人生においてその年代年代においてやっておくべきことがあります。競争が厳しい将来においては特にそういった備えが重要になります。例えば10歳の子供を将来アメリカのトップクラスの大学に入れて海外で働かせたいという場合、重要になるのには勉強以上にスポーツか芸術(或いはその両方に力を入れさせます)。なぜかというと、アメリカのトップクラスの学校を狙う場合は勉強はまずはその一部に過ぎず、それ以外にスポーツ、芸術、リーダーシップなどのエリアでの成果が必要であり、人格が見られます。思春期の頃(11歳~15歳)は、それらの領域(運動神経、芸術神経)が最も伸びる年齢だから、その分野を伸ばしていく必要があります。本来であれば思春期は退屈な学校のクラスで無駄な時間を過ごすのではなく、自分を鍛える為に日々忙しくしていなければならないのです。

 

ビジネス的な側面で言えば、日本の大企業の場合、50代、60代にならないと役員にもなれず、それなりに企業経営という資本主義の醍醐味の経験ができません。ただ、健康面で言うと、50代以上の癌になる可能性は25%、脳梗塞、心筋梗塞などの突然死のリスクも一気に上がります。子供も成長し、そこまで大きなキャッシュフローも必要ない中、高い役員報酬をもらう必要性もありません。更に、ビジネスの見直し、組織再編成や売却などといった思い切った改革は、その組織に何十年もいる人間が企画実行するには限界があります。なので熟年者は仕事をバリバリするより、自分自身の健康管理に努めるべきです、組織での役割においても、人材育成や、判断をするような仕事に徹し、プライベートでは、より人生を豊かにするようなことに時間を投資すべきです。

 

こういった年齢と時間の過ごし方の不一致が人生の無駄を生むことになるので、今から2500年前の儒教の生みの親、孔子の教えに沿って考えていきたいと思います。まずは若年期です。

 

1.         子曰、吾十有五而志于学 (15にして学を志す)

15歳までは前述の通り、スポーツや芸術に力を入れることが理想的です。子供を塾に通わせ、試験のテクニックを学ぶというのは無駄なことです。というのも、そのようにテクニックで学べることは学問ではなく、科挙制に始まる一斉試験による人材の振るい分けは効果的に人間としての優秀さを測る物差しとしては時代遅れなのです。グローバル化の中、世界中の優秀な人材が国を超えて世界でトップクラスの学校を受験しようという流れがあります。日本でもトップクラスの高校生は日本だけでなく、海外の大学を視野に入れています。将来的に、グローバル化の延長で人材をグローバルに採用することが広がる中、世界のトップクラスの教育を受けない限り人生の成功の可能性も減ります。そして、トップクラスの大学、例えば、ハーバード大学を目指す場合は、15歳ぐらいである程度合格を意識した自分のバイオを築いていく必要があります。まずは自分が将来どのような人生を歩みたいのかVISIONを持ち、大学での専攻科目を決め、トップクラスの大学に合格するためのレジュメに載せる実績づくりをしないと合格はありません。ハーバードクラスの大学に合格するには、15歳、高校1年であれば、クラスではAPと言われる大学レベルのクラスを2~3取り、良い成績を残す(APテストで5)必要があります。更に、数学のコンテストでの優勝、スポーツで全米トップ200、芸術で何らかの賞をもらうということを実現する必要があります。逆に人生を変えるような大きな体験をするというのも必要です。

 

高校2年、高校3年の16歳、17歳では、理数系であればAP Calculous AB BC, AP Stat, AP Biology, AP Chemistryといった教科、文系であればAP English, AP外国語、 AP World History, AP Human Geography といった教科でAを取り、APの全国試験で4か5を取っておく必要があります。ここで日本から受験する学生には大きなハンディキャップが生まれます。というのも日米の教育方針の大きな違いにより、日本は大きく出遅れることになるのです。日本は万人教育に力をいれており、一定の水準の教養を全員に与えようとします。だから全員同じ教科を同じペースで学び、高校で履修する範囲のことも固定化されており、上級のクラス(大学レベル)を提供する学校は僅かであるからです。アメリカの場合は、小学校からできる子どもを分類し、特別な教育を提供します。私の子供は公立校に行きましたが、そこでは特別なプログラムがあり、中学校にしてAP Calculous AB BCを終えていました。なのでトップクラスの大学を目指すには、そのようなプログラムに入っていて大学受験の年まで多くのAP科目を終わらせておかねばならないのです。ただ、ハーバードの場合は学校の成績だけでなく、スポーツの実績、芸術などの実績、リーダーシップ、コミュニティーへの貢献、起業といった実績があればアカデミックの補填ができます。例えば、アスリートとして全国トップクラスの成績、芸術での何らかの受賞、起業やNPO活動において何らかの実績を上げるといった体験が必要になります。アスリートの場合は、アメリカでは大学がスポーツに力を入れているので、全国の高校アスリートのランキングがあり、星がついています。通常その星が3以上あると大学のアスリートとして迎え入れるだけの実力が評価されることになります。更に大学や研究機関でのリサーチなどをすると合格率は上がります。だから、そういった特殊なインターンは人気があり、合格するのは困難です。最後にPSATという全国模試を受け上位に入りNational Merit Scholarに選ばれると合格の確立が上がります。

 

18歳(高校4年)日本は試験だけで終わりですが、アメリカの大学受験は一年かけた非常に長いプロセスで、SATやACTといった一斉試験、エッセイ、面接といったかなり面倒なプロセスがあります。更には授業料が非常に高いので奨学金を獲得するために様々な面接を受ける必要があります。高校4年で成績が落ちると合格がなくなったりする問題もあります。なので、最後の最後までのんびりできないのがアメリカ大学受験であり、それらを考えると日本の大学受験は楽だと思います。但し、逆にアメリカ大学受験は面倒なだけコミットメントのレベルが上がります。

 

ということで吾、15にして学を志すということは、15にして以下の項目をクリアすることです。

1)将来のキャリアパス、選考を決め、それに備える。

2)合格できるための教養を得る(APクラス、成績、SAT)

3)スポーツやアートで全国トップクラスの成果を出す(だから15まではスポーツ、アートに力を入れる)

4)クラブ活動、地域団体などに属するか起業をし、将来的にリーダーになる下準備をする。

5)何らかのチャレンジに直面する(これは客観的に見て大変なチャレンジ)

こうしてみると上記の項目は成長の過程で必要とされる人格育成の基礎になります。なので、アメリカの大学を受験しなくても15歳ぐらいで上記の項目をクリアすることに意義があります。

 

子育てをすることは親の仕事であり、学校や塾などにアウトソーシングしている人がいるかもしれませんが、その場合には、その学校が適切な育成をしているかチェックする必要があります。2024年を迎える際にそれについて考えてみてはどうでしょうか?

 

CVSでの大学留学サポートプログラムは終わりましたが、今後はアメリカの大学に合格するだめの支援を提供していこうかと考えています。具体的にコーチングが必要な人はコンタクトしてください。私は定期的に日本に来て浅草北部教会にてメッセージをしますので、そこで会うのがベストでしょう。明日は10時20分から日曜礼拝のメッセージを担当しています。良かったら来てください。

学生時代に当時、リクルートコスモス事件で揉めていた安倍晋太郎代議士(安倍晋三元首相の父親)が会長を務める自民党の団体で秘書のアルバイトをしたことがあります。私が留学するジョージタウン大学の客員教授が発起人で、元国連大使やジョージタウンの著名な教授陣も来日し、明治記念館でかなり大きなPARTYを開いたのを覚えています。当時の名刺やリストが出てきたので見ていたら、安倍晋三元首相が安倍晋太郎氏の秘書と書いてあるので、どうやら私も会っていたようです。当時は華やかな政治の世界、派手なPARTY、そして鳩山由紀夫、邦夫代議士や中川昭一代議士など身近で見ることができ、そのような体験ができたことでかなり興奮していました。ただ、その団体も含め、政治の裏の世界を見てしまった部分もあり、ジョージタウン留学後は、国家公務員や政治の世界に入る意思は消え、むしろメディアに行きたいとNHKワシントン支局でインターンなどをしました。あれから30数年、今回の政治資金の問題でようやく安倍派の先行きもあやしくなってきました。

 

前回、アハズ王の話をしましたが、聖書には悪いリーダーにより国家が退廃していく歴史が書かれています。企業経営もそうですが、良いリーダーがいれば企業は成功します。国家も良いリーダーが建てば繁栄をもたらすことができるはずです。ただ、日本の場合は、環境や伝統・風習といったものが大きく、なかなか変革をもたらす良いリーダーを生むのは困難だと思います。日本の大企業もそれと似ていて、私が経営コンサルティングをしていて、日本の親会社、取締役といったレベルになると、その体制の変革をするのは著しく難しいと感じました。それが、もっと大きな日本という国家、政治となるとほとんど不可能ではないかと感じてしまいます。だから、CVSの卒業生には大企業に就職するのではなく、コンサルや起業することを勧めたのですが、その道に進んだ人は活躍が見えますが、大企業や公務員になった人は消えて見えなくなってしまいました。

 

日本社会にはその根底に良くしていこう、改善していこうというエンジンはあります。ただ、それらは唯一政治的な利害が一致した際に実施にむかっていきます。今回も何らかの政治的な意図と結びつき、政治献金の疑惑も内部から何らかの手が入り動いたものと想像できます。一見、襟を正すような浄化に見えますが、抜本的に伝統や慣習を改めるようなことにはならないでしょう。結局は何らかの政治的勢力争いであり、過去起きてきた政治的摘発の一つでしかなく、国民にとっても「またか」というワンパターンのハリウッド映画を見ている気分にしかならなず、古代イスラエル同様に退廃の道を突き進んでいってしまうのです。

 

安倍元首相が暗殺され、統一教会問題がようやく動き始めたことなどはかなり大きな方向転換ではあります。ただ、統一教会の問題はもう30年間も取りざたされていたことであり、ジャニーズの問題を含め人が死なない限り変革を起こすことができないのでしょうか?ここまで時間がかかってしまう「変革の遅さ」は徐々に日本を弱体化させていくのではないかと心配しています。歴史的に日本人は自然災害、戦争、外国からの侵入などの危機的な状況にはしっかり対応できていますが、内部の浄化、改善、改革といったものはなかなかうまくすすんでいません。なので、日本崩壊のシナリオとして成り立つのは、大きな自然災害や、戦争ではなく、がん細胞が体を蝕むように、内部から徐々に弱体化し、最終的に分裂崩壊していくというものです。特に人口が減り、将来的に高齢者が増える中、現在抱える水準の財政赤字をどのように処理していくのか?前途多難の日本将来を変革するようなリーダーが現れるのでしょうか?

 

これらの「遅さ」にある根本の問題は、「空気を読む」といった日本の文化の中にある、人々が作り上げる雰囲気や反応にリーダーが気を取られすぎているという問題があります。政治は日本国民の国民性の表れであり、最終的に苦しむの国民であるが故、それを変革できないのはむしろ国民の意思なのかもしれません。

 

キリストを十字架につけさせたイスラエルの国民は、ユダヤ戦争を引き起こし、国は崩壊し、DIASPORAというイスラエル民族が離散してしまうという悲劇を生みます。『歴史的に預言者「変革者」に耳を貸さなかった祖先達』とステパノは言っていますが(使徒行伝7章)、人々が予言者、そしてキリストまで十字架につけ予言を聞こうとはしません。そのユダヤ人は結果的に国を追われ、離散し、行った先々で差別を受け、つい100年前にはホロコーストという悲劇まで体験します。70年から1945年までの実に1800年以上も離散していくのです。衰退する大企業同様に現状維持を好むそのカルチャーが故に、崩壊が待っているのです。日ユ同祖論の中には、日本人もユダヤ人の一部が入っているという考えがあります。そのユダヤ人が歴史的に背負ってきた苦労を日本人も引きずってしまうのでしょうか?私は日本人であり、日本が好きです。何とか、今後とも日本が豊かな国であってほしいという願いがあります。ただ、趣味で書いているSF小説では日本の半分は中国になっています。日本の政治が良くなり、経済、産業で世界をリードできるような良い国になるためには、変革を受け入れる「空気」を人々が作り出す必要があります。今日も変わらない空気の中、年末の一日を迎えようとしています。

 

明後日(12月31日)、浅草北部教会での礼拝にてイザヤの予言が意味することについてメッセージをしますので、来れる人はきてください。礼拝は10時15分に始まります。お土産をもっていきます。会うのを楽しみにしています。

アメリカはクリスマスの雰囲気一色で、ここハワイでもどこにいってもクリスマスのイルミネーション一色です。LAにいるときに思ったのですが、南国なのに雪だるまのオブジェがあったりしてもう少し気の利いたオリジナリティーのあるクリスマスデコレーションをしてくれないものかと感じます。

 

