人が持っているべきものだと思います。

 

3)テスト関連株

前回、1)治療、2)ワクチン、という視点で分析しました。私は再開、短期的に経済再開を可能にするのがテストであると思います。アメリカではまだMLBの再開の目途がついていません。航空業も同様で、結果的に航空券のチケット代が高騰すると言われています。仮に効果的なテストがあれば、飲食、航空、そしてMLBまでもウイルスを持った人を入れさえしなければ感染を防げるので、安心して営業を続けることができます。ワクチンが開発されるまで切り札となるのがテストです。今、Covid19の主要なテストとして実施されているのがPCR検査Polymerase chain reaction ですが、これはウイルスなどDNAを拡張させていくプロセスを経るので簡単なテストではありません。問題として、1)時間がかかりすぎる、2)正確性が100%とはいえない、3)分析にお金がかかるといった問題があります。インスタントでテストができれば良いのですが、時間がかかってしまうので、この点に関して改善されたものができるかと思ったのですが(そうにおわすことをトランプ大統領も言っていた)、意外に改善がみられていません。

 

テストの市場はワクチン以上に大きなものです。仮にワクチン開発が遅れ、さらにインスタントにテストができるということが可能であれば、イベント、飲食、航空業、エンターテイメント、など入場者にテストを課し、陰性の人だけ入れるということにすれば安全が守られます。つまり、同一の人が何度もテストを受けなければならないのでその市場はワクチン以上に巨大です。日本ではオムロン、オリンパス、シスメックス、島津製作所など強い領域です。ただ、コロナ関係ではテストだけでなく、Ventilatorでさえ、日本企業の名前が出てきませんでした(日本の医療機器メーカーのコロナに対する取り組み知っていたら教えてほしい)。この領域ではドイツ企業が強いのですが、トランプ大統領は「アメリカ」こだわりをするのでアメリカ企業をみてみました。ダウジョーンズ開始から100年近く入っている唯一の会社General Electric(GE)の衣料品部門は有名ですが、会社の規模が大きく、内部の問題が大きいので、それははずし、機械とサービスではそれぞれ以下の会社を選んでみました。

 

ABOTT Laboratories (ABT)

シカゴにある100年以上歴史のあるアボットラブは、医療機器だけでなく、Similiac, Ensureといった栄養食品も出している、医療機器ではアメリカを代表するような会社です。今回ポータブルで短期間に結果が出るというテスト機器COVID19 ID Nowという機械をあっという間に作りました。それをドナルドトランプが発表する際にまたトランプがメディアと喧嘩をしてしまい、その機械に注目が集まらなかったのですが、その機械は5~13分でテスト結果を出すという機能を持っており、精度もかなり高いということです。4月の発表からすでに250万台を出荷し、更に生産を増やしているということですが、日本ではあまり聞かないですね。株価は3月に85ドルだったのですが今は92ドルです。優良企業だし、配当も2%弱だったので、悪くないと思ったのですが、なぜか注目されていません。

 

 

 

Quest Diagnostics (DGX)

アメリカの病院で使うテストはほとんどが外注ですが、そんな中Quest Diagnosticsは大手で私も何度も血液検査などで使ったことがあります。PCR検査の問題の一つとして、サンプルを集める医師や看護婦の手間と感染リスク、そして管理の困難さがあげられています。そこでQuestは自宅でサンプルを採取し、それをQuestに送って検査をするということを提案して話題になりました。話題になっている抗体テストも提供しています。この会社も3月に85ドルぐらいだったのが今は116ドルなので上がるには上がりましたが、そこまで大きくはありません。なぜなら、Covid19によって医療機関の通常医療が激減し、そちらでのテスト数が減ったからとのこと。日本もCovid19で中心になって医療機関が動いてますが、通常医療が停滞した分つぶれそうな病院もあると聞いています。医療関係の投資にはそういった落とし穴もあります。

 

4) 医療機器及び周辺機材

A)人工呼吸器:3月にアウトブレークが起きた時にニューヨーク州のクオモ知事らを中心として話題になっていたのが人工呼吸器(ventilator)の不足です。人工呼吸器のメイカーといえばMedtronicsです。

 

Medtronics

世界最大の医療機器のメーカーで、トランプ大統領が不足する人工呼吸器の生産に自動車メーカーなどを投入した際も、この会社が指導しました。ただ、医療機器メーカーの場合はその他の病気の需要が激減したので、テスト機器同様にむしろ赤字傾向にあります。特定の医療機器だけ売れるという特殊な需要はサプライチェーンにとってはプラスではなく、むしろ一時的な需要にこたえるという大きな負担となっています。調査の時にそれがわかったので、私はIntuitive Surgical Inc.(ISRG) のようなハイテク医療機器といった成長株を選びました。Medtronicsの株価は3月の90ドルぐらいから今は100ドルなので、平均的な伸びしかみせていません。

 

B)マスク:世界的に不足したのが医療用のマスクでした。このマスクで最初から話題になっていたのが、3Mが生産するN95です。95%の細菌などをシャットダウンするpolypropylene でできており、優れた効果を出します。日本では話題になってないようですが、中国ではこのマスクをしていた子供が学校で走らされて酸欠で死んだとも言われています。マスク大国の日本は優れたマスクが多く、1月の中国人のマスク爆買いから見ていたのですが、当時は日本のユニ・チャームなども分析してみてました。ただ、マスクの場合は高価なものでもないので、そこまで利益を増やすこともできず、Porter’s 5 Forcesの代替品驚異と新規参入の存在が明らかだったので、避けることにしました。通常のマスクであれば手作りで誰でもできるので、結局この分野は話題に上るほど利益はでていませんでした。

 

3M

Minnesota Mining and Manufacturing は何といってもPostITで有名でしたが、もとは1902年に設立された炭鉱業のベンチャーカンパニーでした。信号機や建材など化学系の巨大企業で、N95マスクはその一部で、ドイツにいくはずだったマスクをアメリカ政府が強制的に抑えたので話題になっていました。あまりトランプ大統領にしたがっていないようでした。株価も3月の140ドルから現在の160とそこまで上がってはいません。過去250ドルレベルの株価だったので、話題のわりにコロナ影響はありませんでした。