さて、クリスマスには幾つかJargon(用語)があります。NOEL(ノエル)、ADVENT(アドベント)、MAGI(マジャイ)など、皆さんは意味をご存じですか?そしてクリスマスにとても重要な用語はイマヌエルです。NOEALなどはラテン語ですが、イマヌエルはヘブル語です。これはイム(עם)~と共に、ヌ(נו)~我々と、エル(אל)神という意味です。エルはアラビア語ではアラーなので同じセム語を語源にしているので想像しやすいかと思います。「我々と共にいる神」という意味です。これは新約聖書のマタイ伝の中の重要な言葉であり、そこに訳も書いてあります。(1章23節)。マタイ伝はキリストの家系図で始まるのでユダヤの予言に基づくキリストの誕生ということが中心になっているのでユダヤ人を対象に書かれたようにも見えますが、ここで訳がでているので原語はギリシア語だと考えられます。重要なのはマタイ伝の最後にある復活のキリストが昇天する際に「あなた方とともにいる」(28章20節)とキリストがいうことです。マタイ伝の中で神はどこにいるかというと、「神は我々と共にいる」というのが大きなメッセージであり、それが意味することがどういうことかというのは12月31日に浅草北部教会にてメッセージをしますので、その際に話します。

 

このイマニュエルは旧約聖書のイザヤにより予言されたのですが、そのイザヤが予言をする場面がなんとも不思議な状態にあります。それはアッシリア文明による脅威の中、南イスラエル国家(ユダ王国)存亡をかけたアハズ王にイザヤが予言をするものであり、そこには人間対神の面白い対比が書かれています。ヨシュアが占領を成功させ、ダビデが大きな国家にしたイスラエルも最終的にはキリストを十字架にかけ、キリストの弟であるヤコブが処刑されエルサレム教会がなくなった後におきたユダヤ戦争で完全に破壊されます。(古代メソポタミア文明からユダヤ人の歴史が始まりますが、よそ者であるユダヤ人が、今のイスラエルであるカナンの地にこだわるのは聖書の歴史の中でも非常に面白い部分です。そしてこの地は古代から色々な部族が住んでいて、奪い合いの歴史の中にあります)。

現在のイスラエルはシオニズム運動で戦後建てられた国家であり、周辺のイスラム国家はその占領行為自体を認めないという考えがあります。ただ、その考え自体は今から3000年以前から存在しており、当時の地図には現在のガザ地区にはすでにパレスタインが書かれています。まだ少年であったダビデが戦った相手、ゴリアテはペリシテ人であったと書かれていますが、まさにそのペリシテというのがパレスタインであります。そしてパレスチナ人がどのように来たのかというストーリーも不思議で、「紀元前1200年の大惨事」と言われる世界史で学習する青銅器文明が次々と破綻していった謎の出来事に出てくる「海の民」であったともいわれています。この地における占領と戦いは昔から今まで続いています。

 

こう考えると、イスラエル、そしてパレスチナ問題というのはそのルーツに長い歴史が関わっているので、簡単な問題ではないと言えます。ただ、今回の紛争は、神に選ばれた民と信じるユダヤの民が、神の目から見て妥当なことをしているのかというとそれは疑問であります。そしてその陰にアメリカがあることも非常に大きな意味があります。イスラエルのネタにエフ首相がアメリカがパールハーバーや9・11にやったことと今回のイスラエルの徹底的なガザの破壊を重ねていることは非常に面白い対比であります。パールハーバーはアメリカは知っているのにわざとやらせたという陰謀説、9-11はアメリカの情報局の油断であったという説。これらはそれぞれ信憑性のある説であり、結果として、第二次大戦には日本、そしてアフガニスタンやイラク、これらは徹底的にアメリカ軍により破壊されます。今回も明らかにイスラエルの油断と、安全管理の問題によりハマスの攻撃を許してしまいました。アメリカはイスラエルの攻撃に批判もしますが、止めようとはしません。そしてその矛盾がウクライナ戦争のロシア批判に影を落としています。

 

2024年はどのような年になるかわかりませんが、人類の歴史は常に戦いの歴史であり、神の意に反する行動の連続です。そして聖書はそれがいつまでも続くかのような予言もあり、将来は必ずしも良い方向に行くとは限らないというような気もします。日本は特にそうです。そのような中でどのような希望をもって生きていけるのかというのは重要な課題です。

 

12月31日には浅草北部教会にて10時15分より礼拝があり、私がメッセージをさせて頂きます。そこには希望があるかと思います。是非とも皆さんお気軽に聞きに来てください。ハワイかLAからお土産も持っていきます。できたら礼拝の後にお茶でも飲みながら意見交換などもさせて頂きたいと思います。

皆さんお久しぶりです。今年2月からハワイに来てます。Olivet Baptist Church というワイキキからそんな遠くない教会でBusiness Administrator として働いています。UCLAのビジネススクールに留学で来たアメリカ、知らない間に30年もたち、日本に帰ろうと思っていたのですが、ハワイで止まってしまいました。

 

私が初めて来たアメリカはハワイでした。姉がハワイ大学にいたので、その姉を大学1年の時に訪問して一か月滞在しました。その時はハワイがとても大きな場所に思えました。今回LAからくると、ハワイは遠い地方であり、実に狭い小さな島であるという感じがします。アメリカ西海岸から飛行機で5時間、4000キロ以上も離れています。ニューヨークからだと8000KMも離れています。東京から8000KMというとアラブ首長国連邦のアブダビまでの距離です。いくらなんでも離れすぎではないかと思います。時差も東海岸から5~6時間もあり、大統領選挙の際には投票に行っているのにもう結果がでていることがあるとのことです。さらにホノルルがあるオアフ島は小さな島で車で数時間で一周できます。空港までも15分ぐらいで行けて、便利ではあるのですが実に小さな島に「島流し」にあってしまったと感じることも少なくありません。80年代にジョージタウン大学に留学をしていた際にダニエル・井上というハワイの空港に名前がついている上院議員に会ったことがあります。442日系人部隊にいたこともあり、家族の知人に442部隊の関係の人が多かったので、身近に感じたのですが、今改めてよくもこんなに離れた島の意向をアメリカ政治の中に浸透させたと感心しています。

 

アメリカはハワイを獲得することで太平洋を制するのに重要な領土を得たことになります。なのでハワイはかなりの恩恵をアメリカに与えているので、軍事を含め色々な支援を得る権利があると思いますし、実際、かなりの予算を得ています。特に第二次世界大戦の日本軍によるパールハーバー攻撃はアメリカ軍の歴史的重要性を永久的なものにしました。最近では中国の軍事増強もあるので、軍事拠点としての重要性は今後とも続きそうです。グアムもそうです。但し、ハワイの人の多くは自分のIDENTITYをアメリカ人というよりはハワイ人、あるいは日系人などと思っていて、本土に比べアメリカ人としてのIDENTITYは低いような気がします。更にその歴史的な背景から白人をハオリHAOLE(よそ者)と呼び、歴史的にアジア人の移民も多いことから、アジア人でも安心して住める雰囲気があります。なので、こんな島を日本人が気に入る一番の理由は気候だけでなく、この独特の文化からくる「居心地の良さ」があるのではないでしょうか?そして経済を軍と観光に依存しているこの島にとって、観光産業で貢献してくれる日本人の存在は非常に貴重なものでした。

 

但し、そんなハワイはアメリカの中で特に物価が高く、最近の円安ドル高は日本人観光を呼ぶには逆風です。更に日本の経済の停滞は構造的な問題なので、金利を上げることが難しい日本にとって、今後ハワイは遠い島になっていくでしょう。「昔よくハワイに言った」という日本人が増え、ハワイ観光は金持ちの道楽になっていくでしょう。

 

ハワイは教育面では問題があり、私の家族はLAに残ることにしました。ワイキキにコンドを買ったのですが、月の3分の1は使ってないので、CVSの卒業生とか使いたい信頼できる人がいたら貸してあげますよ!車、自転車もあるし、サーフボードも買う予定なので、使っていいです。イリカイホテルの反対あたりにあります。海も花火も見えます。月末に日本に帰るので興味がある人は会いに来てください。円安で日本人にとって遠くなってしまったハワイをまた簡単に行ける支援をしようかと考えています。

情報がグローバル化した現代、ロシアのウクライナ侵攻は、世界中の人々の前でプーチン、そしてロシア軍隊の非人道さを露呈させ、あっという間に世界中の人々の批判が過熱しています。プーチンは、時代遅れのリーダーだと言われていますが、第二次世界大戦の際のヒットラーのように、西側諸国の動きが遅いことを見越して、軍事力を前面に出した古典的な領土拡大型の侵略をしています。この戦争はプーチンの戦争であり、ロシアの人々にとっても災難しか生まない戦争であることは明らかです。1989年にベルリンの壁が崩壊した際に、私はジョージタウン大学で学んだ冷戦体制があまりにも大きく変化しているのに驚き、ベルリンに行き、壁を崩すのに参加しました。その際、プーチンも東ドイツにのドレスデンにKGB Agentとして駐在して東側の共産体制、ワルシャワ条約体制が崩れるのに驚き、その後のソビエトの分裂と民主化の波には大きな失望を感じたそうです。孫氏の兵法に「戦わずして勝つ」ことが最高の勝利だとありますが、冷戦は一見それが実現したような形で終わったかのように思われました。ただ、共産中国の台頭、プーチンの独裁化はまだまだ東西の対立が終わっていないことを感じさせます。そんな中、西側のリーダー、世界最大の力を持つアメリカは何を考えているのでしょうか?トランプ前大統領のコメントだけをみているとアメリカは、思慮が低くロシアの脅威を見過ごしていたように見えてしまいますが、今回のようなロシアの暴挙はある程度想定されていたのではないかと思います。ジョージタウン大学で、外交関連のシンクタンクなどで働く優秀な人をみてきましたが、アメリカの政策にはそういった専門組織の注意深い分析が背後にあるので、ウクライナ問題に関する想定できるアメリカの考えをNo Fly Zoneを焦点に見ていきたいと思います。

 

ウクライナの元お笑い役者であったゼレンスキー大統領は多くのアメリカ人にとって、民主主義のシンボル、ヒーロー的な存在になってきています。彼は効果的なコミュニケーターであり、イギリスに対してはチャーチルやシェイクスピアを引用したりして、人々の心を動かしています。アメリカのテレビのインタビューなどにも登場し、独裁者のプーチンと対極的なヒーロー的な存在になっています。特に今回の紛争はアメリカの歴史と重ねる部分があり、アメリカ人が自由を求め当時の大国のイギリスと戦った姿を感じさせます。独立当時アメリカをサポートしたフランスが、今のウクライナに対するアメリカの立場と重ねることができます。当時のフランスはアメリカに対して、物資的なサポートをしました。ただ最終的にフランスの存在意義を大きくしたのがフランス海軍によるイギリス軍を海で撃退したヨークタウンの戦いです。なので、無差別爆撃から人々を守り、No Fly ZoneをNATOを通じてアメリカが支援することはアメリカ人にとっても心から欲する部分ではあります。そしてゼレンスキー大統領はそこをうまくついた適切なコミュニケーションをしてきます。圧倒的な世論のバックアップがある中で、アメリカを中心とした西側諸国が、No Fly Zoneを公に否定しているのには、メディアでは、「エスカレートさせないため」と言っています。ただ、その裏にはこの紛争に関するアメリカの読みがあり、何らかの戦略的な「読み」が背後にあると思います。そのアメリカ側の「読み」について考えてみたいと思います。

 

1) ロシアのウクライナ侵攻はアメリカの関与なく失敗するという読み:ロシアの侵略が始まる前からバイデン大統領が侵略があると言っていたのは、ウクライナ人に対する警告であり、アメリカは当時の軍事体制や、過去のウクライナ国内における政治的な分裂から、あっという間にロシア軍が制圧すると想定していたのは事実だと思います。ただ、2014年の民主化革命にあったように、ウクライナ人の独立、反ロシアの思想の強さから、混乱の中で傀儡政権を建て、維持するのは困難であると想定していたと思います。なので、ゼレンスキー大統領を避難させるように促していたし、軍隊の配備もやや遅れていました。それは、ロシアを刺激せずにロシアを自ら失敗させるというシナリオです。でも、実際にはウクライナ軍、そして人々が立ち上がり、勇敢にも武力で戦うという道を選びました。現段階では、恐らくロシアは傀儡政権を早急にたて、何らかの合意でロシアの一部としてウクライナを早急に吸収することを考えているのが、プーチンの宣言から見て取れます。でも、ロシアの侵略にはいまだに成功のシナリオがありません。2200万のウクライナの人々はロシアの残虐な侵攻の被害者で彼らが、プーチンの支配下にはいることはまずないと言えます。つまり、最終的に失敗するロシアとわざわざ直接戦う必要はないということです。