C)消毒剤:マスクと共に話題になったのが消毒剤、日本でもアメリカでも爆買いから店から消えました。日本ではアルコールベースの消毒剤が主流のようですが、気化しやすいので夏場とか、火事のリスクとかどうでしょうか?アメリカではトランプ大統領が「体内に入れてウイルスを殺したら?」とバカなことを言ったので有名になった塩素系の消毒剤です。アメリカで有名なブランドではイギリスのReckitt Benckeiser Groupが19世紀のコレラアウトブレークの際に出したLysolと、漂白剤や掃除の薬品で有名なCloroxです。


Clorox(CLX)カリフォルニアのオークランドにあるこの会社は、1913年に設立されPine-Sol,Clorox といったアメリカ人であればだれでも知っているブランドを持っています。私はMBA時代に優秀なクラスメートがコンサル会社やP&Gなどを振ってこの会社にいったので、その時非常に興味を持ちました。彼はこの会社のブランドマネジメント、成長性などべた褒めしていました。なので、今回投資してみることにしたのですが、株価は3月の160ドルから現在200ドルを超えています。塩素系の消毒剤もにおいがきつく、問題がありそうなのですが、なぜ日本はアルコール、アメリカでは塩素系なのでしょうか?

D)ガウン・フェイスシールド:今回アメリカで有名になった用語としてPPEというものがあります。PPEと言えば、会計用語のProperty Plant & Equipment(固定資産) など思い浮かべてしまいますが、これは医師などがつけるPersonal Protective Equipmentの略です。伝染病を予防するのにガウンやフェイスシールド、手袋などがとても重要になります。今回のCovid19は医療関連の感染者が多いので有名です。PPEが不足しニューヨークなどで看護師たちがごみ袋を着ているのは有名になりましたが、この分野もかなり注目され、ファッションメイカーや、学生などが作成して医療機関に送っているのがニュースになっていました。今回日本に来る際に、中国人の若者乗客がみな、フェイスシールドやガウンを着て飛行機に乗っていたのが気になりました。アメリカで不足していても中国では一般人でも買えるほどあるのでしょうか?

 

LAKELAND INDUSTRIES(LAKE)

話題になっていたのがアラバマ州に本社を置くこの会社です。防護服のトップメイカーで医療防護服の主要なサプライヤーです。2~3月に不足が騒がれているときに高騰し、25ドルを超えていましたが、今では15ドルと逆に暴落しています。一時的な需要は利益には貢献しません。ラーメン屋がテレビに出て、一元さんのお客さんが増えてしまい、常連さんが消えてしまうのと同じです。

 

 

世界的なパンデミックは医療業界を多忙にしましたが、伝染病というごく一部の領域であり、医療業界も他の業界同様に苦しんでいるというのが現実です。ワクチン開発には政府の予算も大量にまわっているので株価は高騰しています。ただ、最初に述べた政府の特別予算の使い方もそうですが、政府のお金は本来本当に苦しんでいる業界、人々に特化して使われるべきだと思います。サブプライムローンの問題の時にお金をくばったことは「効果がなかった」と麻生元首相など言っているのに、なんでまた今回もするのでしょうか?昨日区役所に行った際に多数の外国人労働者が10万円をもらう手続きをしていたそうです。「日本は良い国だ!」と言っていたそうですが、日本もアメリカも私は今回の政府のお金の使い方は不自然であると思います。不自然なものはなんらかのしっぺ返しがあります。

 

さて、本日は私の誕生日でした。日本に帰国し、PCR検査を受けてから14日間の隔離をまじめにやっています。寂しい誕生日です。13日までなのであと数日間です。でも長いですね。ほかの人たちも皆さんしっかり厚生省の指導に従っているのでしょうか?従っているからきっと感染者が増えないのでしょう。日本人はまじめで従順な国民だと思う。

今回はコロナウイルス(COVID19)の問題を投資、経済の面からみてみたいと思います。

 

実態を反映していない株式相場

コロナウイルスの蔓延、それに伴う自粛、として大規模な経済の縮小が現在起きています。アメリカでは4000万人近い人が仕事を失い、その失業率は1930年代「世界恐慌」の時とほとんど同じだと言われています。でも世界恐慌の時と大きな違いがあります。今回の問題の発端は経済の構造的問題以上に伝染病の蔓延という経済外の一時的要素であるからです。そこで不思議な現象が起きています。3月末に暴落した株式の相場がその前の水準にほぼ戻ろうとしています。株式の価値というのは将来の価値を反映しています。現在<将来の構図にある会社の株が上がるのです。ほぼコロナ前の水準まで戻りつつある株価は実態を反映しているのでしょうか?それともこれはバブルで「暴落の第二波」が近い将来来るのでしょうか?

 

経済危機の中、米国株式相場だけなぜ戻ったのか?

まだワクチンはできていないし、経済活動はもとに戻っておらず、一時的だと期待していた病気も意外に長引く雰囲気です。自粛によるビジネスの停止は堪えられたとして1か月。最も影響が大きい産業の一つである、航空業もアメリカ政府の250億ドルの支援をしています。$2兆ドルという桁違いの政府支出、そしてゼロ金利、市場に一気にお金を注入することで急激な経済の崩壊を食い止めようとしています。この一時的な施策が株式相場を上げていますが、これは実態の経済状況を反映しておらず、物価が上がり、現金価値が下がるリスクもあります。パウエルFED議長は、「我々が持っている業はまだまだある」といっていますが、金融的な施策は経済の潤滑油でしかないので、失業率といった経済の実態を表す指標が急速な改善を見せなければ実態としての経済の復活はないので、それをコロナウイルスのリスクがまだある状態で実施するのは困難です。航空業など政府支援はもうすぐ切れるので大きなリストラ、航空運賃の値上げなど色々な今後の問題が想定できます。

 

株式投資はどんな状況でも勝算がある

資本主義は資本家が得をする仕組みです。私が学生にも言っているのですが、これからの時代生き残るのには自分自身の資本家としての能力を高めなければならない。雇用は状況が悪くなればNegativeな要素しかありませんが、投資は相場が暴落する際にもオプションやショートで利益を出せます。つまり、キャピタリズムは資本家でなければそのゲームに参加できないのです。そのためにできるのが株式投資です。株式投資はギャンブル的な要素はありますが、博打ではなく、投資として行えばかなり多くのことを学べます。更に将来的に給与所得が上がらなくなる状況で唯一投資が受動的な形で多くのリターンを上げる方法になります。受動的というのは時間投資的に働かなくてもいいということで(英語のPassive Income=副収入)からそういう言い方をしましたが、投資的にはどこかの株を塩漬けにして放置するのではなく、変動があるビジネスでは常に状況にあわせて売ったり買ったりする必要があります。100年以上つづいている会社はほとんどないし、ビジネスというのは動きが速いので、常に先を読み投資先の将来価値を読み売買しなければなりません。私が勧めるファンダメンタルズ分析手法による投資が一番勉強になり、それにあわせて売ったり買ったりすることが結果としてリターンを高めます。特に今回のように恣意的に株式相場があげられている場合はINDEXファンドのような部分に投資するのではなく、産業や個別の会社に特化して将来を読むことが大切です。現時点で私はエネルギー産業の復活に関する分析をしていますが、今回は1月、2月に戻りコロナウイルスのアウトブレークの時の投資分析を紹介したいと思います。

 

コロナウイルス関連株

WHOが発表した段階でコロナウイルスの世界的な広がりは明らかでした。1月下旬、2月上旬頃です。この状況は治療薬、ワクチン、テスト、医療器具といった直接的なものと、飲食業、旅行、テレワークなど間接的なものがあります。つまり人々の生活に変化があるので、それを想定します。変化に合わせた投資です。ダイアモンドプリンセスの問題があったので、日本人はかなり早くからこの部分の想定ができたのではないでしょうか?私は当時以下の会社などを家族のラインなどで紹介したのですが、私の家族は株式投資に興味がないので、誰も反応してくれませんでした。なので、今後はブログでリサーチ結果を紹介しようかと思います。今回は治療薬とワクチンのみ取り上げてみたいと思います。

 

治療薬:コロナウイルスが歴史的にユニークな部分としてネットの進化によりかなり多くの医学的な情報がネット経由ではいってきました。製薬会社は一番ファンダメンタルズ指標が役に立たない難しい業界です。ゲーム産業のようにあたるかあたらないかで状況が一転します。ゲーム業界もベンチャー会社に開発をさせ、うまくいったら背後にある大手が吸い上げるという特徴があります。なので、専門家の意見のほうがファンダメンタルズより役に立ちます。過去Boston Scientificに投資して成功した際も医者たちの評判だけに依存したので、今回もそうしました。私がカリフォルニアに住んでいるからかもしれませんが、最初に評判になったのが、Gilead Science(GILD)というカリフォルニアの会社です。ハーバードMBAを持つ医者によりスタートしたベンチャー会社でしたが、DNA解析、そしてウイルスに特化し、タミフルを開発しRocheにライセンス化するといったかなりの実績がある会社です。この会社は治療薬開発としてかなり初期から話題になっていました。安倍首相が日本のアビガンと言っていたのでいろいろ調べたのですが、アメリカでは圧倒的にGileadのRemdesivirの評判の方が高かったです。当時65ドル、現在75ドルとあまり上がっていませんが、治療薬という観点はこの会社に注目するのは間違いないでしょう。

 

ワクチン:治療薬のメーカーがそこまで多くのリターンがないというのは治療薬は1)全員を巻き込むほど市場は大きくない、2)治療は医師の責任であり、患者の状況で全員が使うわけではない、そして3)ウイルス感染の基本は免疫力の回復にある。ので絶対的なものではない。Gileadの株価がそこまで上がらないのにはそのような背景があります。通常の製薬会社のおかれた状況と同じです。ワクチンは今回コロナに打ち勝つ一番の切り札であり、さらにこれは世界の全人口が対象となる巨大な市場があります。切り札を握るワクチンは最初から注目されており、世界中の大学、研究機関、そして医薬会社が開発を進める中複数のワクチンが市場に出る可能性がありますが、認可のプロセス、市場の影響力、そしてグローバルへのネットワークを考えるとアメリカの会社が利益を得る可能性が高いでしょう。更にファイザー、JNJ、アストラゼネカなどの大手製薬はワクチン専門の会社や大学研究機関とコラボして開発を進めています。ゴールは年内、来年の頭ぐらいの第二波に間に合うように…小さい会社の方が変動が高く、大手はすでにもっているので、専門会社に目をつけてみました。当時リサーチしていると以下の3社がワクチンとして出てきました。コロナ問題を克服するカギを握る会社で、恐らくワクチンができてもそれで金儲けしようというモチベーションではなく、世の中を救うというモチベーションで人々は動いているし、株価も相対的に、それを応援しようという気持ちで投資をしてみました。

 

Moderna(MRNA):コロナウイルスのワクチンはメッセンジャーRNAからのワクチン開発となりますが、この分野で実績が最もあり、市場で力があるのがModernaという2018年末にIPOしたマサチューセッツのバイオテック会社です。2月に20ドル弱だったのが5月には一時期80ドルを超えました。

Inovio Pharmaceutical(INO):免疫療法に特化し、抗癌治療薬、ワクチンなどに特化していたこの会社はかなり早い段階でワクチン着手に関与した会社で1月ごろからテレビにも出て話題になっていました。ただ、ファンダメンタルズを見る限り、売り上げは落ち込み、毎年毎年の赤字で危機的な状況を感じました。その分ワクチン開発に力を入れているのか3ドルぐらいだったのが、一気に18ドルまで上がりました。短期間で6倍近く上がったので、債務超過目前の危機的な状況でもあるので、これからの投資としてはどうかと思う。

Novavax(NVAX):トランプ政権のあげるトップ5のワクチン会社には入っていませんでしたが、注目を浴びているのがこのメリーランドの会社です。今回のパンデミックをしっかり予言したビルゲイツの団体、Bill and Melinda Gates Foundationとの関係も深く、実はワクチン開発で最も早いのではないかとも言われています。2月に8ドルぐらいだったのが、今は46ドル。短期間で5倍と上がっていますが、この会社は注目だと思います。

Biocryst Pharmaceutical (BCRX): ノースカロライナのこの会社はH1N1新型インフルエンザの際に活躍したPeramivirを持ち、何回か前のブログで紹介したMEDCRAMの学習コンテンツにあったウイルスの増加を防ぐ酵素の分野で力を持った会社です。3ドル以下に落ちていた株価も一時6ドルを超えました。

 

こうしてみると投資の世界では治療薬よりワクチンに注目が集まっています。ワクチンがコロナ問題解決の答えなのです。それはほぼ常識ですが、トランプ大統領が太陽、そしてアルコール消毒のコロナウイルスの効果を発表した際に、予防の観点でのコメントをするのが妥当なのに、それを体に入れて治療しろということを言ったのは驚きでした。そこまで知性に欠けているとは…。次回はテスト、医療器具、そしてコロナ影響が大きい産業を見てみたいと思います。

アメリカ全都市での暴動、そして人々が店などを襲い収集がつかなくなっている状況は何とも驚くばかりです。1992年に黒人のロドニーキングが警察に激しく打たれたビデオが公開され警察官が無罪になったことから発展したLAライオット。その時でさえ、襲われなかったサンタモニカやビバリーヒルズまで被害になっています。私は長年サンタモニカに住んでいたので、よく散歩していた辺りが荒らされているのを見るのはかなりショックです。さらにそれらが全米各都市で起きているとは何とも嘆かわしい限りです。平和なデモが暴徒と化してしまう。極左や人種差別主義の極右のグループなどが組織的に暴動を起こさせているとも言われていますが、ビデオを分析する限りそういった組織的な働きかけがあったにせよ、人々が暴徒になり店を襲っています。人々が狂っているのです。これは今回のコロナウイルスと何らかの関係はあるのでしょうか?