 

2) NO FLY ZONEは戦略的に効果的ではないという考え:私がジョージタウン大学で取ったクラスで感動したのは、過去の戦争や戦いがどのように起こり、どのような戦術が有効であったのかということを分析するクラスでした。アメリカは、過去の実践をしっかり学び、専門家が分析しています。今回もNo Fly Zoneは必ずしも効果的な防御ではないという可能性があります。それはロシア軍の地上からのミサイルによる攻撃がこれからは中心になっていき、地上に対する空からの攻撃はNo Fly Zoneではすることができません。更に、DRONEなどを使った攻撃が効果的だと言われていますが、それをすることはNO FLY ZONEに反することにもなりかねません。恐らく別な手段でロシアの攻勢を防ぐ方法をアメリカが背後で支援する準備があり、表向きは「関与していない」と言わければ戦略として意味がなくなります。

 

3) プーチンが西側との直接対決を望んでいる可能性:アメリカでは拳銃の所持が認められていて、ほとんどに人は自衛のためだと言っています。でも中には「本当に拳銃を使てみたい」と感じている人もいます。プーチン大統領は核兵器を使ってみてもいいと感じているリーダーの一人であり、追い詰められた熊のように何をするかわからない危険な状態にあります。ロシアでは若者を中心に反プーチンの思想が広がっており、汚職も次々と明らかにっされています。プーチンも愛人の女性が2019年に消えて殺された可能性もあると言われており、何らかの恐怖心から今回のような無謀な軍事侵攻をしたという考えもあります。CNNでCIAの専門家が、独裁者が一番恐れるのは「権力を失うこと」だと言っていました。ロシアが戦時下になれば第二次大戦中のスターリンのようにプーチンも戦時下のリーダーとしてその権力を維持できるわけです。人権を重視する西側が簡単に核兵器を使うことができないことを知っているが故、喧嘩を売っている追い詰められたヤクザのようにプーチンがなっているわけです。ロシアが民間人を殺したり、無差別爆撃という惨い戦略をとっているのは、プーチンの意図的な挑発である可能性もあります。No Fly Zoneはプーチンに何らかの口実を与えることであり得策ではないのです。

 

4) Air Supportのタイミング、或いは規模の限定:前述した通り、アメリカにとってウクライナを支援することは避けて通れないものがあります。更にはMediaを通して伝えられるロシアの残虐な民間人攻撃はこれ以上許せないという世論をかきたてています。今後、状況によっては、NATOを通じて限定的に空からのサポート、更には民間人の救出を目的とした軍事活動がある可能性があります。ただし、戦争というのは全て手の内を相手に見せることは効果的ではないので、明確に「No Fly Zone」はないと言っておく方が、追い詰められたプーチンをエスカレートさせる抑止になります。同時に、ウクライナ民衆に対しても、ないといってから途中で実際にサポートをする方が、その逆よりは遥かに効果的です。アメリカ独立戦争の際になかなかフランスからの支援が届かずにラファイエットが批判されたということがありました。今のウクライナはその時のアメリカのようなのかもしれません。

 

5) ウクライナが独自の力でロシアを撃退し、プーチンが失脚する可能性:プーチンは予定通りにウクライナ侵攻はうまくいっているといっていますが、それが間違っているのは明らかです。ロシア国内で情報規制をしていることからも、プーチンにとってウクライナ軍、そして人々の抵抗は想定を超えるものであったと言えます。西側デモクラシーのリーダーとしてアメリカは見られていますが、アメリカ自体は世界に対する何らかの野望があるわけではなく、むしろ「アメリカ第1主義」にあるようにアメリカ国内により大きな問題があり、過去のモンロー主義にあるように海外での問題に関与することは消極的です。更に、過去のベトナム、そして最近のアフガニスタンでの失敗にあるように民主主義は独自の力で進めていかないとうまくいかないことをアメリカの専門家は知っています。表向きであれ、アメリカが独立した時のようにウクライナ人が独自の力でロシアとの戦いに勝つことが最もあるべき最終形なのです。復旧に関しては西側は圧倒的な支援をするだろうし、プーチンがロシアで失脚すれば、ロシアとの国交も回復し、更には中国の習近平に対する牽制にもなるので、それが起きることがアメリカにとっては望ましいシナリオなのです。

 

今回の紛争にはグローバル化、情報化の進んだ今世紀に、強大な軍事力を背景に覇権を握ろうとする前世紀型の紛争がどうなるのかという姿が見えます。世界からボランティアでウクライ軍に志願する人が数万人もいると言われます。ウクライナ側でロシアの軍人がどうなったのかという情報共有をネットでしたり、SNSなどで難民の支援や、民間のウクライナ支援の様々な動きがあります。更には、グローバル経済の中で、大規模な経済制裁、そしてロシアを孤立させることに何らかの抑止力があるのか、経済の影響はどの程度なのかを測ることもできます。この紛争は今後の時代を変える大きな要素があります。その一方、追い詰められたプーチンは引っ込みがつかない状況なので、世界最大規模の軍事力を更に投入し、紛争を拡大させ、より残酷な方向に向かっていくと考えられています。西側諸国が望まなくても、第三次世界大戦に発展するリスクは消えないのです。核兵器のような恐ろしい手段もちらつかせている上に、原子力発電所を攻撃するという手段を択ばない攻撃をしています。今後エスカレートし、無防備のウクライナの人々が殺される姿を見ることには耐え難いものがあり、早くこの紛争で終わり、更にはウクライナが自国を独自の力で守り、ウクライナ人が願う結果になることを切望してやみません。

先週、WallStreetを沸かせた出来事がGameStop(GME)の株の高騰です。数年前に3ドル台で取引されていたGameStopの株が急に高騰し市場を混乱させました。週の始めに30ドル程度だった株が水曜には300ドル、木曜には480ドル、そして急にRobin hoodなどのオンラインの証券会社などが株を買うことを規制し、一時期$100ドル台になるも金曜にはまた300ドル台に戻るという乱高下を繰り返しました。短期間に100培(最安最高で143倍)というのは明らかに異常事態です。

 

問題点は何か?

株の乱高下は市場では珍しいことではありません。ただ、今回の事象の問題は2点あります。まずは、今回の問題はGamestopの株はこれといって上がる理由のない斜陽の会社の株です。市場のファンダメンタルズからいうと、300ドルという価値はありえない水準です。それは、Redditというオンラインの株式チャットで人々と影響させ、一般人がこぞって株を購入させ高騰させたということです。これは株式市場に関する信用にも関わるので問題です。もう一つの問題は、木曜日にAMERITRADEやRobinhoodなどの小口の個人投資家が使用する口座でGamestopの株を売れても買えないようにしたことです。その結果株は一時的に下がり、Hedge Fundなどの大口投資家は、Short(先売り)による債務を返済できたのではないかという市場操作の疑いです。今回の問題がどのような意義があるのか、そして将来はどうなるのかといった点に関して解説したいと思います。

 

Hedge Fund とShort Seller(空売り)

私がビジネススクールで投資のクラスを取った時にクラスの一番最初で教授が言ったことは衝撃的でした。「投資の世界ではSmart Money(賢い金)がNaïve Money(何も知らない金)を食べて大きくなる。そして大きな金は影響力が大きいので、ますます大きくなっていく。」いかにもWall Streetの投資銀行出身の教授が言いそうなことですが、要は投資の世界では金持ちがより金持ちになること、知らない人は損をするという原則があるといったやや高慢な発言です。結局、私のような投資を何も知らない人間は損をして終わりか…コンチクショー…と感じましたが、それがきっかけで私は株の投資を始めたので、今は感謝しています。Hedge FundはまさにそのSmart Money集団でその手段の一つとしてShort Selling(空売り)があります。特にこれは市場の先行きが不透明な状態で効果的で、今年あたりはShort Sellingを活用してHedge Fundが相場以上のリターンを上げる手段として効果的に用いるのに良いタイミングです。下がりそうな会社の株を見つけ大量に空売りすると、株は下がり、さらにそれに焦った市場で売る人が増えるので、その株を返済する際には安くなるので、短期間でかなり利益をあげれる計算です。今回大損をしたHedge FundのMelvin、Point72 、D1などは12月ごろから空売りを始めていて、恐らくは10ドルぐぐらいだったので、それを売って短期的に昨年前半の水準であった$5ぐらいには下がると踏んでいたのでしょう。それがShort Squeeze(返済する株の価格を吊り上げ、空売りをした人が逆に損をするという状況)にあい、190億ドルもの莫大な損をさせるという状況を作りました。Short Squeezeを起こしたのはRedditというチャットで集まった小口投資家達で彼らからすれば確実に買わなければならない客がいる株(空売りは借りた株を売るのでそれを買って返済しなければならない)なので確実に上がるので買おうという動きでした。その動きに火がつき、想定できないほどの高騰が起きたのです。

 

フランス革命とその被害

TESLAやSpaceXの創業者Elon Maskはこの状況をTwitterでGamestonk! (Game Stopを俗語の株の俗語Stonkと兼ねている)とtweetしましたが、Stonkには「集中攻撃する」という意味もあるので、この現象を面白おかしく表現していました。彼は以前からShort Sellerが嫌いで、Tweetしていました。特にTeslaの株がShortSellerにより下げられていた際に、株を元にファイナンスしていたMaskにとって、Short Sellerは将来の発展を妨害する者でしかなかったからです。私も投資した株がニューズの前触れもなく、一気に落ちることがあり、後でShort SellerがそれをしていたとわかるのでそういったHedge Fundは嫌いでした。それを一般の投資家が集まり、株を高騰させ彼ら金持ちの連中に大損をさせたわけです。そしてその活動には金持ちがますます金持ちになるというWall Streetの原則に挑戦する戦いの意義があり、民衆の金持ちに対する怒りを示す意義あるものだったと思います。ある意味、嬉しい気持ちです。でもこれにはフランス革命と似た恐ろしいエスカレーションがあります。フランス革命は民衆が蜂起して王政を覆しましたが、そのあとも、貴族のみならず革命家たちをも次々とギロチンにかけフランスは混乱に陥りました。もうHedge FundはShort Position をカバーした(損をして返済をした)と言っているので、今後損をするのは、株価が自然暴落する際に高値で購入した人になります。革命家のロベスピエールが自らギロチンにかかったように、結局はこの動きに乗っかった民衆が最終的に損をすることになるでしょう。

 

Game Stop

Game Stopはゲーム機器、ゲームソフトの新品や中古を売買する店で、アメリカ全土にあります。90年代以降のゲームブームで急成長した公開会社でした。ただ、今はゲームはダウンロードが主体、モバイルに移行しているのでゲームソフト時代の販売は先行き真っ暗だと言われています。携帯事業もしましたが、それも売却し、数年前に経営陣が戦略的に身売りをする動きをしましたが、それも失敗しました。要は行き所を失った見捨てられた会社です。ただ、そのブランドやバランスシートでのキャッシュなどを見ると悪くないので、実は私も数年前に買い増しをしました。2000年前半頃に最初は投資したのですが、以前紹介した私の投資方式だと倍になったら半分売り、その後また半分売りという流れなので、一度投資すると必ず残りが出ます。数年前にその残りをどうしようかとリサーチをした際にキャッシュのPositionが悪くなかったので、Yahooのように会社をつぶして資金分配する可能性もあるかと思い、少しだけ買い足しました。残念ながら倍になったらまた半分売ってしまったので、今回の恩恵はそこまで受けませんでしたが、この状況は想定外でした。

 

学べる事と将来への影響

1)                   一般投資家の増加と金余り:今回は機関投資家達の想像を超える投資額で株価が高騰しました。ちょうど暴徒の数に警察が圧倒されるかのようです。Robinhoodなどアメリカのオンラインの証券会社はどこも手数料無料。携帯のアプリで、いくらからでも簡単に株の売買ができます。今回の高騰に面白半分で参加した人もおり、「ファンダメンタルズに基づく利益追求」という投資ではなく、面白半分で株式市場を吊り上げるのに参加しているとも見えます。特に数百ドルが1日で数千ドルになるような状況であればギャンブル的に楽しんでいる人もいるのかもしれません。外食やエンターテイメントが減少し、金利が低い中、更に政府がお金をばらまいていて一般市民はCOVID自粛で貧困化する人がいる反面、逆に手持ちのお金が増えている人もいます。Naïve Moneyの量が増えると、Smart Moneyを圧倒し、市場原理が異常化するという状況が起きます。空売りは大手投資家にとって有利になっていましたが、今後今回のようなリスクを想定する必要もでてきました。今回投資した人の中にはゲーマーで昔よくGamestopでゲームを買ったので、記念に応援したいと言って購入した人もいるので、今までの空売りのロジックが必ずしも成り立たなくなり新たなリスクファクターができました。結果として空売りが減る可能性もあります。同時に一般投資家が増える分、公開会社にとって消費者受けする「ブランド」がますます重要になってきます。