 

アメリカにおける人種問題

アメリカにおける人種問題はアメリカの根底にある社会問題です。ミネアポリスで起きた黒人George Floyd氏を拘束する際に警察が首に膝で押さえつけたことで殺してしまった事件が今回の暴動の発端です。そんな1都市での問題がアメリカ全国の暴動に広がってしまうのにはどんな理由があるのでしょう?最近では2月にジョージアでジョギング中の黒人男性が自衛のためパトロールしていた白人親子に銃殺された問題がありました。2014年にはかなり大規模なデモが起きたミズーリ州ファーガソンで起きた黒人少年のマイケル・ブラウンを警察が殺してしまった事件など全米で各地で今回と同様の問題が何度となく繰り返されているのです。そして、毎回明確な解決がないまま警察側が保護されているので人種問題のフラストレーションが蓄積していたのです。ただ、私はこれらが全て警察や白人に人種差別主義があるからだとは思えません。アメリカでは拳銃をもっている人が多いので、警察はやたら恐れています(実際よく殺されるので)その「恐怖」が警察側の過剰なリアクションを生みます。以前警察に追われ自動車を停めなかったアジア系の若者が全身ハチの巣のように銃弾を浴びて射殺されたことがあります。アメリカの警察は本当に怖いのです。そして統計的に黒人の犯罪率が高く、結果として警察は黒人に対し取扱いが変わってきます。私の友人も黒人ですが、彼はMBAを持ったエリートなのに「今まで何度となく警察に自動車を止められたり、いやな思いをさせられたことがある」と言っています。なので、人種差別というより、統計的、社会的にそういった問題が起きやすい背景があります。

 

黒人の犯罪率が高いというのは、人種間の貧富の差にも影響しています。貧困者の中に黒人の率は相対的に高く、それが教育の格差を生み、さらには所得の差を生み出します。貧困が貧困を呼ぶ、これは奴隷制、さらにはキング牧師以前の人種隔離など歴史的なルーツがあります。ここまで問題が大きくなるのには、こういったアメリカ社会の構造的な問題があり、簡単に解決できないということを理解しなければなりません。

 

こういった長年あるアメリカの問題がなぜ今回はこれほどまで大きな問題に発展したのでしょうか?全ての物事はタイミングが影響します。今回もコロナ感染症の影響が間接的にこの全米規模の問題に拍車をかけた要因があると思います。その理由をまとめてみました。

 

1) マイノリティーに偏った失業率の増加:アメリカでは世界恐慌以来の莫大な失業が報告されたいます。レストラン、シアター、イベントといったサービス業を中心とした職業が最もコロナ自粛の直接的影響を受けたのですが、それらの職業に従事している人にヒスパニック、黒人といったマイノリティーが多くいます。あるデータでは白人と比べ黒人は20%程度多く影響を受けたと言っています。私が住むロサンゼルスでではヒスパニックが一番多く、次に黒人でした。失業者の多くは都市部で生活しています。更にマイノリティー(特に黒人ヒスパニック)の方がコロナでの死亡率も高いと言われています。ビジネス再開の流れの中、置いていかれている人々の多くがマイノリティーであり、アメリカ政府による巨額の緊急財政支出の恩恵もあまり受けていません。フラストレーションを抱えたマイノリティーが全米各都市にあふれた状況下で今回の暴動に火がついたと言えます。

 

2) 市中犯罪者人口の増加:今回のコロナウイルスの問題を受けて各都市は刑務所内での感染増加を恐れ窃盗などの犯罪者を釈放しました。3月だけでロサンゼルスで3500人もの囚人が釈放されました。主に窃盗、暴行など軽犯罪で捕らえられた人たちでそのほとんどは市内の自分の場所に戻っています。窃盗などの軽犯罪者の特徴は比較的罪悪感が低く、過去やったことがある人は「チャンス」とばかり気軽に破壊と盗難をします。そしてその簡単にやってしまうことが周りの人を巻き込み暴徒として集団で窃盗を起こします。

 

3) Stay Home と家庭での悪影響:Stay Home で家にいることは全ての人にとって幸せなことではありません。アメリカでは家庭内暴力の増加、中には殺人事件まで起きています。全ての人にとって家庭が「良い場所」ではないのです。CVSで以前一緒に活動していた団体は、問題のある家庭から青少年を引き離し悪い影響を受けない活動をしていました。悪い影響のある家庭環境から引き離すことが一番の非行防止だったのです。ところがコロナ自粛期間はそのような活動もできません。犯罪者の子供は犯罪者になる可能性が高いと言われますが、Stay Homeの中悪影響を受けている若者も少ないわけではありません。今回暴動で店を襲っていた人たちも、家族、兄弟、友人単位で動いていた可能性が低くありません。つまりStay Homeによりウイルスの蔓延は防げたとしても、悪影響の蔓延も同時に起きる可能性があります。

 

4) 隔離によるコミュニティー意識の低下:Social Distancingは一緒に隔離されている家族と周りのコミュニティーとの間の距離を開けることです。感染症のリスクは減りますが、その分心理的なつながりが減ります。アメリカにおいてコミュニティー意識はとても重要で、そこで助け合い、思いやりという機能が果たせています。そして多民族のアメリカをコミュニティーとしてまとめるのに教会などが中心となっています。その教育で倫理教育をし、人々の行動の方向付けがされます。コロナ自粛では教会での集いも制限されます。各教会はウェブなどで礼拝を続けていますが、ネットでのコミュニケーションはそれほど各個人にインパクトがありません。なので、コミュニティー意識も薄まります。私は黒人教会のメンバーですが、今回の暴動を見ていて「もし教会のメンバーがこのような活動に参加していたらどうしよう?」と心配になりました。

 

5) テクノロジーによる人々の分断:私はいち早く、Zoomビデオ、日本ではブイキューブやクラウドワークスの株を買い、今回の伝染病はリモートワーク、リモートコミュニケーションを助長するといってそれはどんぴしゃで当たりました。職場から、学校から、音楽までリモートコミュニケーションで成り立っています。テクノロジーを活用させるには人々の使い方に対する行動のCHANGEが必要で(Change Managementという)今回は自粛のおかげでその変化が強制的に実施され、リモートワーク、リモートラーニングなどが一気に普及しました。ただテクノロジーには問題もあります。まず情報という点で人々は情報の選択ができます。テレビを含め情報収集において人々は自分の興味の範囲で情報を集め、同じ考えを持った人たちだけのつながりを持ちます。なぜトランプが大統領になったかで書きましたが、人々は自分の興味や思想にあわせて分断され、それが助長されます。次にあるのが人と人とのつながりの希薄化です。アメリカでリモートにいち早くスイッチしたのは大学です。歴史的に大学はいろいろな人種が集まり、多様な考え方、価値観を知る貴重な機会です。前述した人種の格差などを埋めるのに一番効果があったのが大学です。オンラインでそこまでのつながり、コミュニティー意識を高めるのは困難です。Zoomのカメラ経由ではリアルに隣にそのような人がいて人間関係を構築するということはかなり困難です。Social Distanceは人々の心のDistanceを広げてしまうので、暴動による加害者と被害者は戦争の時のように敵と味方になり、相手に対する思いやりの心が生まれないまま対立構造を悪化させます。そんな分断社会の象徴的な人間がトランプ大統領なので、今回の問題は簡単には解決できないということが想定できます。

 

6) 暇な人の増加:自粛ムードで家から動いておらず、失業しても再就職先の可能性も低く、さらには野球、バスケなどスポーツも見ることもすることもままならず、そんな中でメディアが何度も何度もフロイド氏が警察に殺されるビデオを流していれば、必然的に町のデモに繰り出すマイノリティーが増えます。昔あったコンピューターゲームのSimCityでは市民のエンターテイメントが少ないと暴動が発生する仕組みになっていました。実際の世の中はそこまでシンプルではありませんが、多少自粛による時間のもてあましも影響を与えている可能性があります。デモンストレーションを見物気分、あるいはどさこさでの窃盗狙いで、町に繰り出している暇な人も増えています。だからこそ、あれだけの規模の人々が暴徒と化しているのです。

 

7) 警察の無力化:警察にコロナの被害者が多いと言われ、それに対する注意、Distanceの取り方をがっつり教育していた中、迫りくる暴徒たちは迫りくる病原菌であるとも言えます。更に、体にカメラをつけられ、警察によるバイオレンスに対する反対運動の中、それらの暴徒を力で、さらに暴徒に接近して行動することに躊躇することは容易に想像できます。警察は人々が「敵」とみなしている分、制圧に対して武力を行使するのは困難です。人々に対して全く違う「顔」で鎮圧にあたらないと、警察は非常に複雑な状況にあると思います。LAライオットも州兵が出て初めて制圧されましたが、各州の知事は警察ではない別な顔で鎮圧に励むべきであったと思います。複雑な問題である分、トランプが軍を出すと言っているので、人々ともともと距離のある国軍を出してもらい民衆に過激な暴行をしたとしてもそれは軍隊がやったと逃げるのも手です。とにかく警察の評判が落ちている中、警察を制圧に出すのは逆効果です。

 

8) マスクの覆面効果:日本人はマスクに抵抗がなく、多くの人がマスクをして外出します。アメリカではマスク着用を義務付けてもそこまでマスク着用は広まっていませんでした。ただ、今回の暴徒化していた人々はほとんどマスクをしています。暴徒は人々がカメラで撮影をしたのを知っています。そしてLAライオットの際に映像で後日多くの人々が検挙されたのも見てきています。なので大きなマスクをしていることは覆面替わりになり、さらに人に見られていない、自分が誰だか知られていないという状況は悪さをする挑発にもなります。コロナによるマスクが病気の予防ではなく、覆面となり、病気を拡散するのを防ぐのではなく、犯罪を広めるのに貢献してしまっています。このようなマスクの使い方をしているようであれば、マスクをとってしまったほうが効果的です。見えない敵と戦う警察にとって覆面集団は恐怖でしかなかったと思います。意外に銃撃が少なかったのは関心です。ただその分歯止めがきかなくなっているので、次には覆面をした自衛団ができ、店の主人などが店を守るために発砲するということが想定されます。

 

中国で生まれたウイルス、これがまたアメリカの脆弱な部分を露呈しました。もし中国がアメリカと争うのであれば、今回のコロナ、そして人種問題がアメリカの弱点であることを理解したはずです。ベトナム戦争でベトナムが最終的に勝利をした時もその原因はアメリカ国内の分裂、人々の反対運動があったというのを思い出せばよいだけです。つまり、アメリカの人々の心さえつかめば、国としてのアメリカ、ドナルドトランプはそれほど怖くないのです。

アメリカはブルボン王朝のようなものです。アメリカのビジネス、大きな経済を握っているのは白人の金持ちグループです。私の黒人の友人も言ってました。「君も僕もこの会社では絶対ある程度までしか上がれない、本当に支配しているのは彼らだから」。ドナルドトランプはそんな白人の資本家の象徴でもあり、彼はAmerica Loves Black People!というバカなコメントを言うように黒人を自分の一部と認めていません。更にシャーロッツビルでの白人至上主義者と民衆の衝突の際も白人至上主義のグループに同意するようなことも言っていました。黒人やマイノリティーは都市部に多く偏っています。ドナルドトランプの支持層であるアメリカの地方は白人が多く、今回の暴動を見てそんな白人はより黒人との溝を深めることが想像されます。オバマでも埋めることができなかったこの格差をトランプが埋めることは不可能であり、彼はもともとそこには興味を持っていない。だから、武力で制圧という天安門的な発想しかないのです。

 

今のアメリカはそんな危機的な状況であり、人々の心が理解できないまま自画自賛する姿はフランス革命前のブルボン王朝、マリーアントワネットのようなものです。ドナルドトランプは追い詰められた状況です。アメリカはそんな方向に行ってはだめなのです。バイデンになったとしても、この溝を埋めることは難しいでしょう。オバマ大統領に戻ってきてもらいたい…ミシェル・オバマを大統領に!