 

2)                   人々の影響力と活動の変化:アメリカの政治の世界もそうですが、専門家やプロの意見より、現代社会はネットでの個人の影響力が強くなってきています。今回も複数の人のRedditでの書き込みから始まった動きであり、これが投資の専門家であるアナリストやテレビでバブルだと言っている専門家の意見を上回って人を動かしました。明らかに人々への影響力の媒体に変化が見られます。Robinhoodのように「全ての人が投資に参加できプラットフォーム」を提供することで、市場価格に対する影響力の主体が専門家からネットでのInfluencer (日本では何と言いますか?)に移ってきていると言えます。

 

3)                   金持ちによる市場への影響力:今回最も問題になっているのがRobinhoodなどの証券会社が一時的に株式購入をできなくしたということです。CEOのインタビューを聞きましたが、要は「急速な株式取引のボリュームとそれに基づくコンプライアンスを懸念して一時期買う行為をできなくした」と言ってましたが、それにより株価は下がりHedge Fundなどを助けたことは否めません。一部の株だけ買えない、そして売ることはできるというのは、その説明とは合致しません。そして大手投資家達は継続的に投資ができました。これは明らかに平等ではなく、結果的に市場介入と操作になっており、このような動きに対して、何らかの圧力があった可能性は否めません。特にRobinhood社自ら上場を控えているので、大手投資家に気を使っている可能性はあります。なので今回の高騰は最終的には大手投資家の勝利で終わると思います。但し、大手投資家は今後は一般投資家の動向を把握する必要が出てきました。

 

4)                   景気後退のサイン:限定はされてはいますが、今回の投資は明らかにバブルです。実際の価値以上に大きな値段がつくのがバブルです。2000年のTechバブル崩壊、2008年サブプライムローンの際(リーマンショック)もそのようなバブルがありました。そしてドットコムやリーマンのように一部の株の暴落が引き金となり景気後退が表に出ます。現在コロナ禍の中で経済活動に問題があるにもかかわらず株価が高騰しているのはバブルの可能性があります。更には、ワクチンができても、ウイルスは存在し続ける可能性があるので、全てがもとに戻るという保証はありません。なので景気後退のサインとして今回の高騰が起きた可能性はあります。

 

さて、RedditではGamestopを更に上げようといった記述があるようです。上がり続ければ確かに損をする人はいないので、以前紹介したPonzi Scheme (ねずみ講式投資)のように増え続けるシナリオを想定する人もいるかもしれません(それは経済的にはまずありえないのですが…)さて、今週はどうなるでしょうか?私は今週中には暴落が始まるのではないかと考えています。適正な株価は10~50ドル前後ではないでしょうか?皆さんはこの動きはいつまで続くと思いますか?

LAのCOVID19の現状

2021年1月末現在のアメリカのCovid19の状況です。私の住むロサンゼルスは世界最大のCOVID感染者を出しているアメリカの震源地(EPICENTER)となっています。中でもひどいのがダウンタウンのすぐ西からKoreaTownまでの地域でこの地区はラテン系、黒人やマイノリテリィーが多く、通りにCovid19危険地域という看板さえ出ている状況です。私の住むパサデナでも救急車の音が毎日のように聞こえ、一番大きな病院であるHuntington Hospitalでさえ、医療崩壊が起き、身近でもCovid19にかかった、家族が亡くなった、かかったけど良くなったというような話を聞きます。数字から状況を客観的にみていきましょう。

 

アメリカのCovid19感染者と死者数:感染者約2600万(世界全体の25%程度)、死者約42万人(世界全体の約20%)人口比などから5倍以上多くの感染者、死者が出ているので、とてもではないけれどアメリカは感染症対策に成功したとは言えません。現時点で世界最悪だと言えます。状況が悪くなっている日本の方がはるかに成功しているように見えます。ただ、死者数の割合が感染者の割合より低いのはアメリカのテスト数が比較的多くなっているのか、治療が他国より多少良いのかだと思いますが、恐らく前者がその理由でしょう。日本はテストは少ないと言われているので、恐らく死亡者の率の方が高くなるのではないでしょうか?

 

カリフォルニアのCovid19感染者と死者数:感染者約320万人(アメリカ全体の12.5%)、死者数約38500人(アメリカ全体の9%)カリフォルニアの人口はアメリカ全体の約12%なので妥当な数字ですが、人口が多い分アメリカでのCovid19感染の震源地と言われています。人口が都市部に集中し、更には移民が多く各世帯人数が多い分感染が広がっています。乾燥した気候も感染の広がりにつながっているのかもしれません。

 

ロサンゼルスのCovid19 感染者数と死者数:感染者約110万人(カリフォルニアの約35%)、死者数約16千人(カリフォルニアの約42%)。LAの人口はカリフォルニアの27%程度なので、カリフォルニアの中でも特に悪いのがロサンゼルスだということがわかります。ニューヨークでもそうでしたが、特に黒人やヒスパニックの犠牲者が多く、低所得者の中には働かなければ生活できない人も多く、そういった人が多く犠牲になっているようです。それと、世帯の中の住人数が多い地域、ラテン系のように大家族がまとめてすんでいる地域が老人施設とあわせ集団感染があり、結果として多数の被害者が出ています。

 

Covid19 の発祥地武漢との比較:武漢の人口は1100万人だと言われ、ロサンゼルスの1000万人とある程度近いと言えます。武漢は感染者が約5万人、死者が約4千人だと言われています。中国のデータは信用できないと言われればそれまでですが、もしこれがある程度信用できるのであれば武漢の場合は人口の約0.5%しか感染しておらず、ロサンゼルスの11%の約半分に比べはるかに少ないと言えます。感染者中の死亡率は、武漢の場合は8%で、ロサンゼルスの1.5%より多いので武漢でCovid19 が発症した際には十分にテストなどができなかったので、実際には遥かに多い人数が感染していたのではないかと言えます。

ただ、もう一年もたっているのに、武漢と比べアメリカ、特にロサンゼルスの状況の方が悪いのにはいくつかの理由があると思います。そしてその悪い要素は日本にも共通している部分があるので、学ぶ必要があります。

 

Covid19 感染が悪化した理由とそこから学べること

1)病気に対する認識の問題

昨日ビジネスMeetingがあった際に、その相手の人がしばらく連絡がなかったので、聞いてみたらCovid19 にかかり隔離していたということでした。でも平気で対面の打ち合わせを要望してきたので、Zoomに切り替えてもらったら、やや怪訝な反応でした。Covid19は悪くなる人とそうでない人がいて、中途半端に恐ろしい病気です。かかった人の中にはインフルエンザのような感じですぐ治ったと言ったり、あまり大きな問題だと捉えない人もいました。ただ、悪化して突然死ぬ人もいて、Mediaではそのへんの報道をしています。この辺の認識のずれが国民の間にも広がっています。特に、ドナルドトランプの発言にも見られたように、Covid19 はhoax (インチキ)だと捉える人達が、政治的にも結束し、危険だとする専門家を政敵のイデオロギーのように扱っていました。選挙の年でもあり、その認識のずれがエスカレートし、未だに人々の意識に大きく影響しています。バイデン大統領がマスクを義務付けるといっていましたが、この厳戒態勢にあるロサンゼルスでさえ、マスクをしていない人が通りにたくさんいます。食料品店などが感染源となったケースも多いのでさすがに店にはマスク無しでは行けませんが、昨日公園でマスクをしていた人は3人に1人ぐらいでした。武漢の場合は最初の発祥であり、世界に対してスキャンダラスであった時期でした。更に共産党の独裁体制であるが故に、国の権威を守るため市民を強引にロックダウンさせることもできました。ロサンゼルスではそこまでの犠牲を払ってやる意味がないと感じている人も多く、更に春のロックダウンで、「なんのためにあんなロックダウンをしたんだ!どうせ悪くなってしまっているではないか」といった不信感もあります。自粛疲れと、抑える水準を超えた蔓延で、「あきらめ」の雰囲気、更にワクチンができたので「ワクチンだより」といったカルチャーがあります。中途半端に恐ろしいウイルスであるが故に歯止をかけるのが困難だったようです。

 

2)経済対感染病のジレンマ

ドナルドトランプの「病気より治療の方が悪ければ困る」と言った発言にあるように、共和党政権は、経済に対する悪影響の方をむしろより大きな問題と捉えていました。更に、ウイルスはインフルエンザのように消えないので、ロックダウンしてもそれが一時的なもので終わるわけではないので、厳戒態勢をとることに躊躇がありました。なので、ある程度感染を広め抗体による免疫を持った人を増やそうといったHerd Immunityの考えが一時期増えました。イギリスやスエーデンも当初そのポリシーでいたので、この迷いがより感染拡大、更には人々の認識のずれの原因となりました。ドナルドトランプにとって病気は無視したい存在、そして選挙で勝つことの方がはるかに大きな優先順位であったので、CDCなど医療の専門家の提言と政治家の意見の矛盾が露呈され、人々の行動はまちまちになり、分裂したアメリカの中で「力を合わせて病気を予防しよう!」といった文化が生まれませんでした。それは今でも同じなので、「自分の身は自分で守る」といったアメリカ的な考えが病気の蔓延をさらに悪化させてしまっています。ただ、ロサンゼルスの場合は移民が多く、更にはそういった意識の低い人々を相手にしなければならないサービス業に移民などの低所得者がついているので、移民や低所得者を中心に感染が広がっているという現実があります。貧富の差が伝染病の犠牲といった部分でも出ています。「自分の身を自分で守れない」追い詰められた人が結局犠牲を負うことになっています。ワクチンに関しても白人の方が多く受けているので、「格差」があるのではないかと言われています。全国民にお金を配るなどしていますが、本来であれば、豊かな人に税金を課しそれを一部悪影響がある部分に回すといった配慮を政府はすべきだと思います。

 

日本は国民の公衆衛生の感覚が高く、更には人々の行動もある程度統一化しやすい国なので、感染がかなりの率で防げているのではないでしょうか?ただ、観光や飲食といった偏った産業に大きな犠牲が出ているようなので、政治的な対応はうまくいっているようには見えません。特に、時期尚早にむりやりGo to Travelといった旅行キャンペーンをしたのはどうかと思います。こういった状況の中で逆に伸びている産業もあるので、ネット系のうまくいっている産業が、苦しんでいる産業を助けることを支援できるようなファシリテーションがむしろ必要だったのではないかと思います。恐らく政府がすべきことは、テストを中心とした感染状況、ワクチンの入荷予定と接種、今後の予測と想定されるアクションなどに関する正確な情報を集め包括的に情報提供し、人々が動けるための支援といったエリアだと思います。支援に関しても、情報を中心としたものに集中し、それらに基づき、ビジネスのオウナーにそれぞれどのように切り抜けるのか、どのような支援が切り抜けるのに必要なのかといったビジネスプランを立ててもらうのが効果的かと思います。環境変化はビジネスにはつきものなので、ビジネスオウナーであれば恐らく何らかの「計画」を立てる必要があるし押しつけの支援でなく、自発的に支援を提案できるほうが起業家的な発想です。政府にできることには限界があるので、政府の意向に左右される状態は健全ではありません。本来ボトムアップでやるべきことをトップダウンでやろうとするので、無理があり、効果的なアクションが取れなくなるのです。

 

3)医療体制の問題

アメリカの大統領はCovid 19渦中なので「戦争の中での大統領」だと言っていましたが、実際に病気と戦争とはその取り組みが違っています。戦争であれば政府が徴兵してトレーニングをし、戦場に送り出します。医療のトレーニングにはそれなりに時間がかかるし、育てる専門機関は政府の中にはありません。戦争は政治が中心で起こることなのでその主体と体制は政府が握っていますが、病気は政治から起きたことではないので政府が主体として戦うという状況ではないのです。政府の役割はむしろ支援の側です。現場の医療、そしてアメリカの場合はその多くが法人化された政府機関ではない民間組織が責任を任されています。民間は民間故の限界があり、それぞれ資金、設備、人材といった部分での判断には限界があります。何よりそれだけ多くの民間団体を取りまとめ戦争として戦うにはそれなりの体制が必要です。ただ、すごいと思うのはそんな中で医療に携わる人々は自己犠牲を払い、24時間体制で治療にあたっています。つまり国をあげた戦いの負担が医療体制にのみ集中してしまっているのです。幸い医療従事者は知性があり、モラルが高い人も多いので戦争の場合と異なり現場でモラルが崩れることは防げているようです。ただ、後方支援は十分働いていないようで、病気に対する「戦時体制」として国の体制が確立できていなかったので今回のように医療崩壊がおきています。危機的な状況なので、政治家が表にできていますが、根本的に政治ができることには限界があり、軍の医療施設を出したり、ウェストバージニア州でのワクチン投与に軍を投入して成功させたりと限定された場所のみです。

 

こういった状況の場合リーダーに必要とされるのはファシリテーション能力であり、民間、政府をあげて協力できる体制を築き、更には必要な資源を投入できる体制を作ることです。その一例として唯一の勝利と言えるのはワクチンの開発でしょう。短時間で非常に効果的だとされるワクチンが開発されました。今、こうとなってはワクチンのみが切り札となっています。ただ、ワクチンを国民に摂取させるまではまだまだ長い道のりなので、今後は連邦政府-州政府-民間といったレベルでのファシリテーションが切り札になります。バイデン政権はその辺に最初から力を入れているので、5月までにワクチンがいきわたると言っているので、それを信じたいと思います。以前ワクチン系の株式投資で紹介したPfizer、 Moderna、といったすでに認可されたRNA系ワクチン以外に、 Astra Zeneca, Johnson Jhonson Novavax Innovio といったDNA系、Viral Vector系の異なるワクチンも認可されていくので、武器としてのワクチンはかなり充実してきそうです。普通に戻れる日は近づいてきているのでしょうか?日本はどうでしょうか?オリンピックはできそうなのでしょうか?

 

1月20日のアメリカ大統領就任式の中で最も印象に残ったのは大統領の就任演説ではなく、若き詩人アマンダ・ゴーマンの詩の朗読でした。大学時代にESS(English Speaking Society)という英語サークルに入っていたのですが、そこでケネディー大統領の就任演説のスピーチコンテストに出ました。その内容に感動し大統領のスピーチにはまり、それ以来、大統領就任式は必ず期待を持ってみることにしています。41代大統領George H W Bushの就任式の際にはNHKのインターンでその取材もさせてもらいました。ただ、今回の就任式はとても変わったものでした。それはCovid19 の蔓延で、聴衆がやたら少なかったことや、1月6日の暴動で物々しい警備で就任式のお祭り的な要素が見えなくなってしまったということで式典としては華やかさのない、やたら地味な印象があったからかもしれません。トランプ以降、大統領スピーチに幻滅してしまっていたのか、或いはバイデンのスピーチに期待がなかったのからかもしれませんが、悪いけど盛り下がりを感じていました。ただ、その状況を一変する凄いインパクトある出来事がありました。黄色いコートに、子供っぽい顔つきの小柄な黒人女性Amanda Gorman のThe Hill We Climb「我々が登る丘」という 詩の朗読です。実に意義深く、良く構成された、美しい詩でした。彼女は22歳の若き詩人で、私の住むロサンゼルス出身、更には私が住んでいたサンタモニカにあるNew Rose Schoolに通っていたそうです。知らなかった…。ハーバード大学に奨学金で行き、数々の賞を取り、有名なトークショーホストのオペラ・ウインフリーからも称賛され(今回は彼女からプレゼントされたアクセサリーをつけていたようです)、今回の大統領就任式での大役を任せられるほどの有名人だったのです。でも何という詩だったのでしょう!アメリカ人の多くもかなり感動したらしく、本日子供のオンラインでの学校のクラスでもその話で盛り上がっていました。今回はその詩の内容と意義を分析してみたいと思います。

 

詩の意義と特徴

相手を攻め自分を正当化するトランプの言論手法はアメリカの文化となり、アメリカは大きく分断され1月6日の暴動はそれを象徴する衝撃的な事件になっています。そんな状況の中でこの詩はまさにタイムリーであり、The Hill We Climbはアメリカ人の国に対する考えを再認識させ、UNITY(一致)の意義を諭す意義ある重要なものでした。いくつかの部分に分けて、その内容をみてみましょう。

 

1)タイトルに出てくる「丘」とは

このタイトルからして意味深で、そのすごさが伝わってきます。アメリカの議会をCapitol Hillと言いますが、このスピーチをした就任式が開かれているのが、そのCapitol Hillであり、現状のアメリカの分断が形になった1月6日の暴動がおきたのもこの場所です。更にもっと深い意味があります。アメリカは宗教的抑圧を逃れて欧州から移民したピューリタンを中心に建国されていきますが、その際に、自分たちは、「丘にある町を築き、ほかの町の見本になる」という建国精神がありました。その丘はキリストがマタイ5~7章で語っている、山上(丘の上)の説教にある内容の実現のことを意味していると言われます。ここでキリストは具体的な倫理的な教え、行動基準を述べています。その中で、自分たちが「光になり」世に神の存在を示す(マタイ5:10)という言葉があり、その「光」がこのスピーチの隠れたテーマになっています。マサチューセッツ、プリマスコロニーの総督であったJohn Winthrop(1587-1649)が"We shall be as a city upon a hill, the eyes of all people are upon us."「我々が丘の上の町になり、全ての人が我々を見る。」と言ったことが有名になり、アメリカは世界の模範的な国家を目指すというテーマがあります。「丘」とはアメリカ自体のことであり、自分たちアメリカ人自身がアメリカであるという意味付けにもなります。これは「光」とあわせて、スピーチの最後で明らかになります。

 

2)現状認識

We've learned that quiet isn't always peace.  And the norms and notions of what just is Isn't always just-ice

「おとなしくしていることが平和ではなく、正しいことの規範や概念が「正義」(韻をふんでいる)ではないことを学んだ。」おとなしくしている中で、平和が崩され、間違ったことに歯止めがかからない、今のアメリカの現状を語っていますし、何もせず、トランプの嘘に加担していた議員たちに対する皮肉も入っています。

 

3)我々の立場

And yet, the dawn is ours before we knew it. Somehow, we do it. Somehow, we’ve weathered and witnessed a nation that isn’t broken, but simply unfinished.   We, the successors of a country…

「でも私たちが知る前に夜が明け、我々がやる時がきてしまった。私たちが目撃し、なんとか切り抜けたのは壊れた国ではなく、未完の国。私たちはその国の継承者であり、…」

この後で、奴隷の娘が大統領になる夢を持て、今その大統領に語っているということで、実際のその場の体験を述べることでアメリカ人の夢と希望、そして自分たちが作るアメリカという未完の国への参加意義を効果的に再認識させています。

 

4)我々の課題

And yes, we are far from polished, far from pristine, but that doesn’t mean we are striving to form a union that is perfect. We are striving to forge our union with purpose, to compose a country committed to all cultures, colors, characters and conditions of man.

「我々(アメリカ人)は洗練されているとはとても言えない。清純でもない。だがそれは完全な一致というものに向けて努力しているわけではなく、人間のあらゆる文化、肌の色、性格、状況を許容する国を作るとう目的に対する一致に対する努力である。」この後で、未来の為に違いをわきにおこう、共に結ばれ勝利を得る、分断の敗北を二度と味わうことなく、分断をうえつけないといった一致の意義を語ります。アメリカの目指す姿がかかれています。今回は白人至上主義の人たちがトランプのサポートを得て暴動にまで発展しました。ただ、その方向がアメリカが目指す方向ではないことは、明らかであり、それを再認識しています。アメリカは異なる人々が一体になり形成される国なのです。

 

ミカ書4:4の意義 5)アメリカの国としての宗教的意義

この後で彼女は旧約聖書のミカ書4:4を引用します。この聖書の引用に関してあまり報道がされていないのが残念ですが、これはとても意義があり、更にはタイムリーな引用で、ここで私はとても感動しました。

Scripture tells us to envision that everyone shall sit under their own vine and fig tree, and no one shall make them afraid. 

「聖書は『人はそれぞれ自分のブドウの木の下、イチジクの木の下に座り、脅かすものはいない』ということを想像するようにと語ってます。」

ミカは旧約聖書の預言者の書ですが、12人のMinor Prophet (小預言者)の一人であり、紀元前8世紀ごろ、ちょうど北のイスラエル王国がアッシリアにより崩壊する紀元前722年ごろに南のユダ王国にいた預言者です。人々の退廃によるエルサレムの崩壊などを予言する一方、ベツレヘムに救い主(イエス)が現れることを予言しています(5章)。4章はそれまで罪によりサマリヤやエルサレム(ユダ王国)が破壊されると書かれているのに対して、なぜか、「主の家の山」は固く建ち(4:1)、異邦の民が流れ来て(4:2)、主が裁き、戦いを習わない(4:3)とあります。「主の家の山は丘々よりそびえたち」とありますが、このポエムの「丘」は主の家の山を目指すプロセスであり、主の家の山がアメリカだと比喩しています。ブドウの木、イチジクの木というのは聖書でよく出てくる植物ですが、ブドウの木はイエスを表し(ヨハネ15:5)、イチジクの木は神によるこの世の恵みをしめしているとも言えます。イチジクは、創世記で生命の木、善悪を知る知恵の木(創世記2:9)の次に出てくる木でアダムとイブが裸でいることに気が付き、身にまとった葉の木(創世記3:7)とあるからです。つまり、それは、神の地上における恵です。アメリカは神の導きの下に恵まれた国であり、トランプがアメリカが弱くなったので、Make America Great Again というけれど、そんな余計な心配はいらないという意味にも捉えることができます。

 

That is the promise to glade, the hill we climb if only we dare it. 

「もし我々が挑戦するのであれば、それが、輝かしい地、我々が登る丘の約束だ」

Gladeを「空地」と訳する人がいるかもしれませんが、GladeにはGladやGleamと同じ語源があり、そこには輝かされた土地というニュアンスがあると理解します。ここでいう約束は神の約束、そしてManifest Destinyのようにアメリカ人が共感するアメリカの存在意義としての丘を表しています。

 

ジョージワシントンとミカ44 (6)アメリカの原点に戻る)

この聖句を引用するのにはもう一つ大きな意義があります。ワシントンDCの観光スポットにアメリカの初代大統領ワシントンの家Mount Vernonがあります。そこに行ったときに知ったのですが、ミカ4:4はワシントンがよく引用した聖句であり、ワシントンは、軍の抑圧から解放された農民たちのことをさすこの聖句をアメリカ独立の象徴と捉え、安住できる地の象徴としてアメリカを語っていたと言われています。つまりここでこの聖句を引用するのにはアメリカ建国の原点に戻るという意義も含まれています。

Because being American is more than a pride we inherit; it’s the past we step into and how we repair it.

「アメリカ人であることは私たちが受け継いだ誇り以上の意味があり、過去に踏み込み、そしてそれを改善することです。」

America Firstで、自分たちの誇りのみに執着した過去から、より謙虚に自分たちの至らなさを知り、それを改善しようという「アメリカ人」であるということ。それが語られています。とても謙虚でクリスチャン的な表現です。

 

7)アメリカにおける民主主義の意義

But while democracy can be periodically delayed, it can never be permanently defeated. In this truth, in this faith we trust, for while we have our eyes on the future, history has its eyes on us. This is the era of just redemption. 

「民主主義は時によって遅れることもあったが、決して永遠に滅ぼされることはない。その真実が我々が心から信じるものであり、我々は将来に向かっているけど、過去が、その歴史が我々を見ている。我々の時代は罪を贖う時代なのだ。」

 

Redemption は日本語では贖うと言いますが、ピンとこない人もいるかもしれません。これは罪の「償い」とは異なります。キリスト教用語で、キリストが十字架にかかったことの意義の一つとして全ての人の贖い(Redemption)があると言われます。償う場合には犯した罪の穴埋めをするという行為になりますが、キリスト教の世界での贖いは、「聖められる」「正しいものとされる」という意味があります。罪により神との関係が途切れていた人が、関係を修復し、更には正しいものとされるということで、罪からの解放、心理的な自由をさしています。なので、そのあとに続く offer hope and laughter to ourselves「希望と笑顔が戻ってくる」という結果があります。つまり、民主主義に対する攻撃という罪の最終形は罪をとがめることではなく贖うことであるということ。ここに神の元の一致の原則があります。やや、現在議会でトランプ「元」大統領を弾劾して、永遠に追放しようといったような動きがありますが、それとは別のことを意味しているといえます。

 

8)アメリカの分断にどう取り組むべきか

Our blunders become their burdens. But one thing is certain, if we merge mercy with might, and might with right, then love becomes our legacy, and change our children’s birthright.

「私たちの失態が彼ら(我々の子孫)の重荷となる。でも一つ確かなのは私たちが持つ慈悲の心と力を、力と正義を合わせれば、愛が我々が残す遺産となり、我々の子供たちの生まれながらの権利となる。」

キング牧師のスピーチのようにこの後でアメリカの各地域を具体的に述べますが、ここで言っているのは、分断されてしまったアメリカの一致とそこにかかわる許し、そしてその許しの結果としての一致が出てきます。生まれながらの権利とか、子孫とか、旧約聖書的ですが、非常に意義深い表現であり、「愛の遺産」というキリスト教的な表現になっています。トランプ支持者は福音派のクリスチャンが多いのですが、暴徒と化してしまったその支持者にも響くのではないかと思います。

 

9)光とアメリカのTranscendentalism

The new dawn blooms as we free it. For there is always light. If only we’re brave enough to see it. If only we’re brave enough to be it.