WHOのテドロス事務局長がトランプ大統領に対して「コロナを政治利用するな」と言ってトランプ大統領のWHOに対する責任の押し付けに反論していました。世界最大の被害者を出したアメリカにとって、その責任はトランプ大統領の判断であるということは日々アメリカの主要Mediaで取り上げられています。そしてその愚かなコメントで益々リーダーとしての不適切さを露呈しています。

 

前大統領のバラク・オバマに比べ、人間としての人格的魅力に欠けるドナルド・トランプは、敵をつくり相手を批判することで大統領を勝ち取った分断戦略の達人です。相手を悪く見せることで自分が良く見えるので自分の問題からは目をさらさせることができます。時には嘘をいったり、意味のない言いがかりをつけて相手を批判し、相手をDefensiveな状況に追い詰めることで自分に対する批判をこなします。卑劣なやり方ではありますが、ビジネスの政治の中では良く見る手段です。当事者になってしまうと批判される側になるのでこれがやや難しくなります。そこで最近のトランプの施策の中で戦略的に動いているのが、中国への対抗であり今回のサミットの延長と韓国、インド、ロシア、オーストラリアを招待するというのは賢いコロナウイルスの政治的利用であり、中国に対するけん制がうまくワークすれば、外交的にはアメリカにとってプラスの成果ともなります。

 

コロナウイルスの政治利用

アメリカの政治がわかりやすいのは、政治家は自分の再選のことが最優先であり、再選させるためのシナリオ(これは明らかに経済的な成功)に政策を乗せていきます。トランプ大統領が当初からコロナウイルスに目を向けなかったのは自分が「売り」にしている経済に対する自然脅威である伝染病に目を向けたくなかったからです。蔓延している現状でさえ、早く再建したいと強調しているのが経済です。その結果として、アメリカは規制を緩和し、多少人が死んでかまわない。むしろ経済活動を再開することの方が重要だという方向性をその空気に感じます。コロナウイルスは経済的なプラスな要因はなく、躍進していたアメリカ経済を減速させるような要因でしかありません。再選にとってプラスではないのです。ブッシュシニアが湾岸戦争で勝利し、支持率が高かったにもかかわらず経済の停滞で再選がなかったように、この危機をとりあえず乗り越えても経済的な成功がなければ再選の可能性が低いことはトランプ大統領はよくわかっています。市場に大量に資金を放出し、とりあえず人工的に株式市場だけは取り戻しました。ただ、雇用を回復させ民間人が経済の回復を感じるには時間がかかります。11月に大統領選を控えるトランプ大統領にとって時間がありません。そこで出てきたのが中国バッシングです。とりあえず今までの政策と一環しており、さらに責任を押し付ける先として中国を敵にするのは巧みな逃げ道です。中国で発生したコロナウイルス、そして香港での問題など、各国にとって中国の脅威が明らかになった今はタイミングにしても効果的です。

 

中国の成功と失敗

中国は自由貿易の傘下、巧みにお金を使いその勢力を増してきていました。そしてドル体制、アメリカ主体の世界経済に対抗する新たな巨大な中国の経済体制を築く方向で効果的に動いていました。自由貿易の中で信用を上げたのでその政治体制さえ評価をされつつありました。賄賂を巧みに使い、発展途上国にも巧みに食い込んでいました。武漢でのCOVID19の蔓延も政治的な力を使い封じ込めに成功したと言えます。その結果として最初の伝染病の国であったにもかかわらず昨日記載した通りアメリカより遥かに低い致死率で抑え込むことに成功しました。ただ警告を発した武漢の医師を抑圧したり、テドロス事務局長に圧力をかけ中国を悪く見せないようにしたり、初期段階で情報を隠蔽したり、報道官がアメリカの軍隊がウイルスをまいたなどと自分たちを肯定する姿は、むしろ外国からは悪い印象を持たれ、さらに香港に対してこの時期に強硬に出るのはあまり効果的な政策ではないでしょう。中国は長年外国との交流がなかったせいか、外交に関しては未熟であると言えます。中国のテレビアナウンサーが外国に対してあやまるというようなコメントを載せたら中国内で批判にあい消さざるを得なかったと言われています。ただ、そのアナウンサーが言ったように、コロナ蔓延で海外に対してもう少し腰を低くし謙虚に働きかけていれば印象はここまで悪化していなかったのに。トランプの挑発に乗ってしまうあたりが、外交面における未熟さが出ていると思います。中国共産党は、自分たちに対する批判を恐れすぎで、評判を気にしすぎであるような気がします。現代政治の特徴はどんな政権であれ、どんな人格であれ、人々が経済的にうまくいっている間は政権が維持されるのです。なので、中国共産党にとって力やプライド以上に、経済的に中国をより豊かにするといったことを優先することが最終的に安定した政治をもたらすのです。文化大革命のように極端に人々の考えや思想を恐れること自体意味がないことです。香港や中国の中の自由な思想を封じ込めることに限界があることをそろそろ認識しないと、グローバル経済から締め出されるリスクがあります。

 

日本の立場

安倍政権はおじいさんの岸首相以来の日米安保体制を基軸とした基本外交方針を持っていますが、その一方で日本経済は中国経済に対する依存を高めつつあります。それはサプライチェーンだけでなく、金融、需要(特に旅行など)でも偏って依存していました。だから国賓として習近平を招待するのです。日本はイデオロギーに対するこだわりが低い分、国際情勢の中でうまく海外展開をし、グローバル経済の恩恵を受けています。世界最大の需要市場アメリカと、世界最大の供給拠点中国の間にはいり、うまく利益のおこぼれを頂戴してきました。なので米中問題も大きくならずに速やかに元に戻るのがベストです。ただ、アメリカの国民感情、そしてトランプの再選にむけた方向性を考えると対中国の厳しい政策を打ってくることが想定されます。なので、延期されたサミットに韓国やロシア、インドなど主要経済全て招待してコロナではなく、中国を封じ込めようという動きには一目おかなければなりません。

 