「我々が解放することで、新たな夜明けが花開く。実は光はいつもそこにいた。我々が勇気をもってそれを見れば。我々が勇気をもってそれになれば。」

 

なんとも意味深い終わり方です。このポエムの出だしはこうでした。When day comes we ask ourselves, where can we find light in this never-ending shade? 「一日が始まると我々は自分たちに問いかけます。この終わりのない影の暗闇にどこに光をみつけだすことができるだろうか?」光は希望であり、その答えがこの最後に自分たちの中、自分たちの勇気を持った行動の中にあるということを示唆しています。そしてそれは暗闇=罪から、自分たちが解放することで、見えてきます。というかそこにあったことを再認識します。この完結は実に美しい表現です。光というと聖書のヨハネ1:5「光は闇の中に輝いている。やみはこれに打ち勝たなかった」を思い出し、イエスのことをさし、キリストに導かれる国の実現に戻ることを示唆させます。ただ、勇気をもって光になるという表現を見るとなんとなくTranscendentalism を感じます。ハーバード大学神学部はUnitarianの伝統があり、Transcendentalism に影響を与えているので、Amanda Gormanはハーバード大学を出ているので、その影響があるのでしょうか?Transcendentalism とは日本語で「超絶主義」と訳されるそうですが、今から200年程前にアメリカのニューイングランドで盛んになった神学的・哲学的な思想です。元々は欧州の神学者の Schleiermacher 等が提唱し、哲学者カント(1724-1804)などが確立していった批判哲学、認識論などがアメリカで影響を与えたものです。具体的には、教会や社会といった人間が作り出すものはもともと不完全であり、汚れた要素がありますが、神が作り出す自然の中で完全である神と一体になれるというものです。日本では内村鑑三が有名ですが、無教会主義を提唱したハーバード大学神学部出身のエマソン(1803-1882)がTranscendentalismの提唱者だと言われます。そこでキーワードになるのが、Light(光)です。神のSublime Beauty(荘厳的な美しさ)は自然の中にあり、人間も神の創造により、Inner Light (内面の光)を持っています。そしてそれを体験することにより人間は光を認識し、その光により統一(Unify)があるということです。光に始まり、光で終わる。そして自分たちが光になり統一がなされるという何とも素晴らしいメッセージです。この光と光の認識、そして光の体験による統一という趣旨は、私は聞いたときにその奥深さを感じ、子供のように若々しい詩人のAmanda Gormanに敬服した次第です。

 

10)言葉の力

詩は言葉の世界です。トランプが思い付きでチープな嘘の言葉を次々とTwitterに流すことが人々の分裂を加速させ、火をつけ、暴動にまで発展しました。同じ言葉であっても、この詩のように深みがあり、人々に感銘を与え、モチベーションを与える物の価値は大きいと思います。ヨハネによる福音書の初めに「初めに言葉があった。言葉は神とともにあった。言葉は神であった。」とあります。アメリカの多くの白人の福音派クリスチャンが言葉の本質を忘れ、トランプを熱狂的に支持する姿は非常に悲しい限りです。多数を占める80%もの白人福音派クリスチャンがトランプの支持者なので、トランプの中核的支持層がなぜか敬虔な白人福音派クリスチャンなのです。真実に従わないとそこには滅びしかありません。共和党議員が自分の支持率低下を恐れ相変わらずトランプをサポートしています。そして1月6日の暴動を扇動したにもかかわらず、相変わらずトランプの支持はそこまで落ちていません。不思議です。

日本では大統領就任式の模様、そしてAmanda Gormanの詩は報道されたでしょうか?翻訳とかされたでしょうか?アメリカとはどのような国なのかを理解するのにとても良いので是非ともその詩を読んでもらいたいです。Amandaは2036年の大統領選に出る計画があるらしいので、将来のアメリカに期待したいです。

1.トランプはどうなるのか?

今アメリカで最も危険な人物だと言われているのが、大統領であるドナルド・トランプです。国のリーダーであり、世界最大の軍事力の長(Commander in Chief) 、世界で最も恐ろしい核兵器使用の責任者が陰謀論に没頭し、2日前にサポートする人々をDCに集め、暴徒として議会への乱入をそそのかし、精神的に安定していないので、残り数日とは言え、Amendment(米国憲法修正)5条(Sec5)を使う解任か、Impeachment(弾劾)により残りの数日は副大統領のペンスに大統領となってもらうべきだと主張している議員が多数だと言われています。JFケネディー大統領暗殺の際に速やかに権限の移行をするためにできたのが25条なので、今回はそのような状況でないので、使わないのではないかと言われていますが、大統領自身が国に反逆をするという状況は前代未聞で、興味深く見ています。

 

ジョージタウン大学に留学していた時期に、NHKのワシントン支局でインターンをしていたのですが、その際に議会には何度も行きました。議会の警備は当時でもかなり厳しく、このように簡単に暴徒が入り込むをいうことは想像できません。恐らく、大統領から何らかの圧力があり警備があまかったのだと思います。国の権力者が独裁者となり、議会をコントロールしようとすることはよくあることであり、ナチスの時もそうですが、議会政治が独裁者によりつぶされることは想定できたことです。3権分立の中、行政の大統領をけん制するはずの議会が直接攻撃されているのです。今回はアメリカの民主主義の脆弱さを露呈した暴動であったと思います。なので、今後のことを考え残り数日をは言え、前例を作らないようにするためにトランプに対する何らかの制裁があることと想定されます。大きな権限を有する国の代表なので、大統領という役職は「特別」な保護があり、それがゆえトランプはこれほどまで大統領職に執着していたのだと思います。以前のブログで書きましたが、トランプはその他に脱税や、様々な訴訟が背後にあると言われています。そして、大統領の恩赦制度を使い、この数日にでも自分の家族、そして自分自身でさえ、恩赦により罪の追及を逃れようとしていると言われています。ただ、今はまだ危険な状況であるので、恐らく実際の訴追や調査は1月20日にバイデンが46代米国大統領として就任し、トランプが大統領職を解かれてからになると思います。アメリカでは前大統領であれ、シークレットサービスがつき、自分の名前のついた記念館(Library)が国の予算で建てられ、様々な特権を維持します。前代未聞の「犯罪者」と仮になった場合は、どうなるのでしょうか?非常に興味深い状況です。

 

2.トランプの支持者と共和党

水曜の選挙人による大統領選挙の議会での承認(形式的な)に反対したテッド・クルーズを始めとした議員たちは、本気で選挙が違法に行われたなどと思っているわけではありません。彼が上院として代表するテキサス州は伝統的に共和党であり、その共和党の中でも主導権を何とか握ろうとしているが故にトランプ人気に便乗しようとしています。彼は自分自身の野望があります。過去共和党の大統領候補選挙で「テッド・クルーズの奥さんが醜い」といったようなレベルの低い侮辱をしていたトランプにさえ、こびを売っているのがテッド・クルーズです。それはトランプが予想以上に共和党の支持層を増やし、地方、そして高卒の白人層などの支持者を多く集めMAGA(Make America Great Again)といったスローガンの下に多くの労働者の支持者を集めたことがその背後にあります。

 

アメリカが独立してあらたな民主国家を築いた際にフランスから調査にきたAlexis De Tocqville (1805-1859)が著書「アメリカの民主主義」の中で、衆愚政治に対する懸念をしていたのですが、その民主主義の脆弱性はいまだに消えていないのです。衆愚政治とは愚かな人に扇動された愚かな人々(騙されやすい人)が、多数となり国を崩壊させることです。フランス革命の後、暴徒たちによるおかしな政治体制が一時まかり通っていたので、教育を受けた貴族であったトクビルは特に民主主義に対して疑問を持っていたのでしょう。扇動される騙されやすい人々は嘘に従います。なので、これだけ暴動が明らかにトランプ支持者により行われたいたにもかかわらず、実際に議会を破壊したのは極左のAntifaであると平気で嘘をいう共和党議員でさえいるのです。騙されやすい人が騙されているのです。以前書いた通り、アメリカの福音系白人教会の多くは共和党支持、そしてトランプ支持をしているので、暴徒の中には聖書を持って乱入している人もいました。前回のメールで私は、それらは偽預言者に騙されている人と書きましたが、純粋さゆえに嘘を信じてトランプに従ってしまう人も少なくありません。更にはQAnonや白人至上主義の過激派が今回は議会占拠を主導したと言われていますが、トランプの集めた嘘にひっかかりやすいより多くの人々がそれらの危険な思想に傾倒する可能性もあります。アメリカ政府はそれらの危険団体のサイトなどを停止させたそうですが、それらの団体はまだ、日本からフィリピンのサイトを活用してその活動を続けているという報道がされていました(なぜ日本?)。どうか福音系のクリスチャンたちが、聖書に書かれている本来の福音に立ち返り、そのような過激な思想に偏らないようにと願っています。ただ、今回の過激な動きは共和党にとって大きなWake Up Call になったでしょう。私の予想通り、共和党はトランプや過激なグループと距離を置くことになるでしょう。なので、トランプ人気に便乗しようとした共和党の議員たちは主導権を失っていくと思います。というかそうなって欲しいと思います。

 

3.嘘と政治

「政治家は嘘つき」というのは今始まったことではありません。自分の再選のことだけを考えている政治家は何でも口約束をして票を集めようとします。ただ、ドナルドトランプの嘘として徹底していたのは、自分はいつも正しく、すべて都合が悪いことは相手や別な人に押し付けようとする嘘です。この類の嘘は戦前の日本が鬼畜米英といって敵国のことを悪魔のようにして、自分たちが正義のために戦っているというのと似ています。今回議会で警察に射殺されたAshli Babbittという女性はカリフォルニア San Diegoの人らしいのですが、トランプが言う通り、副大統領のマイク・ペンスが選挙結果をひっくり返す手段があるということを信じ、マイク・ペンスのいた場所の近くの窓から侵入しようとしたところを射殺されたようです。特攻隊的な行動です。ペンスはそのような権限はなく、これまた嘘なのですが、嘘を機関銃のように連発するトランプ教の信者は疑うこともなく、行動していきます。Covid19 の自粛により職を失ったり、トランプ政権の下で貧富の差が広がっているにも関わらず、経済的に困っている人々が夢中でトランプに従っていきます。金持ちのトランプに従っていくというのはまさに皮肉なものです。そしてトランプが借金返済のために支持者からのファンドレイジングもしていると言われています。

トランプの「選挙は負けていない。民主党=極左勢力に盗まれた」という嘘はナチスが「第1次世界大戦に負けたわけではなく、ユダヤ人により莫大な費用を払うはめになった」といった大きな嘘 große Lügeと似ています。それは大きな嘘は、何度も言えば本当になるというもので、ナチスがユダヤ人弾圧・ホロコーストなどに活用したプロパガンダと似ています。こういった嘘は信じる人の数が増せばますます加速し、それが最終的に過激な思想となり、信じる人が過激派となっていくのです。QAnonは民主党や政治やビジネスのリーダーがPedophile(幼児虐待者)で、アメリカはそういう人たちに操作されているといったような陰謀説を唱えています。嘘は一度つくと平気になるそうですが、それが国家レベルになると危険です。秘密主義の中国の共産党などを批判するトランプ・アメリカが嘘にまみれているというのが今の状況です。嘘をつくことは聖書の十戒の一つですが、バイデンには嘘をつくカルチャーの変革をまずしてもらいたいと思います。

 

4.Fiduciary Duty の欠如

Fiduciary Duty のことを日本語では善管注意義務というそうですが、これは通常、組織の代表権を握る人は、個人的な利益より組織の利益を優先する義務があるということを表しています。アメリカ大統領であれば、当然、自分自身の利益より、国の状況を優先すべきです。ところがトランプ大統領は常に自分のこと、自分の評判、そして自分の利益を優先してきました。なので、自分にとって都合が悪い人は首にして自分の側近をYes Man で固めていきました。自分を批判するマスコミは除外し、自分のことを良くいうメディアしか相手にしないのです。この時点でトランプは大統領にとってUnfitだったのです。自分自身の為にまわりを巻き込み、アメリカが国家として弱体化している状況が露呈されました。ゴア、ブッシュの選挙戦は今回よりはるかに僅差でしたが、ゴアが敗北を認めたのはまさにアメリカが混乱することを防ぐためでした。ところが、トランプはむしろ自分の為の混乱を優先しました。なので、今回暴徒たちが議会に突入したのをテレビで見ていたトランプは大喜びしていたと今日のニュースで言っていました。トランプはビジネスマンだと言われていますが、このようなリーダーはあまり企業のトップとしても適切ではありません。このようなタイプのリーダーは、アントレプレナー系の会社に多くいます。それは、自分が立ち上げたがゆえに会社=自分であり、自分のエゴを抑えることができなくなるからです。小さい会社を大きくする際には自分=会社としてすべてを没頭する体制は効果的にはなりますが、大きな会社となるとそうはいきません。なので、会社が株式公開された時点で、そのような独裁者的な社長が追い出されることも少なくありません。ただ、政治家は別です。選挙で選ばれた国民の代表者は、当然自分自身のこと以上に国民全体の利益を優先する義務があります。自分の為に自分の支持者を動かし、Pennsylvania Avenueを歩いて、CapitolでWildになろう!などというそそのかして暴動の火付け役となったのは、トランプであることに間違いありません。そして自分も一緒に行くと言ってそこにはいないという嘘を平気でまた言ってます。昨日になって急に「議会であったことは悲しむべきこと」「暴動に関与した人は裁きを受ける」と手のひらを返したように、他人事のように語っています。そんなトランプをなぜ支持し続けるのか、不思議でありません。選挙の予想でも私はバイデンが圧勝するとよんでいたのですが、意外な接戦になりました。それはトランプ以上に何か大きな思想の流れがあり、アメリカがより悪い方向に向かう前兆なのかもしれません。 (NHKワシントン支局でインターンをしていたころの私です)

コロナ禍の中、アメリカの多くの都市ではレストランはTake Outのみ、空港も閑散とし、せっかく再開したプロスポーツも観客数を減らしの自粛状態が続いています。ただ、そんな中、州政府の命令を無視し、大規模でさらにマスク無しといったとんでもないイベントを続けていることが許されている人がいます。ドナルドトランプ大統領です。大統領選挙まで数日と迫り、必死になって再選をかけていますが、かなり劣勢とされています。Covid19の封じ込めに失敗し、記者会見でその失態や失言が明らかになる中でも、開き直り、Twitterで政敵を非難し、自分と意見が合わない人は首にし、反対者やMediaを徹底的に攻撃している姿を皆さんはどう見ているでしょうか。最近ではCovid19対策の責任者の一人として信頼されている国立アレルギー感染症研究所所長で過去6人もの大統領に支持されてきたアンソニー・ファウチー所長を「愚か者」「大惨事」と評し、科学者を「ばか者」「信じない」というようなことまで言っています。科学や専門家を信じないというのは通常の日本人の視点からは理解できない「政治的な失敗」に見えます。ただ、それでもトランプを支持し続ける人は一体どのような人なのでしょうか?

 

アメリカにおける「保守」対「革新」の基礎構造 共和党基礎支持層とキリスト教保守派

アメリカの大統領選挙は各州での選挙人をどれだけ獲得したかそのコマ数の競争になります。これをElectoral Collageと言います。2016年のクリントン対トランプ選挙、そして2000年のアル・ゴア対ジョージブッシュの際も、票数では多数を取ったのはそれぞれ民主党でしたが、選挙人の数では共和党が上回り、トランプ、そしてブッシュがそれぞれ大統領となっています。これは連邦制を維持する中で、各州の勢力をある程度均衡させるための制度で、都市部や人口が集中する地域の影響が薄められ、各州の力関係をある程度均衡させる働きがあります。そして近年は南部を中心とした地域で共和党が強く、それにより都市部で強い民主党が絶対数で勝っても、大統領は共和党という流れが続いているのです。ではなぜそれらの地域で共和党が優勢なのでしょうか?

 

政治政党をよくLiberal(革新)そしてConservative(保守)という分け方をし、歴史的に「大きな政府(増税)、政府の規制、労働者、貧困者よりの社会主義的な政策」をとるのが革新である民主党、「小さな政府(減税)で、自由貿易、自由競争、規制緩和、ビジネス資本家優遇の政策」をとるのが保守派である共和党だと言われています。ただ、この構図は戦後大きく変わってきています。規制緩和を進め自由貿易、投資の自由化を促進する政策を民主党のクリントンが取ったり、軍事支出を増やし巨大な政府予算を作った共和党のレーガン政権、そして自由貿易のNAFTAやTPPなどから脱退し、保護主義的な貿易政策を共和党のトランプ政権が取っていることなどから、「大きい政府」「小さい政府」の線引きはレーガンのサプライサイド経済政策の成功以降は難しくなってきています。トランプは民主党を「社会主義、左翼」と批判していますが、民主党候補のエリザベス・ウォーレンや最後まで残った バーニー・サンダースなどは大学授業料の無料化や貧困者保護などで欧州型の社会主義に近い部分がありましたが、クリントン・オバマ路線を継承するバイデンはそこまで社会主義的ではありません。同時に規制緩和ということに関しても、共和党のトランプは中国制裁などで保護主義的な立場をとり、唯一Covid19予防のマスク着用やロックダウンに反対する部分でのみ、規制緩和的な立場をとっています。なので、この歴史的な「革新」と「保守」という2大勢力の分け方はあまり適応されにくく、重要な分類項目でなくなりつつあります。特に今回の選挙では、労働者(特に白人)の中で共和党のトランプ人気が高く、ハイテクやビジネスの資本家のトランプ離れが進んでいると言われます。「労働者=民主党」「資本家=共和党」という流れが完全にきえつつあるのです。では「保守」「革新」はなにをもって区別できるのでしょうか?

 

↓の図はトランプ支持(共和党)が共和党のカラーである赤で記され、バイデン(2016年のクリントン)支持(民主党)が青で記されています。歴史的にニューヨークや、ロサンゼルス、シカゴといった大都市は民主党で、前回も今回もカリフォルニアは、ニューヨークは民主党が取ることがわかっているので、候補者は来ようともしません。逆に、アラバマやケンタッキーなどは共和党が強いので同様に注目されていません。ただ、今回は過去共和党が強かったテキサスやジョージアでさえ民主党に転ぶのではないかと言われ共和党(というかトランプ)にとって不利な選挙合戦が繰り広げられています。

 

この地図と共通性が高いのがアメリカにおける福音派教会の勢力を示した↓の地図です。赤いいるが示す部分は「バイブルベルト」と言われ、歴史的に保守的な南部バプテストを中心としたキリスト教保守派の勢力の中心です。緑やオレンジはルーテル教会やメソジストといった古典的な教会の中でも福音派のグループが強い地域。そしてグレーはキリスト教では異端とされますがキリスト教から派生したモルモン教が強い地域です。これらの地域が共和党支持の地域と重なっています。歴史的に白人の福音派のクリスチャンは7割以上が共和党の大統領に投票しています。それが2016年には81%もがトランプを支持しており、7月の調査でも7割がトランプのCovid19 への対応に満足しているという調査が出ています。このトランプに忠実な保守派キリスト教徒に「科学を信じない」がなぜ支持されるのかの答えがあります。

 

アメリカはキリスト教徒が約7割と言われ、キリスト教がその建国、基本的な政治思想に影響を与えています。経済や政治状況は常に変化し、それぞれの状況で政権の判断はゆらぎます。だから前述のように古典的な保守、革新の分け方が適応できなくなるのです。むしろ現在のアメリカの政治における「保守」「革新」は前述の古典的な政府に関する考え方以上にキリスト教における「保守」「革新」の分け方を適用した方がしっくりいきます。キリスト教の保守派は聖書に重きを置き、聖書の教えを文字通り忠実に実行しようとするグループです。リベラルは、聖書を状況にあわせて解釈を変えていこうとするグループです。1800年代後半からエンライトメント(啓蒙思想)の影響を受け、民主主義が定着してくると、ドイツなどを中心にキリスト教内でも大きなリベラル化の動きがありました。その中で欧州ではリベラル化した主要教会は特にナチスを止めることができなかったこともあり戦後徐々に勢力を弱めていきます。モンキー裁判などで批判を受けましたが、アメリカでは福音系、原理的なキリスト教会を主流に信徒数を増やしていきます。この革新「リベラル」、保守を戦後大きく分ける問題として、同性愛結婚、そして人工中絶があります。保守はそれらを認めず、革新はそれらを取り入れていこうとするグループです。これらは1970年代以降アメリカに起きた大きな思想的な流れを受けていますが、そんな中で革新(リベラル)な教会は支持者(信者)を大きく減らし、調査によると、1970年代に比べ50%以上信者が減少したと言われています。一方保守の中核の福音派は、その数を増し、キリスト教教会の主流となっています。そんな中で「女性の権利」を主張し、中絶の合法化を守ることに徹した最高裁判事のギンズバーグが亡くなったので、空いたスポットに「保守」で「中絶反対」の意見を述べたノートルダム大学ロースクールの教授バレットを任命したのはまさに「保守派」勢力の強さの反映であると言えます。保守派のクリスチャンは聖書を最も大切なものとし、その結果として歴史的に科学と反対する考えがあります。それが進化論(科学)と創造論(聖書)の対立です。なので、トランプが「科学を信じない」と言うと、それに同調する保守的なクリスチャンは少なくないのです。

 

トランプは再選されるか?

以前ブログでも書きましたが、私のビジネススクール時代の恩師James Q Wilson教授が「現代アメリカでは人々の経済的な状況が在職の大統領を再選されるかどうかを判断するという原則がある」と言っていました。とすれば、アメリカが経済的に躍進していたCovid19以前であればトランプ再選は間違いなかったはずです。但し、今回のCovid19とそれに対する失策、人種問題、更に経済の落ち込みは天から降ってきた悪運となってトランプを襲っています。それでもDenialのサイクルに入ってしまったトランプは嘘を繰り返し、追い打ちをかけるように、税金の不正の問題(金持ちなのに税法を乱用しほとんど所得税を払っていない)、ロシアがアメリカ兵士を殺すことに償金をかけている問題でもロシアに弱腰であり何かロシアに弱みを握られていると思われたり、白人至上主義やQAnonのような極右との関係なども取り上げられ、更には人気のあった前大統領のオバマが積極的にバイデンの応援演説に回っている状況など、トランプ再選の可能性は低いと思われます。前回、トランプの大統領としてどうかということは評価されておらず、不人気で汚職のうわさがされていたクリントンが対抗馬であったので、保守、革新のどちらにも属さない人々がトランプに投票して大逆転は私も想定できたことではありました。ただ、今回は状況が異なります。

 

今回は前回より更にかなり高い水準の投票率が予想され、今まで投票しなかった無関心であった中間層がどのように投票するかで結果がでるとも言われています。それが、前回決め手となった民主党と共和党が拮抗するオハイオ、ミシガン、フロリダ、アリゾナ、ネバダといった州で注目されています。トランプに関してアメリカ人は「好き」「嫌い」かはっきり分かれます。トランプ自身自分が好きか嫌いかですべてを判断する「いじめの親分」的なやり方で政治をしてきたので、白黒はっきりする面白い選挙であるとも言えます。なので実態としては「バイデン対トランプ」というより「トランプ対反トランプ」の選挙だとも言えます。だからバイデンに対する汚職やセクハラの疑惑は、それほど大きな問題として取り上げられておらず、FOXを除くMediaの多くも反トランプの報道が続きます。メディアのサポートを得ている民主党は結束を強め、逆に共和党員の中から反トランプ勢力(Lincoln Project 等)がバイデン支持をしたり、若者の多くが反トランプであることなどから、圧倒的な差でバイデンが勝つということも想定されます。

 

今回、最悪のシナリオとして想定できるのが、当日の投票ではトランプが勝利し、後日、郵送投票の結果が反映されそれがひっくり返るという状況です。共和党の支持者は、選挙場投票し、民主党は郵送すると言われるので、選挙が拮抗した場合はそれがあり得ます。恐らくトランプはすぐに勝利宣言をして、郵送は不正だと言い居残ろうとします。それをトランプが準備しているので、「負けても認めない」、「郵送は不正」という発言を繰り返しているのではないかと言われます。もしそうなったらまた町にデモ隊が現れ、更には「待機するように」とトランプがDebateで言っていた極右の武装グループやMilitiaが町に出てデモ隊とぶつかり全米各地で騒動が起きます。トランプは「中国が敵」、「Covid19は中国の責任」と言っているので、私の家族を含むアジア系の人たちも差別的なとばっちりを受けるかもしれません。さらに11月でCovid19 のワクチンもない中、町に繰り出す人々の間に爆発的にCovid19が広がり、Covid19での犠牲者がさらに急増し、株式相場も暴落するといったアメリカ大混乱の状況です。そんな状態だけにはなってほしくないと願います。

 