現状では米中の対立は日本にメリットがあるものではありません。但し、その方向性を意識すればこれをチャンスに変えることもできます。例えば、コロナ不況の中、中国から日本に生産機能を戻し、対米のサプライチェーンを伸ばすことは可能です。日本は結局製造業にしか強みがないので、それは妥当なことなのかもしれません。金融でもドルベースのアメリカ決済に対抗する中国のアリババが管理するAlipayや、その他の決済システムを展開することも可能です。こういったエリアではソフトバンクの孫さんに丸投げでしたがpaypayはAlipayだし、むしろ日本の金融機関などが強い円をベースに新たなイニシアチブをとることもできます。日本は中国との関係も悪くはないので、資金やノウハウなどもうまい形で日本ベースにもってくることができるのではないでしょうか。

 

アメリカは大きな問題をかかえていて、人工的に景気後退を食い止めていますが、政府の莫大なマネーサプライは新たなバブル、新たな爆弾の種をまく可能性もあります。長いロックダウンと高い失業率の中殺気立っているアメリカ人。それは今回の暴動にも表れていて、内政の不安定な状況はよりトランプの再選を難しくするでしょう。そんな中でアメリカの中国批判がアジア系に対する差別をエスカレートさせないでほしいと願っています。私の子供は学校で「コロナウイルス」と言われいじめをうけました。アメリカ人の多くにとって中国人も日本人も同じだと思っています。そしてアメリカは人種間の溝が深まってきています。日本人が思うほどトランプ大統領もアメリカ国民も日本に対して大きな関心を払っているわけではありません。今後ともアジア人に対する差別などを避けるため、そして世界の健全な経済を維持するためにも中国にはもう少し外交、報道に関して賢くなってもらいたいと思います。

 

サプライチェーンを中心に中国を枠組みに入れたグローバルの経済の形はできてしまっています。米中の対決は上記のように本質的なものではなく、表面的、政治的、国のプライドのぶつかりあいです。外交的に日本が中国とアメリカの良い橋渡しができるだけの力を安倍首相が持っていれば日本も初めて政治において国際社会に存在感を示すことができるでしょう。

コロナウイルス(COVID19)による全世界の死亡者は37万人に近づいてきています(5月30日現在)。ケースは更に多くJohns Hopkins大学の統計では600万近いケースが記録されてます。ただケース数はテストが少ないとあてにならないので死亡者数を比較するとその国別の深刻さが明らかになります。

 

アメリカのコロナによる死亡者は10万3千人、それに対して日本は886人と人口で割るとアメリカは0.0316%、日本は0.0007%と遥かに低くなっています。イタリアやスペインなど欧州が大きな被害を受けましたが、それは0.055%を上回っており、アメリカよりも大きな被害を受けていることがわかります。アメリカと日本はほぼ同じ時期に最初の患者が出ており、共に欧州との交流が大きかったこともあり、アメリカと日本でここまで違うのには何があるのでしょうか?安倍首相があるように本当に「日本独自の施策」で封じ込めに成功しているのでしょうか?

 

ただ、中国、韓国、台湾など他の東アジアの国と比較すると日本のデータはそこまで自慢できたものではありません。韓国は0.0005%、中国は0.0003%、台湾に至っては0.000003とどこも日本より少なくなっています。なので、東アジア全体に何か理由があり、その理由にワクチンができるまでCovid19から死に至らないように予防する何らかのヒントがあるのではないでしょうか?ちなみに人種的にアジア人はかかりにくいというようなことを言う人も言いますが、アメリカで出ているデータを見る限り人種的なものとしては黒人のように突出したものは見えません。

 

ここに7の理由をあげます。医学的には私はMEDCRAMという医者の勉強用のYOUTUBEにはまっていて、特にCOVID19のものは全て見ました。それを参考にしました。

 

1) お風呂好きであること

MEDCRAMでは当初1918~20年に世界で1700~5000万人も命を奪ったスペイン風邪と比較し薬がない中での治療方法を紹介していました。当時注目されたのがHydrotherapyと言って温泉のようなところに入ったりすることで病気を治すという治療方法です。これは薬ではないので、体内の免疫機能と関係があるようです。ワクチンがない状態で唯一できる対策が免疫機能であり、特に悪化させない時に重要になります。免疫力が低くなるお年寄りや他に病気をもっている人の致死率が高いことからもそれが言えます。MEDCRAMがあげた医学データではコロナウイルスが初期段階で免疫機能を低下させる特徴があり、無症状の間にウイルスが体内で増加してしまうのです。特にそれはMonocytes とinterferon の低下に伴う免疫低下があり、それを高めるためには熱を人工的に上げる必要があるとのことです。実験によると温かい温度と低い温度を繰り返すことで免疫力をあげるとのことで、それがHydrotherapyの効果と共通しています。Medcramではフィンランドのサウナなどの紹介をしていて、北欧で死亡者が少ないのではというようなことを言っていました。この温泉療法は日本の温泉やお風呂の習慣と共通しています。日本だけでなく、韓国、中国、台湾なども似たような習慣があるので東アジア全体で感染が低い理由ではないでしょうか?予防のためにも温泉に行くのは悪くないのです。コロナ騒動で観光客が減ってしまった温泉などはむしろ温泉での免疫効果を宣伝して業務を維持することができるのではないでしょうか?

 

2) 魚をよく食べること(亜鉛、ビタミンDの関係)

Covid19は太陽が発する光のような形をしているのでコロナと名前がつきました。その太陽の光のような触手が肺胞などの呼吸器細胞にとりつき、RNAを出し複製を作ります。一つのウイルスが何百ものウイルスを作り、逆に人間は肺炎などを起こします。つまりこの増殖をいかに防ぐか、いかに遅らせるかが病気との闘いになるのです。RNAの活動を遅くさせるのにZINCは不可欠で、いかにしてZINCを細胞の中に送り込みRNAの複製を防ぐかがポイントになります。ZINCはただ食べても無理なのですが、何らかの形でZINCが細胞に入れればかなりの抑制効果があるかとのことです。

ビタミンDに関してはイタリアやスペインでの死亡者の分析や、黒人に多く見られるビタミンD不足と黒人の死亡者が多いことの関連性などから言われています。ビタミンDは細菌抗体のペプチド構成、炎症を抑える働きに欠かせないそうです。

亜鉛とビタミンDは魚の良い栄養素として有名です。特にイワシなどの小魚を東アジアの人種(中国、韓国、日本など)は好んで食べるので、それらが遺伝的な要素もあり、何らかの形で東アジアの人種が比較的コロナに強い体質を作っているのかもしれません。

 