トランプ落選と共和党のトランプ対応、そしてキリスト教福音派に対する影響

選挙でトランプが大差で負けることがそのような状況を防御することとなりますが、トランプはありとあらゆる手を使って再選をはかると言われています。その理由として落選した後で、調査されている脱税やビジネスの不正行為など調べられ、トランプ自身が刑事訴訟されるリスクが指摘されています。だから「負けたら外国に逃げるしかない」と演説でいったのはまんざらではないのかもしれません。その場合逃亡先はロシアでしょうか?ビジネスにおとなしく戻るというのが無難ですが、あの性格的におとなしくなることはないでしょう。ただ、トランプが大敗した場合、共和党はトランプと距離をおくようになると想定できます。もともとトランプは共和党の中枢にいたわけでもなく、部外者であるだけでなく、保守的で伝統を尊重する共和党を過激な方向に持って行った責任は重大であるからです。トランプの娘婿のクシュナーが、「共和党をHostile Takeoverした」と言っていますが、トランプに乗っ取られたと感じている共和党の党員は少なくありません。2012年共和党大統領候補でオバマと戦ったユタ選出モルモン教の上院議員Mitt Romnyは「トランプに投票しなかった」と言っていることから、すでにトランプ切り離しが進んでいると思われます。トランプが大敗した場合、共和党は、バイデン支持に回った共和党員を戻すためにもトランプと距離をおくことになるでしょう。追い出されたトランプは過激なトランプに忠実な白人至上主義の極右グループなどとつながり独立した独裁者的な政治活動を続けるかもしれません。

 

ここで問題になるのがキリスト教福音派です。これは教会によって異なりますが、熱烈にトランプ支持をしていた教会は、恐らくより過激になるか、或いは人々が目覚めて教会と距離をおくようになるかもしれません。特に若者の多くはクリスチャン=共和党の構図に疑問を持つようになってきているので、若者の教会離れが加速する可能性もあります。なので白人を中心とする福音派キリスト教、そして白人の中でキリスト教の衰退が全体として進み欧州のようになっていく可能性もあります。

 

教会の間違い:敬虔なクリスチャンがトランプを支援するリスク

今回のCovid19 は教会での集会もできず、それを理由に開放を唱えるトランプを支持する教会も少なくありません。エンターテイメント業界、旅行業同様に教会にとっても危機的な状況なのです。アメリカの保守的なクリスチャンの多くは、共和党の支持者です(前述した通り7~8割は無条件に共和党を支持する)。私は保守的なクリスチャンでその友人も多いのですが、過去、「オバマ大統領はイスラム教徒だ!」とか、「クリスチャンなら絶対共和党を支持すべき」といった話になると、「本当にそれっていいのだろうか?」と疑問を感じてきていました。クリスチャンがトランプ支持をすることに関してはいくつかもっと大きな問題があると思います。そしてもしそれに気が付かなければ、人々はより教会、そしてキリスト教に対して間違った考えを持ってしまうリスクがあると思います。それは以下の通りです。

 

1)キリストの教え:クリスチャンとはキリストを信じてキリストの教えに従う人たちのことです。キリストの教えは新約聖書の福音書に書かれています。その中心になるのが隣人を愛すること、そしてその隣人とはサマリア人(ユダヤ人がさげすんでいた人たち)であるとルカ10:29~37に書いてあります。クリスチャンはそのキリストのかおりがあり、貧困者や恵まれない人を優先して保護します。移民やイスラム教徒に否定的であり、自分の気に入らない人は徹底的に攻撃する人をキリスト教的に支持すべきなのでしょうか?自分のことを優先し、まわりは自分の言いなりになればよいというような行動をとる人は、キリストの教えからかけ離れています。

 

2)嘘をつくこと:Onepieceのウソップではないけど、トランプは平気で嘘をつきます。ウソップと違うのは、その嘘をつく理由は自分を守るためであり、別な人を守ろうとするような嘘ではないことです。福音書の中で明確なのがキリストの敵となる司祭やパリサイ派、サドカイ派などが嘘で大衆を動かし、キリストを十字架につけます。ヨハネ8:44のキリストの言葉はバイデンにあてはまるでしょうか、それともトランプにあてはまるでしょうか?

 

3)金持ちでいることの責任:キリストの教えは一貫してこの世の富を追求することに否定的です。むしろ天に宝を積むようにと教えています(マタイ6:19~20)。金持ちは資産を売り払い貧しい人に与え、すべてをすててキリストについてくる(マタイ19:16~22)ように言っています。そしてマタイ、ルカ、マルコと3福音書で述べているのが金持ちが天に行くのは「ラクダが針の穴を通るのより難しい」と言っています。金持ちであることを誇り、金でできたゴルフのクラブを持ち(日本の血税で安倍首相がプレゼント)、自分の娘の団体に寄付を募り(日本の血税から寄付をしている)、自分の会社の施設に莫大な収入をもたらす政府イベントをし、そのような人をキリストに従う人が熱狂的に支持することはどうなのでしょうか?トランプがラスベガスで教会に行き、ポケットから札束を出して献金箱に入れる姿が報道されていましたが、なぜ小切手でしないのでしょうか?あたかもマルコ12章に書かれているキリストが批判した金持ちのユダヤ人のように見えるように寄付をする姿は、キリスト教徒的ではありません。ルカ16:15でキリストが語っている金持ちに似ているのはどちらでしょうか?

 

4)聖書を読んでいること:ヨハネ6章に聖書にある神の言葉は、「日々の糧である」と書いてあります。クリスチャンとして日々聖書を読み、聖書に書いてある内容を理解しているということが信仰の表れであるとも言えます。ドナルドトランプは長老派のクリスチャンであるとも、無宗派クリスチャンであるとも言われています。ただ大統領になるまで教会にはいっていなかったようです。デモ隊を退去させ教会の前にいき聖書をわざわざかざしたりして自分の支持者である福音派クリスチャンにアピールをしようとはしていますが、そのやり方はあまりキリスト教的ではありません。トランプが聖書と写真を撮るために訪れたDCのその教会の牧師まで批判をしていましたが、トランプは聖書に対する理解はあまりないと思います。それは以前聖書から引用した際に第2コリント人への手紙を”Second Corinthians”ではなく”Two Corinthians”と読んだので明らかです。トランプの娘はユダヤ教徒(結婚したので改宗した)であり、トランプ自身は自分の利益を考える人なので、自分をサポートするクリスチャンにアピールすることは考えてはいますが、聖書に書かれていることに関心はないように思えます。選挙活動でも教会の礼拝に出てますが、それは教会に神を賛美するためにいったのでしょうか、それとも自分の票獲得のためでしょうか?

 

5)性的な乱れ:福音派教会は、同性愛結婚に反対しています。同性愛を否定する理由として聖書の第1コリント6:9~10、1テモテ1:10、ローマ1:26がよく引用されます。これらは使徒パウロの書簡ですが、パウロは当時増えつつあるクリスチャンにキリストの教えに従って生きることの意義とあり方を具体的に手紙に書いて残しています。これらの手紙が書かれた人々が住むローマ帝国内の都市では性的な乱れが激しく、当たり前のように売春や、オージーなどの性的に開放な文化がありました。昨年エペソやコリントの遺跡を見に行ってきましたが、大きな売春宿が町の中心にあり、当時の性的に開放された風俗が良くわかりました。なので、これらの聖句を読むと同性愛(男色)に関して、姦淫と並立して書かれており、性的な乱れの一つとして同性愛に走ることを禁じています。逆に言えば、それが異性であっても問題であり、同様に避けるべきことであるのです。聖書にはむしろ、離婚に関する記述が多く、離婚を姦淫と関連付け、キリスト自身が厳しく語っています(マタイ19章)。ドナルドトランプは3回離婚し、イヴァンカが妊娠中のポルノ女優との関係、性的な発言のビデオなどが公になっています。更には、10代の女の子を集めて性的なハーレムを作り友人の金持ち達に女性を斡旋していた大富豪ジェフリー・エプスタインとも古くからの友人でトランプ自身1994年に13歳の女の子をレイプしたという訴訟ざたもありました。ジェフリー・エプスタインは刑務所で謎の死を遂げましたが、彼に関しては民主党の大統領であったビル・クリントンやイギリスのアンドリュー王子のほうが深くかかわっていたので、選挙戦では使われないと思いますが、クリスチャンが性的に健全ではない人を同性愛に反対しているという理由だけで支持することは危険です。離婚が常習化している中、福音派教会の中でも離婚や性的な乱れに関してはリベラル化しており、恐らくこの部分からも福音派教会も同様に崩れていくと思います。

 

6)人工中絶と死刑:同様に福音派教会が反対の立場をとっているのが、人工中絶です。なので、前述した通り人工中絶に対して保守的な考えを持つバレット教授を共和党が多数で承認させたのです。聖書の時代はあまり人工中絶という考えがなかったので、人工中絶に反対する一番の理由は「汝殺すなかれ」にある神の命令に基づいています。なので、以前から人工中絶に反対していたカトリック教会などは同時に死刑にも反対の立場を取ります。共和党の場合は、人工中絶には反対ですが、犯罪に強く立ち向かうという姿勢で死刑に賛成すること、同様に武力行使による警察や軍隊の殺人もサポートする、といった矛盾があります。なので、クリスチャンなので人工中絶に反対、そして死刑に賛成というのは間違いであり、それを主張するトランプを選ぶことは矛盾を行動に移すことになります。

 

7)税金を払っていない:New York Timesがドナルド・トランプは過去3年で750ドルしか所得税を払っていないとスクープしました。トランプは唯一大統領で所得税開示をしておらず、前回の選挙のDebateで、クリントン候補がこの件で、「税金をはらっていない」と指摘した際には「なぜなら私は賢いから」と答えていました。私は公認会計士で税金の仕事も3年していましたが、大金持ちが必ずしも多くの税金を支払っていないというのは事実です。アメリカの税法の解釈次第で、多くの控除やクレジットを取り、富裕者の税金を少なくすることを仕事にしている公認会計士は少なくありません。だから私の税務部門でも3分の1は弁護士でしたし、個人の所得税では高いフィーが払える富裕者や企業がクライアントでした。トランプはこれに反論していますが、恐らく彼が何百万ドルも税金を払ったというのは、彼が持つ会社の所得税か、固定資産税のことでしょう。クリスチャンは税金に関しても謙虚であるべきです。キリストは税金に関して「シーザーのものはシーザーに返す」(マタイ22章)、パウロは権威者(国)も神の業をするためにサポートするために税金を払うべき(ローマ13章)としています。極度に税金を減らそうという考えが、「自分の富を増やす」=「他の人の負担が増える」という構図になり、これはキリスト教的ではありません。それを自慢する姿は、権威者として不適切であると言えます。

 

8)態度:キリストに出会うプロセスで人は変えられるといいますが、その中で重要なのは自分の罪深さを認めることで、謙虚さ、柔和さ、そしてキリストに近づこうとする人間としての変革があります。自分の強さを誇り、相手を徹底的に非難し、自分のちょっとした間違いさえ認めない姿は、そのキリストに出会った後の人のようには見えません。トランプはミリタリーの学校時代から、「いじめの親分」で、人を攻撃し、力でねじ伏せることにより上に上がってきた人であると言われています。Debateを見る限り彼のその「いつものやり方」は相変わらず続いています。変革がないのです。福音派教会では、「悔い改め」「生まれ変わり」を強調していますが、トランプを見る限りそれとはかけ離れています。すべて損得や自分の好き嫌いで判断し、感情の起伏が激しくプライドが高い人は隙が多く、操作されやすいので国のリーダーとしては適していません。強い信念や信仰、哲学、思想といったものがしっかりと生きていないリーダーは人々を間違った方に導きます。

 

こういった聖書的な原理原則に目をつぶり、クリスチャンならトランプ支持とするのは聖書の黙示録に出てくる偽預言者に騙される人々なのかもしれません。新約聖書唯一の預言者の書である黙示録によれば人々をコントロールする獣のサインは666(黙示録13章)とありますが、娘婿のクシュナーがトランプと組んで、ニューヨーク市で取得したビルの負債を5分の1に減らさせたというスキャンダルがありましがた、その建物は666  5th Avenueでしたね。それは余談ですが、私は今回の大統領選挙に関してクリスチャンは、無条件に共和党に投票するのをやめ、しっかりと自分の価値観に基づき、状況を理解して投票をしてほしいと思います。そしてトラブルのない圧倒的な数で結果ができ、これ以上世の中が荒れるようなことがないようにと祈っています。

 

そして教会も政治に関しては距離を置くべきだと思います。副大統領のペンスは敬虔なクリスチャンで、評判が良い人でした。その彼がトランプの副大統領として忠誠をつくし、彼の嘘に加担していく姿は、トランプを熱烈にサポートする教会の姿をみているかのようです。教会そしてクリスチャンは政治とは距離を置き、聖書とキリストにのみ従い、世の流れに左右されず一貫した価値観を維持していくべきです。黙示録を読んでいると世の終わりのプロセスで多くの人が偽預言者に従う姿が描かれています。黙示録には7つの教会が出てきますが、教会自体がそこに集う人々を間違った方向に導くようなリスクがあるわけです。Covid19で人々が教会から距離をおき自分の信仰を見直すことはある意味、神が与えてくれた貴重な機会なのかもしれません。