3) Bodyタッチを好まないこと

欧米社会ではキスをしたり、ハグをしたり、握手をしたり、挨拶などに体と体が触れ合うのが普通です。一方、アジアの文化はおじぎであり、体は満員電車以外ではそこまで触れ合うことはありません。日本の場合は経済自粛をすると満員電車が一気に減ります。アメリカの場合、私の近所でもあいかわらずハグをしたり、握手をしたり、人々の行動はかわりません。挨拶の仕方など長年の文化的な習慣を変えるのは簡単ではありません。アメリカではPARTYがクラスターになったというケースの話をよく聞きます。それはアメリカでのParty=ハグ、キス、握手など他人とのフィジカルな接点であるからで、それらが欧米や南米でのウイルスの拡散を助長していることは間違いないと思います。

 

4) マスク文化の徹底

以前、私が外国の学生を日本に連れていくとよく「なぜみんなマスクをしているんだ?」とよく聞かれました。この感染症が始まる前から東アジアの人々はマスクをする習慣ができていました。今回日本に戻って驚いたのですが、中国の人の多くはマスクだけでなくFace Shield、ハズマットスーツのようなものまで来てる人が多く見えました。東アジアの人にとってマスク着用を義務付けることに対する抵抗はそこまでありません。アメリカでは状況がかなり悪く大統領の側近まで陽性者がでているのにトランプ大統領はマスクを拒否し続け、コロナ問題の責任者であるペンス大統領も病院訪問をマスクなしでやり問題になっています。それを受けてか町中にマスクをしないことを「自由を守る」というわけわからない理由で拒絶する人が多くいます。CDCでも当初はマスクは予防には役立たないと言っていました。確かにウイルスは小さくマスクで完全に防ぐのは困難ですが、ウイルスは唾液などとともに飛散するので、それらを多少なりとも防いでいる効果はあると思います。日本ではマスクをつけることがかなり徹底していて、まだマスクをしていない人にあっていません。そんなマスクが嫌いなアメリカ人が今、暴動を起こし、物を盗んだり、建物を壊したりするときだけマスクをしっかりして顔を隠しているのを見ると本当にがっかりです。

 

5) 初期の爆発的増加を防げたこと

クルーズ船ダイアモンドプリンセスでのコロナ感染の広がりが2月上旬にありました。日本にとってあの一見迷惑であった事件はとても良いシグナルになったのではないかと思います。世界中のメディアから注目をされ、失敗もあり、逆にそれが国としてその体制が問われ実際に国内の感染が広がることに対する準備ができました。イタリアのようにいきなり感染者が爆発的に増えたり、欧州では不意をつかれて準備できる前に感染が広がってしまいました。アメリカはトランプ大統領が「大したことがない」「心配には至らない」といつも通り間違った判断をしたので出遅れています。この出遅れは伝染病対策にとっては致命的です。実をいうと私は今成田空港でPCR検査を受け、近くのホテルで結果待ちをしていますが、そのプロセスは滞りなく、さらにLineにて個別のフォローができる体制になっています。日本の場合は、クラスターを見つけそれをつぶす。感染経路を特定するといった伝染病に対応する体制ができているのです。もし初期段階で他の国のように爆発的に増えるようなことがあれば、そういった体制は取れず、むしろ他国同様に昔ながらの集団免疫に依存せざるをえなくなります。

 

6) 大声で話さない習慣と公共エチケット

日本語は静かな言葉だと言われますが、日本人は公の場であまり大きな声で話をしません。話をすることも飛沫を飛ばしウイルスの感染につながっていると言われます。静かにそしてあまり話をしないのであればそれ自体が飛沫拡散防止には貢献しています。日本に外国人を連れてくると電車で会話をしていると「静かにしろ!」的な目線がとんできます。日本では公共の場で「迷惑をかけない」という暗黙の了解があり、相互管理システムが「目線」でワークしています。「空気をよむ」というのはまさにその公共エチケットを守ることであり、公共の場ではそれが期待されています。アメリカでは知らない人でもよく会話をしますが、日本ではそのようなことはあまりありません。電車の中で咳をしたらそんな視線が飛んでくると聞きましたが、ウイルスをもっていてはいけないという公共エチケットが人々をさらに予防する行動にむかわせます、アメリカではこのようなエチケットよりむしろ個人の欲求や、自由が優先させる傾向があります。なので、人々の行動自体、さらに監督者がいない状況での行動管理は非常に困難です。

 

7) 集団秩序への訓練の徹底

安倍首相は政府のやり方が良かったというようなことを言ってますが、法的に強制力もなく、中国のような徹底した政府主導の封じ込めをしたようには思いません。ユニークなのは国民にマスクを配ったことぐらいでしょうか?全体的にみると日本人はしっかりとルールを守る国民です。手間がかからずに統治できるのです。それは、「各個人の個別の興味や価値観」<「社会全体方向性、秩序維持」が徹底しているからです。これは第二次大戦にも言えますが、日本人は国家や権力に対して従順です。なので国家が権力を行使しなくても従います。町をシャットダウンすることはビジネスをしている街中のお店にとっては大きな経済的な損失があります。コロナを食い止めるためのロックダウンは経済的な損失を生むので、アメリカでは各家庭に大人は1200ドル、子供は500ドルを配り、さらには免除されるローンを小規模事業主に前倒しで配っています。にも関わらず、「自分たちの権利の侵害」ということを主張し、自粛に反対する人たちが多くいます。先週WalmartやCostcoに行ったのですが、義務図けられているマスクもしてはいるのですが、入店前まではずしてマリファナをすっていたり、入るときにだけしたり、あまり徹底はしていませんでした。トランプ大統領自身が、マスクをいやがったり、町を解放しろ!と政府の政策に反するようなことをTwitterで書いたりするので、ますます人々は分断され共通の行動に対する反対があるのです。そのフラストレーションが今起きているライオットにも見られます。日本にはそういった問題は見られません。非常に穏やかな国民なのです。

 

今後どうなるのか?

現在の日本の体制は、特殊なもので、水際で病気を食い止められているという状態です。全体での免疫数が少ない分、ワクチンができるまではウイルスをコントロールできる現在の水準に保つ必要があります。ただ、問題なのは世界では感染が広がっており、これからラテンアメリカや東南アジア、アフリカなどでますます感染が広がる可能性があるので、当面は外部からの菌の流入を防ぐための水際対策を続ける必要があります。仮に何らかのアウトブレークが起きれば抗体をもっている人が少ない分、アウトブレークになるリスクが続くのです。更にグローバル経済に依存していた産業などは大きな影響を受けることになるので、自分たちだけ「助かった」と喜んでいられるような状態ではないということです。